• 笹子夏輝 ~カリフォルニア・スタイル巡礼の旅/A PILGRIMAGE to CALIFORNIA_EPILOGUE
  • 2025.12.09

ずっと何かに対する不満や焦り、悶々としたものが心のなかに漂っていた。
自分の居場所はここでいいのか、進む方向はこっちであっているのか。そういう意味で、30歳で訪れたカリフォルニアは自分探しの旅でもあった。
キャプテンズヘルム トウキョウで働いて洋服に触れるようになってから、夏輝はそのバックグラウンドにあるストーリーや世界観の価値を知る。それからは自らの装いも変わった。意識やモチベーションが上がると、自ずとやりたいことが見えてきた。それがヘルム本来の世界観をトウキョウで再構築するというもの。しかも本国カリフォルニアと密にコミュニケーションをとりながら。
「日本の売れ筋にあわせるつもりはない。自分が着たいという気持ちを正直にアイテムに落とし込む。カリフォルニア好きなサーファーとして、あくまで雰囲気を大切にしながら」
前回の旅で好きになってから、カリフォルニアをよりいっそう深く知りたくなった。その想いが伝わったのか、今回は誰もが温かく優しく迎えてくれた。同じサーファーとして、同じ世界観を愛するものとして。
「これだけは曲げたくないという芯をみんな持っている。自分の好きなことを嘘なく楽しんでいる人たち。めちゃくちゃ好きなことにとことん熱意と時間を注ぐ。そのなかで新しい発見もあるだろうし、だからこそより良い人生を歩めるんだろうな。だから僕もこれからは、やりたくないことはやらないことにした。好きなことを貫いてライフワークにするために」
心底楽しんでいるなかから生まれるものやブランド。ブライアンやミッチやジェシーからはそれを学んだ。自分もそういうものを生み出したい。
サーフィンでも得るものは大きかった。ミックのようにサーフィンを生業にはしていないものの、仕事とサーフィンの両方にプライドと情熱を持ち続ける姿勢に心を打たれ、そこに目指したい生き方を見た。
「競技のように数字で勝ち負けがつけられないのがスタイル。サーフィンにはアートの要素が多いから、その追求に終わりはない。だから奥深いのかな」
心のなかの霧はすっかり晴れていた。何かを得るために、自分に変化を与えるために、人に会うことが一番の近道だと改めて気づく。「次はうちに泊まれよ」「もうお前はファミリーだ」。また会いに来ようと思える嬉しい言葉をたくさんもらった。たぶんまたすぐに戻ってくる。いま夏輝にとってカリフォルニアは憧れの地から約束の地になった。

Natsuki Sasako

1994年神奈川県茅ヶ崎市生まれ、鎌倉市在住。18歳から25歳までのプロ活動を経て、フリーサーファーに転向。現在はキャプテンズヘルムに勤務する傍ら、サーフブランド〈DANBUOY〉をハンドリング。次世代のプロサーファーへ道を示すべ く、日々活動を続けている。

photography & text _ Takashi Tomita

>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください

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