• 笹子夏輝 ~カリフォルニア・スタイル巡礼の旅/A PILGRIMAGE to CALIFORNIA_1
  • 2025.10.10

フリーサーファー笹子夏輝は、現状に何ともいえない焦燥感を覚えていた。どうすれば解消できるのか、何をすれば次のステージに進めるのか、その答えを探しに南カリフォルニアに旅に出た。出会うサーファーたちのスタイルと生き方にヒントを求めて……。


CHAD MARSHALL/マリブのアイコンとのファーストセッション

ロングボードを始めてから気になりだした歴史あるサーフポイント、マリブ。ロガーにとっては聖地ともいえるポイントでLA到着直後にサーフしたい。それならローカルとセッションするに限る。夏輝がまず会いにいったのはチャド・マーシャルだった。


カリフォルニアは約一年ぶりだった。コンペティターだったころは旅先でもサーフィンにしか興味がなかったが、前回の旅からそれまで知らなかったカリフォルニアのカルチャーの側面にも目を向けるようになった。多様なボードに乗るようになり、サーフィンそのものを見つめる意識が変わったからだ。
「前回は仲間と訪れてフィルムを撮るのが主な目的だった。でも今回はひとり旅。ちょうど30歳の節目を迎え、何かアクションを起こしたいという想いもあって、そのきっかけが見つかるといいなと期待もしていた」
夏輝は節目を大事にする。10代でプロサーファーになり、20代半ばからはキャプテンズヘルム トウキョウでスタッフとして働き、いまに至る。振り返るとサーフィンライフも充実していたし、仕事も楽しかった。でもどこか受け身で同じルーティーンをこなしていることもわかっていた。本当の自分らしさってなんだろう。モヤモヤした気持ちをリセットするためにも、30歳の節目に旅をするのも悪くないと思った。
いま夏輝はすっかりログに夢中だ。一年前の旅ではノーリーシュのスタイルもサンノーで学んだ。いまはノーリーシュでも板をコントロールできるようになり、ノーズにも足を掛けられるように。だから今回はログの本場でもっとスタイルを吸収したいという強い思いもある。さらに日ごろから気になっている憧れのサーファーたちのライフスタイルにも触れてみたかった。彼らは日々何をして過ごし、どんな生き方をしているのか。それも今回の旅の目的のひとつ。

マリブ・ピアを横目にファーストポイントへパドルアウト。小波だがしっかりインサイドまで乗れる波に思わず笑みがこぼれる

アウトの一番奥に並んで波を待つ。ローカルとのサーフィンの醍醐味だ

夏輝はボードを持っていかず、大胆にもセッションするサーファーから板を借りることに。ローカルのデイリーユースのボードを感じたかったからだ

LAXに降り立つと、真っ先に聖地マリブに向かった。待っていたのは、チャド・マーシャル。夏輝とは同じブレーカーアウトのウェットスーツを着るチームメイトである。マリブでは別格の存在であるマーシャル三兄弟の次兄。パーティ好きの陽気なキャラクターで、ブレーカーアウトではネオンカラーの’80年代デザインを復活させた。挨拶もそこそこにチャドは夏輝をマリブ・ファーストポイントへと連れだした。初めてのマリブだが、チャドといっしょなので心強い。波は膝サイズ。でもインサイドまでショルダーが張り続ける波はやはり極上。王道のスタイルとパンクなアグレッシブさを併せ持つチャドのロギングも新鮮だった。セッションは小一時間ほどだったが、時差ボケを調整するにはちょうどいい。チャドと別れたあと、しばらくマリブ・ウォールのあたりをうろついていると、偶然にも夏輝が大ファンのレッド・ホット・チリペッパーズのアンソニー・キーディスに遭遇。ロックセレブがふつうに歩いている、それがマリブの日常。いきなりの洗礼に夏輝の時差ボケは完全に吹き飛んだ。

再オープンのため準備中だったチャドたちのお店「BMMSSCC(ブラザーズ・マーシャル・マリブ・サーフショップ/カルチュアル・センター)」

サーフィン・カウボーイズの並びのジュリー・コックスのお店「トラベラー・サーフクラブ」にも立ち寄り、軽く市場調査

マリブ・ヴィレッジ・モールにあるヴィンテージ・クロージングや家具、ボードなどを扱う「サーフィン・カウボーイズ」で古着をチェック

Chad Marshall

Co-Founder of Brothers Marshall

サーファーの父に連れられ幼少期から海へ通い、マリブのサーフコミュニティで育つ。茶めっけのある愛されキャラで、レジェンドからセレブまで交友関係は幅広い。ブランド「ブラザーズ・マーシャル」にも再オープンしたお店「BMMSSCC」にも彼のセンスが注がれている。


photography & text _ Takashi Tomita

>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください

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