• 坂口憲二が目指すライフスタイル「一日でも長く焙煎士、サーファーとして」
  • 2024.08.17

Profile
坂口 憲二- Kenji Sakaguchi -
1975年、東京都生まれ。1999年のデビュー以来、俳優として活躍。2018年、難病の治療のため芸能活動を休止。ポートランドの旅をきっかけに焙煎士としての道を歩む。2019年春に〈ライジングサンコーヒー〉の東京店、2021年はじめに横浜・鶴見店をオープン。

難病の治療に専念するために、芸能活動を休止していた坂口憲二さんが昨年、ドラマ『教場』に出演し話題を呼んだ。現在はセカンドキャリアであるコーヒーの焙煎士を続けながら、東京・千葉・神奈川にコーヒーショップを展開する経営者だ。コーヒーに、サーフィンに、人生に。坂口さんが今の生活に思うこととはーー。

週の半分を千葉の焙煎所で過ごしながら、経営する〈ライジングサンコーヒー〉のブランドプロモーションに携わる坂口さん。東京、千葉に続き、昨年はじめにオープンした横浜・鶴見店の業績も順風満帆のようで……。

「でも、僕が決めているのは経営方針や商品開発とか、大枠だけ。現場を仕切るのは若い子たちです。お店のことは彼らに一任。鶴見店も、30代の店長にデザインから任せました。その代わり『自分たちの店だっていう自負を持てよ』と話しています」

愛用するドイツ・プロバット社製の焙煎機。「焙煎士のやりがいは、失敗も成功もローストすればそのままコーヒーの風味として出てくるところ。でも、コーヒーって淹れてしまえば色はほとんど一緒ですよね。途中の工程を手抜きしても、パッと見て素人にはわからない。だからこそウソをついたらダメ」

一方で坂口さんは、看板メニューである「アフターサーフ」や「ワイプアウト」に次ぐブレンドを開発するべく、よりよい豆の組み合わせや焙煎方法を模索中。それにしてもサーファーのコーヒーショップとはいえ、飲み物に「転倒」とはユニークだ。

「アフターサーフ」は、読んで字のごとく、“海上がりの舌”を想定してつくられた。メインはナチュラルプロセスの「ブラジル/シティ・ダ・トーレ」。そこに、香り豊かな「ケニア/ングルエリ」をアクセントで加えた。口当たりよく、ボディ感のあるテイストは、毎日飲んでいても飽きがこない

「波の上で転んだときのガツン! という衝撃を、飲みごたえのあるブレンドで表現したかったんです。スマトラ島北部のアチェ地区とリントン地区からとれたマンデリンを、生豆の状態で1:1でプレミックスして焙煎。そうすることで、より複雑な味わいに仕上がりました」

 そうして生まれた「ワイプアウト」は、千葉・大網店のみならず、サーファー人口の少ない鶴見店でも一躍人気に。補足するように、坂口さんはあるエピソードを披露してくれた。

「お店を開いたばかりの頃、地元の人は恐る恐る様子を見にくるといった感じでした。でも、何人かがリピーターになったのを機に評価してくれたみたいで。今では商店街のおばちゃんが『ワイプアウトある?』って買いにきてくれます。“海から縁遠いところで、サーファー用語が飛び交う”という光景が、見ていて面白いです」

それもこれも、坂口さんの愛のある焙煎が、お客さんの心をつかんだからに他ならない。興味深い話だが、そもそも〈ライジングサンコーヒー〉のきっかけは、活動休止中、坂口さんがアメリカ・オレゴン州ポートランドを旅したこと。

「初めて訪れたときにカフェ巡りをしてみたんです。すると気づいたのは、その規模の大きさ。『これ本当にコーヒー屋なの?』という外観の、倉庫みたいなショップがあって。そこでボサボサのヒゲを生やしたおじさんや、がっつりタトゥの入ったパンクなお姉さんが、すごく丁寧にコーヒーを淹れていたんです。コーヒーが人々の生活に強く結びついている様子に強く惹かれました。と同時にその光景が、昔、サーフトリップで訪れたカリフォルニアの風景と重なったんです。『こんな感じでサーフィン前後に立ち寄れる、渋くて洒落た場所があればいいな』と」。

>>インタビューの続きは本誌でご覧ください。

愛車は“HONDA XL230”。バイクに乗っているときも、サーフィンをしているときもいつも自然体。「『やっていて心地がいいかどうか』をライフスタイルの基準にして以来、自分らしくいられている気がする」と語る

「SALT…Magazine #01」 ¥3,300

本誌では坂口憲二さんのインタビューを全文公開。アメリカから帰国してコーヒーの勉強を始め、バリスタ・ロースターの元で修行を重ね、〈ライジングサンコーヒー〉をオープン。セカンドホームでもある、千葉・九十九里での生活などを語ってくれています。

photography _ Yasuma Miura text_Ryoma Sato

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