• 高校2年生のロングボーダー間瀬侑良夏が夢の舞台「Queen Classic Surf Fest」に参戦。自身で綴ったイベントの記憶_Vol.1
  • 2024.10.12

フランス・ビアリッツ出身のカリスマロングボーダー、マーゴ・アハモン・テュコと妹のエメ、マーゴの幼馴染のアマヤの3人が2021年に立ち上げた、女性だけのサーフコンテスト「Queen Classic Surf Fest(以下、QCSF)。世界中のスタイルのある女性サーファーを招集し、ミュージック、アート、スケート、サーフィンを通じて、女性サーファーの地位向上、LGBTQ+、フェミニスト、環境問題などを発信するイベント。市の後援やVANSが冠スポンサーとなり、夏のビアリッツの一大イベントへと成長した。このコンテストに日本から唯一、高校2年生のアマチュアロングボーダー間瀬侑良夏(ませゆらな)がクレジットされた。憧れのロングボーダーが集う夢の世界。いつかは出場したいと思い続けていたある日、それは現実なものになった……。この特集は、夢の切符を手に入れた間瀬侑良夏が綴ったイベントの記憶。隔週で4回に渡ってお届けします。


梅雨が近づく5月の終わり、インスタグラムにQCSFから一通のメッセージが届いた。HELLOと表示されたメッセージを開き、読み進める。そのときは宮崎に試合に行った帰りの空港で、隣には母もいた。

「ママ、夢が叶った!」

 そう、QCSFからInvitation が届いたのだ。

私がQCSFを知ったのは昨年の秋。インスタグラムのリール動画だった。憧れのロガーをはじめスタイルのあるサーファーばかりが映し出される女の子だけのサーフコンテスト。その動画を見た瞬間、私の夢のリストが更新された。

なぜ私がここまでQCSFにこだわるのか? それはこのイベントがただのサーフィンコンテストではなく、女性を取り巻く社会的問題やセクシャリティをテーマにしているから。同じロングボードでも男性と女性のサーフィンは別ものだと感じていて、女性はビキニやお尻を出してサーフィンをしなくても注目され、評価される独特なサーフスタイルがある。そんなスタイルを持った女性サーファーのみが招待されるコンテスト。選ばれたらこの上ない名誉だと思う。国内外問わず女性のサーフコンテストは男性のおまけのような存在で、賞金の格差も大きい。海の中でもパドルバトルでは勝てないし、故意な前乗りもしょっちゅう。こういった問題はサーフィンに限った話ではないし、根強い社会的問題でもある。ちょうど年齢的にも将来を考えることが多い私は、女性だけで立ち上げた、女性のための大会にとても惹かれ、実際に肌で感じてみたかった。


年が明け、今年の抱負や夢に思いを馳せる。そこにQCSFに出場することを掲げていた。そんなタイミングで届いたInvitation。息することも忘れて読んだメッセージを、今でも鮮明に覚えている。昨年はメキシコで行われた「MexiLogFest」に招待され参戦したが、あの時の不安と期待に胸を膨らませる感覚が蘇ってきた。

QCSFが開催されるのはフランス南西部にあるバスク地方のビアリッツ。MexiLogFestに参加が決まったときも「すごい! よし行こう!」と、すぐにならなかった我が家。オリンピックイヤーのフランスということで金銭的なことや、学校を休まなければならないという問題もあり、まず母を説得することから始まった。

数ヶ月に及ぶ母への(しつこいくらいの)プレゼンと家族会議で決まった条件をクリアし、ついにQCSFへの参加と母の現地サポートを手に入れることができた!


パリ経由でトータル16時間以上のフライトを終えて、サーフボードとともに秋のフランス、ビアリッツへ降り立った。

空港に出迎えてくれたのは、ビアリッツに編集部を構えるサーフカルチャー雑誌HOTDOGGERの編集長エルワン・ラメイニエールさん。昨年のMexiLogFestを特集し、私を表紙に起用してくれた人である。

日本を飛び立つ直前まで、3メートルのサーフボードが飛行機に乗せられるのか、また空港からホテルまでどうやって運べばいいのか分からなかった。そんな不安の中、エルワンさんがヒーローになってくれた。彼の助けにより無事にホテルに到着。エレベーターに乗せられず、螺旋階段を使うしかなかったが、なんとかボードも部屋まで運ぶことができた。さらに、たいていの店は月曜日が休業というなか、夕食にテイクアウトのお寿司まで手に入れた。スーパーヒーローのおかげで、ビアリッツの1日目を無事終えることができた。


翌朝、ジェットラグの影響もなく7時に目が覚めた。まだ日の出前で外は暗い。そして寒い。なかなかベッドから出られなかったが、数時間しか眠れなかったという母に叩き起こされ、ビアリッツの街へ出掛けた。

昨日は暗くて気づかなかったが、街はまるでディズニーランドの世界! おとぎの国に迷い込んだようで、古い建物がとにかく素敵。周りを散策しながらお目当ての焼きたてのバゲットを目指した。

8時にならないと明るくならないなんて、朝が苦手な私にはピッタリの国! と思っていたが、全くそんなことはない。街は普通に朝を迎えていて、7時前から営業しているブーランジェリーのバゲットは、もう焼きたてではなかった。レジの前には列ができていて、店員さんが慌ただしく動いている。店内にはサンドウィッチから甘い系まで品揃えが豊富。レジで注文するスタイルにちょっと緊張する。英語は聞こえてこない。とりあえず母に任せよう。バゲットは男性名詞? 女性名詞? とぶつぶつ言う母だったが、バゲット1本とクロワッサン2個、ショコラティーヌ1つをオーダーした。ちなみにビアリッツでは、パン・オ・ショコラではなくショコラティーヌと言う。

映画のワンシーンのように、すぐにバゲットを食べてみた。焼きたてではなかったが香りが違う。ずっと噛んでいたいくらいに美味しい。スーパーでフルーツと野菜を買って朝食にしよう! 立ち話をしながらコーヒーにクロワッサンを浸して食べている人、パンを片手に犬の散歩をしている人、バゲットをかじりながらおとぎの国を歩いている私。あぁ、本当にビアリッツにいるんだと実感した。


Vol.2に続く……。

間瀬 侑良夏(ませ ゆらな)

高校2年生/アマチュアロングボーダー

2007年生まれ、神奈川県川崎市在住。サーフィンとの出合いは11歳。14歳のときにシングルフィン・ロングボードコンテスト「THE ONE」に出場したことをきっかけに本格的に始め、2023年のTHE ONE LW 1st. classで優勝。また同年メキシコのラ・サラディータで開催されたMexiLogFestから招待を受けて参戦。
Instagram:@yurana_mase


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