#Ocean People

  • 【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/32_アンドレサ・ペドロサ
  • 2026.04.13

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Andresa Pedroso アンドレサ・ペドロサ
ブラジル南部出身。現在はバイロンベイを拠点に活動するアーティスト兼フォトグラファー。海と自然に囲まれたライフスタイルからインスピレーションを受け、旅や日常の美しい瞬間を作品へと落とし込んでいる。

あなたのことについて教えて

生まれ育ちはブラジル南部のガロパバ。2016年にオーストラリアへ渡り、ここ5年はバイロンベイで暮らしている。現在はアーティスト、フォトグラファーとして活動しながら、子どもと関わる仕事もしている。
多くの人がそうであるように、私も「いろいろな場所を見てみたい」という気持ちが強くて、19歳のときに兄がいたオーストラリアへ遊びに行ったのがきっかけ。その旅を経て一度はブラジルに戻ったけれど、「やっぱりオーストラリアに住みたい」と思い、約1年かけてお金を貯めて移住したの。
ライフスタイルはもちろん、アジアや太平洋の島々など、ブラジルからは遠かった場所に気軽にアクセスできるのも大きな魅力。移住までの道のりは決して簡単ではなかったけれど、「ここを自分のホームにしたい」という想いがずっとあったから、どんな困難も乗り越えられたわ。

アートを始めたきっかけとインスピレーション

子どもの頃からクリエイティブなことが大好きで、時間があれば何かを作ったり、クラフトをしていた。今でも作品を作っているときは、あの頃に戻るような感覚になるの。本格的に制作に向き合い始めたのは2019年。最初はセラピーのようなものだった。日中は幼稚園で働いて、家に帰ってから水彩画を描く日々。その時の気分のまま自由に描く時間が、何よりの楽しみだったわ。
続けていくうちに自分のスタイルが少しずつ見えてきて、友人たちが作品を褒めてくれたり、「買いたい」と言ってくれたことが、ビジネスを始めるきっかけになったの。その後バイロンベイに移り、より制作に集中するように。周囲からも「アートでやっていくべき」と背中を押された。
最初は「本当に売れるの?」という不安もあったけれど、マーケットに出てみたら反応は想像以上! 「自分のアートには価値がある」と実感できたことで、大きな自信とモチベーションにつながったわ。
趣味やセラピーとして始めたものを、好きなことで収入を得る形へ変えていくのは簡単ではなかった。でも続けることで少しずつ形になり、3年ほど経った今では、他の仕事を減らしてほとんどの時間を制作に使えるようになったの。
インスピレーションの源は、やっぱりライフスタイル。海辺で育ち、家族は漁師。幼い頃からビーチや海の中で過ごす時間が当たり前だった。ブラジルではサーフィンもよくしていたし、海や海沿いの暮らし、トロピカルな空気感から多くを受け取っているわ。島を旅するのも大好きで、南国の花やパームツリー、その空気に強く惹かれるの。そうした感覚が自然と作品に表れていると思う。それだけじゃなくて、お店で見かけた服の色合わせや、カフェで出てきた料理の色合いなど、日常のささやかな瞬間からもインスピレーションを受けている。

オーストラリアのマーケット文化が繋ぐ人との出会い

マーケットの魅力は、やっぱり人と直接会えること。その場でリアルな反応を感じられるのが何より大きいわ。ブースに来てくれた人が「これすごくいい、大好き!」と言ってくれる瞬間は、本当に特別で嬉しいもの。そこから自然と会話が生まれて、「どこからインスピレーションを得ているの?」とか質問してくれるのも楽しい。
あと面白いのは、色んなアーティストが訪れてくれること。「自分もやってみたい」と言ってくれて、その後「マーケットに出始めたよ」「あなたに勇気をもらった」と伝えてくれる人もいる。自分の活動が誰かの一歩につながっていると感じられるのは、とても特別なこと。
ただ作品を売る場所ではなく、人とつながり、影響し合うポジティブな空間。それがオーストラリアのマーケット文化の魅力だと思うわ。

海、自然との関係を言葉にするなら?

自然との関係は、とても深くて大切なもの。インスピレーションの源でもあり、心を整えてくれる存在でもある。時間があればビーチへ行ったり、自然の中を歩いたりするのが好き。海に入ると、気持ちがリセットされる感覚があって、癒しという言葉だけでは足りないくらい。落ち込んでいるときも、嬉しいときも、少し泳ぐだけで気分が大きく変わる。海には人を癒す力があると、本気で思っている。
旅先でも気づけば、いつも海のある場所を選んでいる。シュノーケリングができたり、水の中を楽しめる場所。友人には「また海のきれいな場所に行ってるね」と笑われるけれど、それくらい自然に惹かれているということだと思うわ。
去年訪れた日本では、沖縄の石垣島や宮古島がとても印象的だった。宮古島で見た色とりどりのハイビスカスを写真に収め、そのまま作品として描いたの。旅や自然で感じたことが、そのまま表現につながっていくことが多い。

あなたの人生に欠かせない3つのもの

1つ目は、海の近くで暮らすこと。歩いて5分で海に行ける距離が理想。
2つ目は、人とのつながり。家族と離れているからこそ、バイロンで出会った友人たちは家族のような存在。彼らなしの生活は考えられないわ。
3つ目は、穏やかな環境。自然に囲まれ、自分の空間が落ち着いていること。心が安心できる場所で過ごすことが、とても大切。

今後の夢目標

アートイベントに参加しながら、より多くのクリエイティブな人たちとつながっていきたい。そして写真にも、もっと力を入れていきたいと思ってる。これからの数年は、旅もいっぱいしたいな。今一番行きたい場所はタヒチ。何度か計画しながら実現できていないから、近いうちに必ずいかねくちゃ。

これから何か新しいことに挑戦したい人へのアドバイス

考えすぎないこと、とにかくやってみること。それが一番大事だと思う。頭の中で考えすぎて動けなくなることって多いけれど、実際にやってみると意外とシンプルなことも多い。
うまくいかないことがあっても、「やってみた経験」は必ず残るし、「やらなかった後悔」よりずっといい。そして、愛情や情熱を持って取り組めば、思っている以上にうまくいくことも多いもの。私自身も最初は怖かったけれど、挑戦したからこそ今がある。だからこそ、怖くても一歩踏み出してみること。それが何より大切なことだと思う。

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

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  • 【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/31_アイナ・エリアス
  • 2026.03.30

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Aina Elias アイナ・エリアス
スペイン・カタルーニャ出身のサーファー兼フォトグラファー。現在はスリランカを拠点に、水中撮影や自然光を活かした作品を通して、ブランドやクリエイティブプロジェクトに携わりながら、自分らしい表現を追求している。

あなたのことについて教えて

生まれ育ちはスペインのカタルーニャ地方、海沿いのコスタ・ブラバというエリア。コンスタントに波がある場所ではないけれど、ここで11歳のときにサーフィンを始めた。子どもの頃からサーフカルチャーやその業界に憧れがあって、旅もよくしていたの。同じ頃に写真も撮り始めて、最初はGoProのようなアクションカメラで、サーフィンに行くときに友達を撮ったりしていた。私の町は緑や崖が多くて自然が豊かだから、どこへ行くにもカメラを持っていって、Instagramに投稿していたわ。そのうち「もっとちゃんとしたカメラで撮りたい」と思うようになって、家にあったカメラを両親から借りたの。そこからは本格的に、自分の好きな世界、旅やサーフィン、海のある暮らしを撮るようになった。サーフィンと写真、ふたつの情熱が自然に重なっていった感覚だわ。
基本は独学で学びつつ、ときどきワークショップなどの小さな講座にも参加していた。高校生のとき、カタルーニャでは卒業のために最終課題プロジェクトを提出する必要があって、時間も労力もかかるから、本当に興味のあるテーマを選ぼうと思って迷わず「水中撮影」を選んだの。
そんなときに南スペインで開催されていた「It’s Only Water」というクリエイティブプロジェクトのワークショップを偶然見つけた。当時は今のように大きな規模ではなく、小さなスタジオで少人数向けに活動していたから、遠くの町から来た私に主催者は驚いていたわ。座学から始まり、そのあと実際に海に入って学んでいく中で、時間も労力も忘れて夢中になっている自分に気づいたの。「これがやりたいことだ!」と心から思えた瞬間だったわ。主催者もその熱意をすごく喜んでくれて、それから連絡を取り続けるようになった。
数年後、「一緒に働かない?」と声をかけてもらって、夏にキャンプやスクールの撮影を手伝うようになった。毎日のように海に入りながら撮影して、ほかにもクリエイティブなプロジェクトに関わって、水中写真家としての基礎や現場での動き方、本当に多くのことを学んだわ。あのワークショップに参加した日が、人生を変えたきっかけだったと思っている。
そうやって少しずつ、自分のキャリアが形になっていったの。今はスリランカを拠点に、クリエイティブなプロジェクトを中心に活動している。ブランドやホテル、レストランと仕事をしているけれど、お金のためというより、本当にやりたいと思えるものだけを選ぶようにしている。写真を大切にしてくれる人たちと一緒に仕事をするのが好きで、海や自然の世界観を持つブランドと関わることが多い。

スリランカでの生活

ここでの生活は本当に心地いいわ。時間の流れがゆっくりで、サーフィンをしたり写真を撮ったりしながら、自分と同じ価値観や目標を持つ人たちとつながる。そのシンプルなことを大切にしたいと思える場所なの。
自然とクリエイティブになれるというか、無理をしなくてもアイデアが湧いてくる感覚があるわ。ローカルの人たちのシンプルな暮らしを見ていると、豊かさって物の多さじゃないんだなって気づかされるの。

サーフィンを始めたきっかけ

サーフィンを始めたのは11歳のとき。ちょうど地元にサーフスクールができたの。父は昔からウォータースポーツに関わっていて、「何か海のスポーツをやらせたい」と思っていたみたい。最初はキッズ向けのパドルサーフレースから始めたけれど、一度サーフィンを体験してからは完全にハマったわ。波はとても小さかったけれど、11歳の私たちにはそれで十分だったの。
これまでたくさん旅をしてきたけれど、一番好きなのはスリランカとスペイン南部。基本的にロングボードに乗っていて、次に行きたい場所はフィリピン。コミュニティの雰囲気やライフスタイルがきっと自分に合う気がしているの。それからメキシコやコスタリカにも行ってみたい。特にラ・サラディータやバハ・カリフォルニア。これから自分の人生がどこに連れていってくれるのか、楽しみだわ。

海、自然との関係

海にいると、すべてから切り離される感覚があるの。自分にだけ集中できる時間というか、音楽も何もない中で散歩しているときのように、自分の思考と向き合える時間。あの瞬間は、他のことは何も関係なくて、ただ「私と海」だけがある感覚だわ。サーフィンをしていると「今日はこれを練習しよう」という目標はあるけれど、同時に「今は私の時間だ」と思えるようになったの。リラックスして、余計なことを考えず、ただ波に乗る。それが最高の時間だわ。

写真、クリエイティビティのインスピレーション

雑誌がすごく好きなの。スペインの家にはここ数年で集めた雑誌のコレクションがあって、よく眺めているわ。本や雑誌を見ながら、ページに印をつけたりメモを書いたりして、そこから新しいアイデアが浮かぶことも多いの。
スリランカでスクーターに乗っているときや歩いているとき、ふと景色を見て「今カメラがあったらいい写真が撮れるのに」と思うことがある。頭の中にその写真のイメージが浮かぶ感じね。あとは、クリエイティブな人との会話からインスピレーションをもらうことも多いわ。
私の写真のスタイルは、できるだけシンプルに、ありのままを映し出すこと。自然光を使うのが好きで、海のキラキラした光や、日の出から3時間くらいのナチュラルな朝の光を大切にしている。自分の好きなものを記録する感覚で撮っているわ。できるだけリアルで、本物らしくありたいの。

今後の夢や目標

これからの数年は、写真のスキルをもっと伸ばしていきたいと思っているわ。たくさんのクリエイティブな人たちとつながって、一緒に何かを生み出していきたいの。旅をしながらブランドの仕事にももっと関わって、キャンペーン撮影やアウトドアスポーツ、サーフィン、旅など、ストーリーのある仕事に携われたら嬉しいわ。

あなたの生活に欠かせない3つのもの

1つ目はカメラ。仕事でもあるけれど、同時に情熱でもあるの。だから仕事をしていても「仕事をしている」という感覚がないことがあるくらい、大切な存在だわ。2つ目は家族と友達。いつも私を支えてくれている、今の私をつくってくれた大切な存在なの。3つ目は………たぶんスペインの食べ物ね 笑。

これから何か新しいことに挑戦したい人へのアドバイス

何が起こるかなんて誰にも分からないから、あまり考えすぎず、とにかくやってみることだと思うわ。他の国に移住したい、新しい趣味を始めたい、どんなことでも変化には大変な時期がある。でもその先には、きっと素晴らしい時間が待っているはずなの。
同じ場所にずっといたら見られない景色や経験が必ずある。そして何より大事なのは続けること。続けていけば、あとになって「あのとき動いてよかった」「続けてよかった」と思える日が必ず来るはずだから。

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

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  • 【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/30_リア・ヘルザー
  • 2026.03.16

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Liah Herzer リア・ヘルザー
スイス・ジュネーブ出身のサーファー。現在はバイロンベイを拠点に活動している。ロングボーダーとしてコンペティションにも挑戦しながら、マーケティングエージェンシーでクリエイティブマネージャーとして働いている。

あなたのことについて教えて

生まれ育ちはスイスのジュネーブ。子どもの頃からスノーボード、ウィンドサーフィン、クライミング、ハイキングなど、多くのアウトドアスポーツに親しんできた。本当は幼い頃からサーフィンをしたかったけど、スイスは内陸国で海がない。だから実際に始めたのは、自由に旅行ができるようになった16〜17歳の頃。
ポルトガルのサーフキャンプに夏の間滞在したことがきっかけでサーフィンを始め、そこでオーストラリア人のサーファーたちと出会った。彼らからオーストラリアの波の素晴らしさを聞き、6年前、20歳のときにオーストラリアへ行くことを決めた。
それ以来、サーフィンに情熱を注ぎ、昨年からはコンペティションにも挑戦している。オーストラリアの老舗サーフボードブランド、Keyo Surfboardsにスポンサードしてもらえたことは大きなターニングポイントだった。それをきっかけに試合にも本格的に取り組むようになった。Noosa Festival of Surfingに出場したり、昨年はニュージーランドの大会にも招待され、今年もまた参加する予定。私にとってサーフィンは純粋な楽しさと情熱から続けているもの。Keyoは私のどんなリクエストにも応えてくれて、まさに一本一本がマジックボードだと感じている。
仕事はバイロンベイのマーケティングエージェンシーで、コンテンツマネージャー兼クリエイティブマネージャーとして働いている。水の中とはまた違う形で創造性を発揮できる仕事で、毎日がとても充実しているわ。

オーストラリア、バイロンベイでの生活

バイロンベイに初めて来た6年前、ここはすぐに「自分の居場所」だと感じた。ここで素晴らしいコミュニティに出会い、サーフィンだけでなく、クリエイティブやマーケティングのキャリアにおいても多くのチャンスに恵まれてきた。夢に向かって努力すれば、この場所は本当に多くの機会を与えてくれる、豊かで特別な場所だと思っている。
毎朝起きて海を眺め、日の出を見て、トレーニングに行く。そんな日常を送れることに、日々感謝している。バイロンは小さな町でありながら、カフェやファッションブランド、サーフィン業界、洒落たレストランなど、都市の魅力もすべて揃っている。それでいて、小さな町ならではの温かいエネルギーもある。一年を通して安定した波があることも大きな魅力で、私にとってここは特別な場所。
一日の流れは、まず朝早く起きてトレーニングに行くところから始まる。サーフィンを続けるために体を強くしておきたいし、特に肩をケガしないようにしたいから、朝のうちにトレーニングを済ませておくのが日課になっている。そのあとカフェに行き、だいたい1時か2時くらいまでマーケティングの仕事をしている。基本的にはパソコンでの仕事で、ミーティングに参加したりして頭をフル回転させる時間。2時くらいからサーフィンして、そのあとまた少し仕事をする。夕方に波があれば、もう一度サンセットサーフィン。帰宅したら、月曜日と火曜日はオンラインでマーケティングとビジネスの勉強をしている。夜10時くらいまで授業を受けているわ。勉強も仕事も自分の好きな分野だから、苦にならず続けられている。

お気に入りのサーフスポットと次に行きたい場所

バイロンでお気に入りのサーフスポットは、ワテゴスやパス。ブロークンヘッドやバックビーチのような、もう少し人の少ないサーフスポットも好き。最近はロングボードでビーチブレイクをサーフィンすることもとても楽しんでいる。ポイントブレイクとはまた違って、少しチャレンジングだから上手くなりたいという気持ちが強くなる。
まだ行ったことのない場所も多いけど、特に行ってみたいのはインドネシアのメンタワイ諸島とモルディブ。どちらもロングボーダーにとって理想的なデスティネーション! 実は、友人がメンタワイでロングボードのリトリートを開催していて、コーチの一人として参加するかもしれない。もし実現すれば、最高の経験になるわ。

海、自然との関係

スイスで育ち、幼い頃から多くのアウトドアスポーツに親しんできた私にとって、自然は「遊びに行く場所」であり、日常の雑音から離れて自分を取り戻す場所。自然の中では、本来の自分や純粋な感覚ともう一度つながることができる。
海もまた、私にとって同じような存在。よくある表現かもしれないけれど、海に入ると「今この瞬間」に意識が向く。そしてサーフィンをしていると、波が海を長い距離旅してきたエネルギーの最後のかけらだということを思い出す。そのエネルギーが崩れる直前の瞬間を、私たちはサーフィンという形で共有している。その力を受け取ることで、自分自身も大きなエネルギーをもらう感覚がある。海は私にとって、心身をリセットし、一日の疲れを流し、創造性を表現できる場所でもある。そこでは自然なフローやリズムも感じることができる。だけど、海はいつも優しいだけではない。時には荒れて、私たちに挑戦を与えることもある。だからこそ、とても謙虚な気持ちになる。自分では「今日は完璧にいける」と思っていても、大きなセットを頭からくらうこともある。さまざまな感情を経験できるからこそ、海は間違いなく、私がいちばん幸せを感じる場所。

あなたの生活に欠かせない3つのもの

まず間違いなくサーフィン。サーフィンは日常の一部で、私が幸せでいるために欠かせないも。二つ目はコミュニティ。クリエイティブで志の近い人たちとつながり、お互いに刺激を与え合い、挑戦し合える環境はとても大切。バイロンベイはその点でも特別な場所で、周りには素晴らしいことに挑戦している人が多い。自然と自分も何かを成し遂げたいという気持ちになる。三つ目は太陽。太陽の光は私にとって欠かせないもので、心身をリチャージしてくれる存在。健康の面でもとても重要で、太陽のある環境は私の生活にとって不可欠。

これから何か新しいことに挑戦したい人へのアドバイス

新しいことを始めたり、夢を追いかけてる人に伝えたいのは、「自分の夢を大切にすること」。大きな目標を前にすると、とても遠く感じたり、どうやってそこにたどり着けばいいのか分からなくなることもあると思う。でも目標を達成したときに振り返ってみると、それはただ一歩一歩積み重ねてきた結果だったと気づく。
例えば「1年後の目標」「6ヶ月後の目標」「3ヶ月後の目標」を設定する。そしてまずは、その3ヶ月の目標を到達するために、今何をすればいいのかを考える。そうやって少しずつ進んでいくことで、大きな目標に近づいていく。
そしてもう一つ大切なのは、思い切って行動すること。怖くても、まずはその世界に飛び込んでみる。さらに、自分の夢やビジョンを周りの人に話すこともとても大切だと思う。新しいビジネスやプロジェクトを始めたとき、最初に応援してくれるのは身近な人たちであることが多い。家族や友人はあなたのことを理解しているからこそ応援してくれるし、サポートしたいと思ってくれる。そこから少しずつ輪が広がり、新しいクライアントやチャンス、仕事の機会につながることもある。自分の夢について話していると、思いがけないところで「実はちょうどそういう人を探していた」と言ってもらえることもあるかもしれない。だからこそ、周りの人と自分のビジョンを共有することはとても大切だと思う。
さらに、夢を言葉にすることは、自分の現実を形づくることにもつながると感じている。いわゆる「マニフェステーション(引き寄せ)」の考え方にも近いけど、自分の望む未来を言葉にして表現することで、その現実が少しずつ形になっていくと信じている。結局のところ、夢を実現するために大切なのは「自分のビジョンを語ること」と「行動すること」。この二つが成功につながる大きな鍵だと思う。

photography_HANNAH FILEN THEO CALVET EMMA HARDY

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

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  • 【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/29_サマラ・クリブ
  • 2026.03.02

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Samara Cribb サマラ・クリブ
ゴールドコーストを拠点に活動するサーファー/クリエイター。海とともに育ち、マーケティング、フリーランス、スーパーヨットでの仕事を経て、あらためて“創ること”を軸に据えた。現在は、自身のクリエイティブな世界をさらに広げている。

あなたのことについて教えて

生まれ育ちは、バイロンベイの少し南にあるエバンズヘッドという小さな海沿いの町。のんびりとしたスローな空気が流れる、静かな田舎町。三姉妹の末っ子で、男の子がいなかったから、父にとって私たちは「サーフィンをさせるしかない存在」だったんじゃないかな(笑)。
毎週末のようにサーフィンの大会へ連れて行かれ、気づけば自然とサーフィン中心の生活ができあがっていた。まだ幼くて深く考えることもなく、ただ遊びの延長のような感覚でやっていたのを覚えている。三姉妹みんな一度はサーフィンをしていたけれど、続けたのは私だけ。父にとっては、きっと最後の希望だったんじゃないかな。今でも会うたびに「まだサーフィン続けてるのか?」って聞かれる。
子どもの頃は自転車で海へ向かい、毎日暗くなるまでサーフィンしてた。町はとても小さく、誰もが顔見知りで、道を歩けば何人もの人に声をかけられる環境。どこへ行っても誰かが見守ってくれているような安心感があった。その空気が大好きだった。
高校を卒業して20代に入る頃、少し物足りなさを感じるようになり、「もっとエネルギーがあって、刺激のある場所へ行きたい」と思い、ゴールドコーストへ引っ越したの。そして、いまはここが拠点。
大学を卒業してから、マーケティングやクリエイティブ、コンテンツ制作の分野で仕事している。大学では幅広く学べそうなビジネスを専攻し、自然な流れでマーケティングの道へ進んだ。19歳のとき、地元のスキンクリニックでSNSやコンテンツ制作を任せてもらうチャンスをもらった。当時は完全にゼロからのスタートで、ハイパーリンクの意味すら分からなかった。でもオーナーが一からすべて教えてくれて、その経験が今の土台になっている。20歳のとき、「自分でもできるかもしれない」と思ってフリーランスとして独立。周囲から「それは仕事にならない」と言われながらも少しずつクライアントが増え、気づけばフルタイムのような働き方になっていた。だけど22歳のとき、パソコンに向かい続ける生活に物足りなさを感じ始めて。もっとリアルなつながりや新しい刺激が欲しくなり、思い切ってマーケティングの世界を離れて、スーパーヨットの仕事へ飛び込んだ。そこで気づいたのは、「創ること」は自分にとって欠かせないものだということ。忙しさの中でクリエイティブな時間がなくなると、心のどこかが少しずつ削られていく感覚があった。いまはデザインをしたり、新しいアイデアを形にしたりする日々に戻り、心から満たされている。

サーフィンを始めたきっかけ

サーフィンを始めたのは、地元のエバンズヘッド。正直に言うと、サーフィンをしなかったら他にやることがあまりなかった、というのも理由のひとつ。父はいつも海に連れて行ってくれて、彼の友人たちもみんな私を知っていて、「また明日も海でね!」って声をかけてくれる。そんな環境の中で、自然とサーフィンが当たり前になっていた。そこから、地元や近くの大会に出るようになった。女の子同士でサーフィンをする感覚は、ゴールドコーストに来てから初めて知った。それまでは男の子たちと一緒に大会に出たり、一人で海に入ったり、父とサーフィンすることがほとんどだったから。ゴールドコーストはまったく雰囲気が違う。女の子のサーファーが自然に主役になれる場所、そんな印象。メインはロングボードで最近はミッドレングスにも挑戦している。少し前にインドネシアへ行ったときも、ミッドレングスだけを持っていった。
これまでいろいろな場所で波に乗ってきたし、これから行きたい場所もたくさんあるけれど、世界で一番好きなのは、クーランガッタのレインボーベイ。家から5分の場所に、世界で一番好きなブレイクがあるというのは本当に幸せなことだと思う。オーストラリア中を旅しながらサーフィンもしたし、西オーストラリアの海もとても美しかった。でも、ロングボーダーとして選ぶなら、やっぱりレインボーベイ。透き通った水、海へ向かう道から見えるスナッパーロックスからキラまでの景色。サンライズやサンセットの時間、海がやわらかな色に溶けていく瞬間。胸がきゅっとなるような、現実とは思えない景色。
もう一つ特別なのは、ロンボク島にあるエカスという小さなブレイク。次に行ってみたいのはモロッコとコスタリカ。

ゴールドコーストでの暮らし

小さな町で育った私にとって、大都市のシティライフはどこかしっくりこなかった。今でも自分の中には、あの小さな町の空気がちゃんと残っている気がする。少しストレスを感じた日は、ただ静かにビーチに座っていたくなる。地元を離れたばかりの頃は、今までにない忙しさや刺激を求めていた。でも時間が経つにつれて、本当の落ち着きや幸せは、静かな海辺で過ごす時間の中にあるんだと気づいた。ゴールドコーストのいいところは、その両方があること。仕事のチャンスや新しい出会いがある一方で、ひとりでビーチに座ってコーヒーを飲みながらぼーっとできる静けさもある。そのバランスがちょうどいい。
ここに住んでいる人たちは、「働くために生きている」というより、「ちゃんと暮らすためにここにいる」という感じがする。ブリスベンやシドニーへ行くと、都会のエネルギーに圧倒されることもあるし、人生が仕事中心に回っているように見えることもある。でもここは、平日の朝でも海沿いを歩けば、ランニングしている人、トレーニングしている人、ビーチでのんびりしている人がいる。その景色を見るだけで、自分の神経もすっと整っていく。自然と深呼吸したくなるような場所。

海、自然との関係

サーフィンは、私にとってある意味“瞑想”みたいなもの。正直、静かに座ってする瞑想はあまり得意じゃない。頭の中はいつも忙しいし、「もっと上手くなりたい」とかいろいろ考えてしまう。でも海に入ると、不思議と余計なことが消えていく。2時間くらい海に浮かんで、誰とも話さず、ただ波を待つ時間。それは自分と海だけの時間。すごく静かで、でもちゃんと生きている感じがする。
海に入って後悔したことは一度もない。たとえ思うように波に乗れなかった日でも、海から上がる頃には必ず「入ってよかった」と思えている。海は、ほかではなかなか得られない深い静けさをくれる。同時に、海の力を絶対に侮らないようにしている。特に海のそばで育っていない人や初心者の人は、そのパワーを甘く見てしまうこともあると思う。大きな波、カレント、潮の流れ、風。完全に自然のエレメントの中にいるということ。
「今日はコントロールできてる」って思った瞬間に、まるで海が「考え直しなさい」と言わんばかりに、一瞬で打ちのめされることもある。だから自分は、海の“上”に立っている存在ではなく、海の“下”にいる存在。海に入るたびに、謙虚さを思い出させてもらっている。

人生に欠かせない3つのもの

一つ目は、ビーチや海のそばにいること。どんなに条件がよくても、そこに海がないなら選ばないと思う。それくらい、海は人生の前提。
二つ目は、体を動かせること。スーパーヨットで働いていた頃、自分だけの静かな時間がほとんどなく、思うように運動もできなかった。そのとき初めて、体を動かすことがどれだけ自分の心とつながっているかを実感した。動けないことは、想像以上にメンタルにも影響していた。
三つ目は、コーヒー。これはもう、シンプルに欠かせない存在。朝の一杯で、気持ちがちゃんと整う。

今後の夢と目標

まだ若くて、大きな責任がそこまでない今のうちに、できることは全部やってみたい。その一つが、パートナーと海外に住むこと。同時に、仕事のスタイルもきちんと整えたい。自分にとって譲れないものを大切にしながら、落ち着きもあって、でも旅も続けられる。そんなバランスを見つけたいと思っている。

これから何か新しいことに挑戦したい人へのアドバイス

一番伝えたいのは、自分のエゴに邪魔されずに人に話しかけること。たった5分の会話でも、少し素直になって「実はこれ、よく分からない」とか「教えてほしい」と言えるだけで、何かが動き出すことがある。オープンな心で、オープンな姿勢で質問すること。この世の中のすべてを知っている必要なんてないし、そんな人はいない。でも、たった5分の会話が自分の人生を変えることもあるし、もしかしたら相手の人生を変えることだってあるかもしれない。
私自身、新しいことを始めるときは、すでにやっている人に「どう思う?」と素直に聞いてきた。それだけ。
サーフィンも同じで、「準備が完璧に整う日」なんてきっと来ない。だから飛び込むしかない。ずっと岸で座って、完璧な瞬間を待っていても、そんな日はたぶん来ないから。

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

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  • 【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/28_アニカ・マッコマーク
  • 2026.02.16

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Anika McCormack アニカ・マッコマーク
オーストラリア・ヌーサを拠点に活動するアーティスト。サーフィンと旅を通して出合う風景や色、人とのつながりを、どこか懐かしさを感じるレトロな感性で作品に落とし込んでいる。

あなたのことについて教えて

生まれはオーストラリアのメルボルン。5歳の頃に北にあるサンシャインコースト・ヌーサへ引っ越し、今ではここが私のホーム。昨年12月に仕事を辞め、現在はフルタイムでアーティストとして生計を立てることを目指し、日々模索している。
実は数日前に、メキシコへのサーフトリップから帰ってきたばかり。アートのインスピレーションも数えきれないほど受けた。旅はメキシコのサラディタ(La Saladita)から始まり、メキシコシティまで続いた。滞在中はスウェルが少なく小波が続いていたけど、私たちが帰国した途端に良い波が入り始めたと聞いて、また必ず戻りたいと思っている。
サーフィンを始めたのは2年前から。子どもの頃からヌーサに住んでいて、海はいつも身近な存在だったのに、なかなか始めるきっかけがなかった。今のパートナーと出会ったことをきっかけに、一気にのめり込んだ。それからはほぼ毎日サーフィンをするようになり、ヌーサ国立公園に入るのが日常になった。今はローカルシェイパー、Thomas Surfboardの9’4"に乗っていて、新しいボードももうすぐ届く予定。すごく楽しみにしている。
普段は朝4時に起きて、日の出前から海に。帰ってからはアート制作に取りかかり、波が良ければ夕方にもう一度サーフィンをしに行く。とてもシンプルだけど、この生活が本当に好きで、ずっと思い描いていたライフスタイルそのもの。
パートナーと出会ったのは高校生のとき。一緒にサーフィンを始めてから、同じ趣味を持つことで関係がぐっと深まったと感じている。今では話すことも、やることも、ほとんどがサーフィン。彼は撮影にもすごく力を入れていて、それが私のサーフィンの上達にもつながっている。お互いにサーフィンしているところを撮り合うのが最近の楽しみで、サーフィンを通して一緒に成長していけるのが素敵だなと思っている。

ホーム、ヌーサの魅力

ヌーサは、私にとってとても特別な場所。海沿いに広がる小さなサーフタウンで、どこを切り取っても絵になる街だと思う。オーストラリアの他の地域と比べても人々は穏やかで、訪れる人の多くがこの街を好きになる。
サーフシーンもすごく面白くて、私が暮らしているエリアはロングボードにぴったりの波が立つ場所。ヌーサ発祥のサーフボードやサーフアパレル、ブランドも多くて、スタイルのあるサーファーが集まっている。海の中では、優雅にクロスステップやハングファイブを決めるサーファーが多く、海に入るたびに「あんな風に乗れたらいいな」とインスパイアされてる。それが、自然と毎日海に向かいたくなる理由のひとつになっているかも。
プロのロングボードの大会や、ヌーサ・ロングボード・フェスティバルなど、1年を通して色々なイベントがあるのもこの街の魅力。毎年それを観るのが楽しみで、そのたびにロングボードカルチャーの奥深さを感じている。中でもお気に入りのサーファーは、バイロンベイ出身のJosie Prendergast。あのスタイルと、ボードの上での華麗な佇まいは、やっぱり彼女にしか出せないものだと思う。

アートを始めたきっかけ

幼い頃から、アートは常に身近な存在だった。サーフィンを始めてからは特に、サーフトリップで訪れる土地や、海から見える景色や色、人とのつながりが、自然と自分のアートに反映されるようになったと感じている。
最近はレトロなテイストに惹かれており、集中している時は1日で描き上げることもあれば、1週間近くかかることもある。アートはあくまでも“本当に好き”という気持ちの延長線上にあるもの。ビジネスにしたい、有名になりたいという願望はなく、自分にプレッシャーをかけない範囲で続けている。だからこそ長く続き、本当に描きたいものを描けていると思う。夢は、いつか自分の作品で個展を開くこと。

海、自然との関係

海に入っていると、いい意味で思考が停止する。次に来る波や、周囲や海の状況のことしか考えていないから、日常生活での悩みや不安から解放される。たとえ波が良くなくてもパドルアウトするだけで気分が良くなるし、サーフィンは、マインドにもボディにも良い影響しかないと思う。

これから何か新しいことに挑戦したい人へのアドバイス

私が伝えられるとしたら、何事にもポジティブでいること。考え方ひとつで違う方向へ進んでしまうこともある。前向きに、起こることすべてを受け入れる気持ちでいると、最終的には自分にとって必要な形に、きちんと収まっていくはずだから。

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

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  • 【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/27_ダナ・ハマン
  • 2026.02.02

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Dana Hamann ダナ・ハマン
カリフォルニア・サンディエゴ出身。18歳でハワイへ移住し、現在はロンボクとハワイを行き来しながら、サーフィンとセルフアウェアネスを軸にしたリトリートを主催している。

あなたのことについて教えて

生まれ育ちは、カリフォルニアのサンディエゴ。高校を卒業した18歳のときにハワイ・オアフ島へ移住し、現在はインドネシアのロンボク島とハワイを行き来する生活を送っている。ここ3年以上は、サーフリトリートをフルタイムで主催してきた。でも今は、人生やビジネスにおける次のステージを模索する、ひとつの移行期間にいると感じている。
私が開催してきたリトリートは、「サーフィン × セルフアウェアネス(自己認識)」をテーマにしたもの。サーフィンの技術向上やマインドセットに深くフォーカスしながら、自己探求や、まだアクセスできていない自分自身の一部に触れていく時間も大切にしている。ラインナップを共有し、海や自然の中で過ごす時間を通して、参加者同士が正直に心を開ける場所、コミュニティをつくりたいという想いから始めた。参加者は皆、「学び、成長したい」という意欲を持ち、さらに旅という非日常の中で、目の前の体験に集中できる環境にいる。深い対話が生まれるための、完璧な条件がそこにはあった。

オーバーツーリズム、発展が著しいインドネシアのシーンとサーフィンとの葛藤

2025年は、インドネシアやサーフィン業界の変化も重なり、かなり自分の殻にこもっていたと思う。バリと同じように、ロンボクを訪れる人の数が一気に増え、そこに集まる人たちの層が変わってきた。その変化を受け入れるのが、正直難しかった。
昔みたいにローカルフードを食べ、ホームステイに泊まる生粋のサーファーたちではなく、今は温かいお湯が出るお洒落なヴィラに泊まり、アボカドトーストを食べ、西洋的なライフスタイルをそのまま持ち込んでいる人が多い。それ自体が悪いことだとは思わないけれど、今のロンボクは、欧米人に向けてつくられた世界のように感じてしまった。
コロナ以降、サーフィン業界は大きく変わり、ここ数年は過去最高に盛り上がり、収益性も高い時代になった。でも個人的には、その変化に強い葛藤を感じてきた。
私は幼い頃からサーフィンと共に生きてきたから、コロナ後にサーフィンと深い関わりを持ってこなかった人たちが、利益だけを目的にこの業界へ参入してくる姿を見るのは、正直つらかった。もちろん、彼らを責めることはできない。それでも、サーフィンの文化や歴史、エチケット、リスペクト、レガシーを理解しないままビジネスをつくっていく姿を目にすることで、自分自身の情熱が少しずつ削がれていくのを感じていた。
私は、サーフィンが生まれた理由や、文化を超えて大切に受け継がれてきた背景を守りたいと思っている。だから今、この業界の中で「自分はどんな形で存在したいのか」を改めて考えている。SNS的なサーフィンではなく、もっと本質的な部分から人を教育し、インスパイアできる関わり方を探している。

サーフィンを始めたきっかけと、お気に入りのサーフスポット

初めて波に乗ったのは2歳のとき。父親がサーファーで、ボードの前に一緒に乗せてもらったのがサーフィンとの出合いだった。5歳の頃から自分の波にプッシュしてもらうようになったけれど、子どもの頃はサーフィンはずっと「遊び」の一部。本気で向き合い始めたのは12歳くらいから。いとこたちと海で遊ぶときもサーフィンが当たり前で、そこからサーフィンは、私の生活の大部分を占める存在になっていった。
お気に入りのサーフスポットは、ロンボクのタンジュアンビーチ。世界中のたくさんの波に乗ってきたけれど、間違いなくタンジュアンが世界で一番好きな波。次に行きたい場所はモルディブ。最近出会った友人から、モルディブはサーフィンだけでなく、充実したマリーンアクティビティも楽しめると聞いて、近いうちに必ず行こうと思っている。

海、自然との関係

自然の中に身を置くことは、人生で感じてきた中で一番の「自由」を与えてくれる。海で過ごす時間は、ただ気持ちいいというだけでなく、自分の内側や魂の奥まで染み渡るような感覚。体がふっと軽くなり、今この瞬間に意識が向き、心が穏やかになって、どんな状況でも「生きていること」そのものに感謝できるようになる。
たとえ人生で何が起きていようと、どんな課題に直面していようと、体調を崩していても、健康や仕事、家族、ビジネスのことで悩んでいても、海にいるととにかく解放されて自由になれる。その経験を通して、普段の社会の中では見過ごされがちな、シンプルでささやかなことの尊さに気づかせてもらった。水(海)という自然の要素と、これほど健やかで深いつながりを持てていることに、ただただ感謝の気持ちでいっぱいになる。


これからの目標

もうすぐ30歳になあるんだけど、気づけばサーフィン歴は25年以上になる。去年開催したあるリトリートの最中、ふと、これまでサーフィンはずっと“誰かのため”にやってきたのだと感じた。10代から20代前半までは高校のサーフチームに所属し、もともとアスリート気質で負けず嫌いな性格もあって、大会で結果を出すためにスキル向上に集中してきた。それって今振り返ると、外からの評価や承認を求めていた部分が大きかったと思う。
そして20代前半から後半にかけては、ビジネスとしてレッスンやコーチング、サーフリトリートを開催したりして、サーフィンは常に“誰かと共有するもの”だった。30代に入るこれからは、サーフィンを“自分のためのもの”として大切にしたいと、強く思うようになった。もちろん、海の中で人をサポートする仕事への情熱は今でも変わらない。でも久しぶりに、誰かのためではなく、まずは“自分のためにサーフィンをする”ことを優先したいと思っている。
仕事の面では、ここ数年リトリートを開催してきた経験を通して、新しい形のサービスを始めることにワクワクしている。これまで、ガイドやサポーター、ときにはカウンセラーやセラピストのような役割で、人の旅に寄り添ってきた。今はその経験を活かして、本当の意味で人の役に立てる、持続可能なプログラムをつくりたいと考えている。まだ具体的な形は見えていないけれど、必ず形になる気がしている。

あなたの生活に欠かせない3つのもの

海、なんでも話せる友達、そして深いつながりを持てるコミュニティ。

これから何か新しいことに挑戦したい人へのアドバイス

すごくありきたりかもしれないけれど、自分を信じること。私は16歳のときにサーフィンを人生の道として選んだ。そのときは誰も「できる」と信じてくれなかったけれど、何があっても、自分が本当に信じていることや、心から望んでいることに正直でいれば、思い描いていた通りの形でなくても、最終的にはちゃんと辿り着けると思っている。

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

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