• 【特集】SURF MUSIC makes us "SALTY" #04 -制限なき選択/ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド-
  • 2024.10.17

海と対峙するとき、音楽は円滑油のような効果を発揮する。サーフィンと音楽が絡み合い起こる化学反応。多くの先人たちの言葉を交え時空に綴れ織りを描くとき、サーファーとダンスの関係が見えてくる。


 21世紀に突入すると、サーフボードがトライフィン一辺倒からオルタナティブに舵を切ったように、サーフミュージックも多様化する。カリフォルニアのトーマス・キャンベルは、神童ジョエル・チューダーをフューチャーした『シードリング』と『スプラウト』で来るべき時代を予言した。シドニーのアンドリュー・キッドマンは徹底的にサウンドにこだわり、自らギターを奏で歌い『リトマス』を完成させた。ジェフリーズベイのパーフェクションのハイラインを滑る奇才デレク・ハインドとギャラクシー500のノイジーなサウンドの融合は、いま観てもドラマティックだ。

 サーファーと音楽の蜜月関係は、'60年代初頭のギターインストルメンタルバンドがアメリカ西海岸、オーストラリアで数多くのアルバムを発売したコマーシャリズムの台頭が顕著だが、'71年トッププロのコーキー・キャロルがハワイアンテイスト満載のアルバム「レイドバック」、同年ラグーナビーチのホンクスが「ファイブ・サマー・ストリーズ」のサウンドトラックをリリースしたことが一石を投じた。これらは今ではCD化され、名作として聴き続けられている。ワールドチャンピオンながらスポンサーのロゴなしのボードでコンテストに出場したヒーロー、トム・カレンも本格的にレコーディングを行いCDをリリース、またケリー・スレーター、ロブ・マチャド、ピーター・キングが結成したバンド「ザ・サーファーズ」のアルバムも話題になった。

 2001年には歴史上、過去最大のセールスを記録するアコースティックサウンドが世界中のサーファーを熱狂させた。その立役者はハワイのジャック・ジョンソンである。世界中がジャックに続けと「自称サーファー兼ミュージシャン」が出現したが、消えるもの早かった。ジャックが広く受け入れられたのは、原点でもあるハワイのビーチボーイズたちが、ウクレレとスラッキーギターで独自の世界を創造したのと重なったから。ワイキキのビーチボーイズという文化の出現は1950年代に遡るが、彼らが奏でた音楽は決してコマーシャルナイズされたものではなく、むしろ録音すらされることなく自然と今に轢き継がれている。音楽を創造するには膨大なエネルギーが必要とされるが、商い目的はなく音楽でサーフィンを表現しようと試みるサーファーが増えたのは時代の継承に他ならない。ギターとサーファーとの関係は定かではないが、楽器で唯一抱き包み奏でることが出来るのはギターだけである。気軽に演奏でき、持ち運びも苦にならない。サーフミュージックの主流にギターが存在するのも、手に届く楽器であるのが最大の理由であろう。ジョー・サトリアーニの「サーフィン・ウィズ・ジ・エイリアン」で聴けるライトハンド奏法と高速オルタネイトピッキングも、サーフィン脳に重く深く響く。


【SURF MUSIC makes us "SALTY"バックナンバー】
#01-潮騒香る音楽に身を委ね踊るとき-
#02 -ショートボード革命とサイケデリックサウンドの相関図-
#03-世界中で無限の変貌を遂げ始めたフラワーチルドレンの種-

>>特集の続きは本誌でご覧ください。

「SALT…Magazine #01」 ¥3,300

本誌では24ページにわたってSURF MUSICを特集。“サーフィンと音楽”の蜜月関係から、アンドリュー・キッドマンのインタビュー、抱井保徳さんのコラムなど掲載。潮の香りをまとったソルティな音楽は、サーフィンライフを豊かにしてくれる。


photography_Aition text_Tadashi Yaguchi

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