• Burleigh Single Fin Festival 2025 スピンオフ企画_中村拓久未と安室丈が辿り着いた、サーフィンの新境地
  • 2025.06.30

前編後編と2回に渡って特集した「Burleigh Single Fin Festival 2025」。コンテストに出場した中村拓久未と安室丈は、これまでも大会やトレーニング、撮影など数えきれないほどオーストラリアを訪れてきた。今回もコンテスト出場というミッションはあったものの、いつものストイックな旅とは異なり、多くの出会いと学びがあった。ここでは、ふたりの旅の様子を紹介していく。


シングルフィンはあれこれ考えず、“ナチュラル”に

コンテストの2日前にオーストラリア入りし、普段なかなか乗る機会がないシングルフィンの練習を行ったふたり。拓久未は日本から持参したLightning Boltのショートボードを、丈はSurfers Countryのミッドレングスを借り、それぞれのボードの特性を確かめながら丁寧に乗り込んだ。「シングルフィンは無理に動かそうとしてもダメだね」と、2人は口を揃え、「でも、グライド感が最高に気持ちいい!」と笑顔を見せた。“ボードを無理にコントロールするのではなく、波に調和するように乗る”。トップサーファーらしく、彼らはすぐにボードの特性をつかみ、コンテストに向けて調整を進めた。

BILLABONGヘッドオフィスへ表敬訪問

コンテスト前日。「せっかくバーレーに来たのだから!」と、2人はバーレーヘッズに本社を構えるビラボンのオフィスを訪れ、スタッフの案内でオフィスツアーを体験した。「Burleigh Single Fin Festival」のメインスポンサーを長年務める理由も、この地への深い愛情によるものだ。
ビーチからクルマで5分、国道沿いの大きな広葉樹に囲まれたエントランスを抜けると、まるでリゾートホテルのような建物が現れる。ここが1973年の創業以来、サーフシーンを牽引し続けるビラボンの1号店であり、裏手に本社が併設されている。因みに、ブランド名がアボリジニの言葉で「大きな水溜まり」に由来することは、あまり知られていない。今から半世紀以上前、創業者ゴードン・マーチャントが自宅アパートで作ったボードショーツからブランドが興り、瞬く間に世界No.1ブランドへと成長したビラボン。ライフスタイル、コンペティション、カルチャー、コミュニティ、環境保護まで幅広くサポートする姿に、グローバルブランドとしての矜持を感じる。


高い天井と重厚な造りの建物。真鍮製のサーフボードのオブジェを横目に通路を進むと、写真やアート、広告、ポスター、映画のフライヤー、サーフトランクスにアパレル、歴代ライダーのサーフボードが飾られ、まるでミュージアムのような雰囲気。特に2人が目を奪われたのはミュージシャンとのコラボシリーズで、額装されたMETALICA、FOO FIGHTERS、RED HOT CHILI PEPPERSのトランクスを懐かしそうに眺めていた。もう一つ興味深かったのが、会議室に付けられた名称。「Occy Room」と「Billabong Pro Room」があり、それぞれオッキーとビラボンプロに関するポスターや資料が、壁一面を覆っていた。初対面のスタッフがほとんどだったが、かつて選手として活躍していたスタッフもいて、再会を喜ぶ場面もあった。一通り見終わった2人は、新作やサンプル品などたくさんのお土産を手に、隣接する店舗へ。日本では見られない広々とした空間には全アイテムがラインナップし、オーストラリアのローカルバンドとのコラボ商品など、レアアイテムも並ぶ。見上げるとライダーのポートレートが飾られており、そのセンターにはアンディ・アイアンの姿があった。

初めて触れたサーフィンの歴史

大会を通じてシングルフィンに興味を持ち、サーフカルチャーの奥深さを実感した2人。大会翌日、より深くサーフィンの歴史を学ぶため、カランビンにあるサーフィンミュージアム「SURF WORLD」へ向かった。2010年にオープンしたSURF WORLDは、クイーンズランド州唯一のサーフィン博物館で、オーストラリアはもとより世界最大級の規模を誇る。設立にはオーストラリア・サーフィン界の先駆者であり、シェイパーとして活躍したジョー・ラーキンが大きく貢献し、彼の逝去後は元プロサーファーのピーター・ハリスがパトロンを務めている。館内では、1900年から2000年までのサーフィンの歴史を年代ごとに紹介。さらに、重要人物や大会、映画、カメラ、ウクレレなど、様々なテーマに沿った展示が行われ、数えきれないほどのサーフボードが並ぶ。その多くがメイド・イン・オーストラリアで、しかもアグネス・ウォーターからアンゴーリーまでの地域で作られたボードが9割以上を占める。このことから、このエリアがオーストラリア・サーフィンの中心であることがよく分かる。パーコをフィーチャーしたコーナーには、彼を忠実に再現した銅像も展示されていた。前日の大会で挨拶を交わしたばかりの2人は、その像を親近感を持って見入っていた。

「20年サーフィンをやってますが、博物館を訪れるのは初めてでした。自分も日本の歴史あるYUのボードに乗っているので、もっと歴史を学びたいと思いました」と拓久未。すると丈も続けて「サーフボードの起源であるアライアから現代のボードまで、時代の変遷を見られたのがとても良かったです。知らないシェイパーも多く、もっと勉強しようと思いました」と語った。
これまで、試合で勝つことを目標にサーフィンをしてきた2人。これからもその目標は変わらないが、歴史とカルチャーの奥深さを知ることで、新たなサーフィンの魅力に気づくことができた。
「シングルフィンに乗ることで、サーフィンの気持ちよさと楽しさを再発見しました。これからハマりそうです」。丈がこぼした言葉に、拓久未も大きく頷いていた。


仲村拓久未
1996年、奈良県出身。幼少期に奈良から三重に引越し、小学校3年生から本格的にサーフィンを始める。16歳でプロテストに合格し、2015年にJPSAの年間チャンピオンを獲得。現在は湘南・鵠沼と伊勢の2拠点生活を送っている。Instagram


安室丈
2001年、徳島県出身。サーファーでありシェイパーの父親の影響を受け幼少期からサーフィンを始め、14歳でプロに転向。2017年、宮崎県日向で行われた世界ジュニア選手権のU16で金メダルを獲得。2023年JPSAランキングは19位。Instagram

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前編後編

photography _ MACHIO 
special thanks _ Billabong, Zack Balang, Burleigh Boardriders

>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください。

「SALT…Magazine #04」 ¥3300
サーフィン、暮らし、生き方、そして思考をより本質的なものへと回帰。シンプルで持続可能な在り方を追求することこそが、真の豊かさにつながる。

<Contents>
⚪︎Burleigh Single Fin Festival
⚪︎未知なる領域へ̶̶ サーフィンの新境地
⚪︎シングルフィンを愛する10人のインタビュー
⚪︎STILL AND TRUE
⚪︎笹子夏輝 ~カリフォルニア・スタイル巡礼の旅
⚪︎サーフィンによるマインドセットのススメ
⚪︎Stories Behind the Waves
⚪︎今を生きるサーファーたちのダイアログ
⚪︎世界の果て、南ポルトガル・サグレス
⚪︎Column _ Miyu Fukada

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