

前編・後編と2回に渡って特集した「Burleigh Single Fin Festival 2025」。コンテストに出場した中村拓久未と安室丈は、これまでも大会やトレーニング、撮影など数えきれないほどオーストラリアを訪れてきた。今回もコンテスト出場というミッションはあったものの、いつものストイックな旅とは異なり、多くの出会いと学びがあった。ここでは、ふたりの旅の様子を紹介していく。

コンテストの2日前にオーストラリア入りし、普段なかなか乗る機会がないシングルフィンの練習を行ったふたり。拓久未は日本から持参したLightning Boltのショートボードを、丈はSurfers Countryのミッドレングスを借り、それぞれのボードの特性を確かめながら丁寧に乗り込んだ。「シングルフィンは無理に動かそうとしてもダメだね」と、2人は口を揃え、「でも、グライド感が最高に気持ちいい!」と笑顔を見せた。“ボードを無理にコントロールするのではなく、波に調和するように乗る”。トップサーファーらしく、彼らはすぐにボードの特性をつかみ、コンテストに向けて調整を進めた。





コンテスト前日。「せっかくバーレーに来たのだから!」と、2人はバーレーヘッズに本社を構えるビラボンのオフィスを訪れ、スタッフの案内でオフィスツアーを体験した。「Burleigh Single Fin Festival」のメインスポンサーを長年務める理由も、この地への深い愛情によるものだ。
ビーチからクルマで5分、国道沿いの大きな広葉樹に囲まれたエントランスを抜けると、まるでリゾートホテルのような建物が現れる。ここが1973年の創業以来、サーフシーンを牽引し続けるビラボンの1号店であり、裏手に本社が併設されている。因みに、ブランド名がアボリジニの言葉で「大きな水溜まり」に由来することは、あまり知られていない。今から半世紀以上前、創業者ゴードン・マーチャントが自宅アパートで作ったボードショーツからブランドが興り、瞬く間に世界No.1ブランドへと成長したビラボン。ライフスタイル、コンペティション、カルチャー、コミュニティ、環境保護まで幅広くサポートする姿に、グローバルブランドとしての矜持を感じる。






高い天井と重厚な造りの建物。真鍮製のサーフボードのオブジェを横目に通路を進むと、写真やアート、広告、ポスター、映画のフライヤー、サーフトランクスにアパレル、歴代ライダーのサーフボードが飾られ、まるでミュージアムのような雰囲気。特に2人が目を奪われたのはミュージシャンとのコラボシリーズで、額装されたMETALICA、FOO FIGHTERS、RED HOT CHILI PEPPERSのトランクスを懐かしそうに眺めていた。もう一つ興味深かったのが、会議室に付けられた名称。「Occy Room」と「Billabong Pro Room」があり、それぞれオッキーとビラボンプロに関するポスターや資料が、壁一面を覆っていた。初対面のスタッフがほとんどだったが、かつて選手として活躍していたスタッフもいて、再会を喜ぶ場面もあった。一通り見終わった2人は、新作やサンプル品などたくさんのお土産を手に、隣接する店舗へ。日本では見られない広々とした空間には全アイテムがラインナップし、オーストラリアのローカルバンドとのコラボ商品など、レアアイテムも並ぶ。見上げるとライダーのポートレートが飾られており、そのセンターにはアンディ・アイアンの姿があった。

大会を通じてシングルフィンに興味を持ち、サーフカルチャーの奥深さを実感した2人。大会翌日、より深くサーフィンの歴史を学ぶため、カランビンにあるサーフィンミュージアム「SURF WORLD」へ向かった。2010年にオープンしたSURF WORLDは、クイーンズランド州唯一のサーフィン博物館で、オーストラリアはもとより世界最大級の規模を誇る。設立にはオーストラリア・サーフィン界の先駆者であり、シェイパーとして活躍したジョー・ラーキンが大きく貢献し、彼の逝去後は元プロサーファーのピーター・ハリスがパトロンを務めている。館内では、1900年から2000年までのサーフィンの歴史を年代ごとに紹介。さらに、重要人物や大会、映画、カメラ、ウクレレなど、様々なテーマに沿った展示が行われ、数えきれないほどのサーフボードが並ぶ。その多くがメイド・イン・オーストラリアで、しかもアグネス・ウォーターからアンゴーリーまでの地域で作られたボードが9割以上を占める。このことから、このエリアがオーストラリア・サーフィンの中心であることがよく分かる。パーコをフィーチャーしたコーナーには、彼を忠実に再現した銅像も展示されていた。前日の大会で挨拶を交わしたばかりの2人は、その像を親近感を持って見入っていた。






「20年サーフィンをやってますが、博物館を訪れるのは初めてでした。自分も日本の歴史あるYUのボードに乗っているので、もっと歴史を学びたいと思いました」と拓久未。すると丈も続けて「サーフボードの起源であるアライアから現代のボードまで、時代の変遷を見られたのがとても良かったです。知らないシェイパーも多く、もっと勉強しようと思いました」と語った。
これまで、試合で勝つことを目標にサーフィンをしてきた2人。これからもその目標は変わらないが、歴史とカルチャーの奥深さを知ることで、新たなサーフィンの魅力に気づくことができた。
「シングルフィンに乗ることで、サーフィンの気持ちよさと楽しさを再発見しました。これからハマりそうです」。丈がこぼした言葉に、拓久未も大きく頷いていた。

仲村拓久未
1996年、奈良県出身。幼少期に奈良から三重に引越し、小学校3年生から本格的にサーフィンを始める。16歳でプロテストに合格し、2015年にJPSAの年間チャンピオンを獲得。現在は湘南・鵠沼と伊勢の2拠点生活を送っている。Instagram
安室丈
2001年、徳島県出身。サーファーでありシェイパーの父親の影響を受け幼少期からサーフィンを始め、14歳でプロに転向。2017年、宮崎県日向で行われた世界ジュニア選手権のU16で金メダルを獲得。2023年JPSAランキングは19位。Instagram
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前編/後編
photography _ MACHIO
special thanks _ Billabong, Zack Balang, Burleigh Boardriders
>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください。

「SALT…Magazine #04」 ¥3300
サーフィン、暮らし、生き方、そして思考をより本質的なものへと回帰。シンプルで持続可能な在り方を追求することこそが、真の豊かさにつながる。
<Contents>
⚪︎Burleigh Single Fin Festival
⚪︎未知なる領域へ̶̶ サーフィンの新境地
⚪︎シングルフィンを愛する10人のインタビュー
⚪︎STILL AND TRUE
⚪︎笹子夏輝 ~カリフォルニア・スタイル巡礼の旅
⚪︎サーフィンによるマインドセットのススメ
⚪︎Stories Behind the Waves
⚪︎今を生きるサーファーたちのダイアログ
⚪︎世界の果て、南ポルトガル・サグレス
⚪︎Column _ Miyu Fukada
オンラインストアにて発売中!
TAG #BACK TO BASIC BACK TO SINGLE FIN#BILLABONG#Burleigh Single Fin Festival#SALT...#04#シングルフィン#中村拓久未#安室丈

フリーサーファー笹子夏輝は、現状に何ともいえない焦燥感を覚えていた。どうすれば解消できるのか、何をすれば次のステージに進めるのか、その答えを探しに南カリフォルニアに旅に出た。出会うサーファーたちのスタイルと生き方にヒントを求めて……。
従兄弟のグリフィン・コラピントから刺激を受けショートボードの世界へ身を投じるも、競争社会に幻滅しフリーサーファーへ。コーリー・コラピントのキャリアにもまた、共感できるものがある。彼はその先にシェイプの世界があることも教えてくれた。
いまはSNSのダイレクトメールを通して世界中の誰とでも文字どおりダイレクトに繋がれる時代。そして一度も会ったことがなくても友だちになった気になっている。実は夏輝もコーリーとはそんなオンラインのみでの関係だった。それがこの旅でやっとオフライン・ミーティングが叶うことに。彼のサーフィンを生で見て、そのボードを実際に体感してみたい。それができるのが旅の醍醐味である。
マリブ出身の父親とハワイ出身の母親との間にホノルルで生まれたコーリーは、家族全員がサーファーという恵まれた環境で育ち、5歳から父親とタンデムで波の上を滑っていた。その後ショートボードに夢中になりコンペティションにも出始めるが、高校生のころには燃え尽きてしまう。父親は、そんな彼をかつてよくタンデムしていたサンノーに誘い出し、ロングボードでのサーフィンのピュアな楽しさを改めて思い出させてくれた。
「父がなぜ小さい波であんなにもストークしていたのかが、ロングボードに乗るようになってやっとわかった」
彼にはクリエイティブな一面もある。CJネルソン・デザインズのライダーとしてボードのデザイン開発に関わっていたため、ボードを削るようになるのは時間の問題だった。いまは自分でシェイプしたボードで自由なマニューバーを描く。そのサーフィンはいわゆるロギングとは少し違うようだ。

長めのボードは10フィートほどありグライダーやスピードシェイプに近く、ドライブとグライドが気持ちいい

もう一本は8フィート台の長めのミッドレングスで、こちらもスワローテール。ノーズライドも可能で、コーリーは多種多様な技を見せ、ボードのポテンシャルの引き出し方を教えてくれた

海から上がってもまだ波が気になる

ボードとウェットスーツを持ってトレイルを歩いてビーチにアクセス。こういう体験がサーフィンライフを豊かにしてくれる
一緒にサーフィンする約束をし、早朝に待ち合わせた。場所はサンノーのさらに奥のトレイルズ。パーキングは有料でそこからビーチまでトレイルを10分ほど降りていかなければならないが、それだけに海は空いている。なるほど、コーリーのインスタで見る映像はこういうところで撮っていたのか。ふたりはボードとウェットスーツを抱え、周りに人工物がまったくない未舗装のトレイルを降りていく。これもカリフォルニアのサーフィンライフだ。しばらくビーチを歩いてポイントに着くと、ラインナップは無人だった。ふたりはパドルアウトし、ボードと波をシェアしながらリアルなオフ会を楽しんだ。
セッションの後、コーリーはサンクレメンテの住宅地のなかにある、秘密のシェイピングベイに連れていってくれた。それは知人宅のバックヤードの奥に広がる小さなランチ(牧場)に建つ小屋だった。入り口には「チキン・シャック・シェイピングルーム」と書かれている。ニワトリ小屋に併設されているようで、仲間たちと共同で使っているらしい。そこで夏輝は、コーリーの手ほどきで初めてシェイプを体験する。クリエイティブな若いシェイパーが次々に育つカリフォルニアの豊かな土壌が羨ましかった。

コラボ・シェイピングで作ったのもテールの割れたデザインだった。次回、このボードに乗る楽しみができた

「 君もシェイプしてみないか」。急遽コーリーの提案で夏輝もちょっとだけシェイピング。このカジュアルさがいい

シェイピングベイはニワトリ小屋の隣。ここをシェアしてる仲間たちも遊びに来た

Shaper
ショートボードのコンペを辞めログの世界観に目覚めると、ターン、トリム、ノーズライドに磨きをかけ、エレガントなスタイルを身につける。Kookapinto Shape レーベルではシングルフィン・ログとフィッシュの特性を融合したユニークなデザインを生み出している。
photography & text _ Takashi Tomita
>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください
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フリーサーファー笹子夏輝は、現状に何ともいえない焦燥感を覚えていた。どうすれば解消できるのか、何をすれば次のステージに進めるのか、その答えを探しに南カリフォルニアに旅に出た。出会うサーファーたちのスタイルと生き方にヒントを求めて……。
長い歴史のなかでボードデザインは進化し、インダストリーは芽生え、カルチャーが醸成されてきた。サーフィンの世界には商業主義やコンペとは異なる、もうひとつの側面がある。豊かなサーフカルチャーとヒストリー。それを夏輝は肌で感じた。
「ロングボードを始めるようになり、ビーチで年長者のサーファーからカルチャーやヒストリー、レジェンドシェイパーの話をよく聞くようになった。でも自分には全然そんな知識がなくて……」
ショートボードと向きあう時間が長かった夏輝にとって、カルチャーやヒストリーは少し遠い話で、レジェンドの名も、聞いたことはあっても何者かまでは詳しく知らない。ただロングボードのバックグラウンドにあるものに徐々に興味が湧いてきたのも事実。旅中は、そんなサーフィンの文化面にごく自然と触れることができた。サーフィンが一世紀以上の歴史を持つカリフォルニアとは、そういう場所なのだ。
サーフミュージアムはもちろん、土地の歴史を扱うミュージアムでもスケートボードやサーフィンを扱うディープなエキシビションが開催され、サーファーのみならず老若男女が観に訪れる。カルチャーとクラフトとアートが薫るサーフショップも見て回った。流行りのボードレーベルは知っていたが、老舗レーベルの歴史に裏打ちされた揺るぎない価値のようなものも感じた。サーフィンの歴史とその内包する文化は奥深い。今後はそうした世界を探訪する旅も楽しみになった。

サーフィンの歴史が学べる「サーフィン・ヘリテージ&カルチャー・センター」。一角にはコンペ史上で価値ある勝者のボードが一堂に介していた

ヴィスラのクリエイターズ&イノヴェーターズのひとりエヴァン・マークスが運営するNPO「エコロジーセンター」。オーガニックな農業とコミュニティを繋ぐ場所で、ランチのピッツァも美味かった

ニューポートビーチの「デイドリーム」。商品セレクトに鋭い審美眼を感じる

ヴェニスの「モラスク」。ここもオルタナティブ・サーフィンの発信源だ

ボードを借りたビング・サーフショップ。とにかくボードのバリエーションが豊富だった

サンタモニカにある「カリフォルニア・ヘリテージ・ミュージアム」ではドッグタウンの回顧展が催されていた。エネルギーに満ちていた’70年代のカリフォルニアにインスパイアされる
photography & text _ Takashi Tomita
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フリーサーファー笹子夏輝は、現状に何ともいえない焦燥感を覚えていた。どうすれば解消できるのか、何をすれば次のステージに進めるのか、その答えを探しに南カリフォルニアに旅に出た。出会うサーファーたちのスタイルと生き方にヒントを求めて……。
佇まいそのものがかっこいい。コーヒーをすする、タバコをふかす、そんなちょっとした仕草も絵になる。憧れの存在でありつつ親近感も抱いていたジェシー・グーグルマナ。アートにサーフボード。創り出すものすべてに類まれなセンスが宿る。
以前から夏輝は、気になるサーファーとしてジェシーの名をよく挙げていた。10代のころからクイックシルバーにスポンサーされショートボートのコンペティターだったこと、その後コンペを離れフリーサーファーに転身したこと、そして気づけばロギングでも輝きを放つようになったことなど、ジェシーの歩みに自分と重なるものを勝手に感じていた。
南カリフォルニアで生まれ育ち、子どものころはスケートボードにハマっていたジェシーは、家族とカウアイ島に引っ越したのをきっかけにサーフィンにのめり込む。ただコンペには馴染めなかった。その後クロージングブランド「ブリクストン」のライダーになると、その類まれなセンスがデザイナーのピーター・スタダードの目に留まり、ブリクストンのデザイナーに大抜擢される。着こなしがかっこよければ、デザイン未経験でも服を作るチャンスを得ることができる。そんなエピソードがキャプテンズヘルム トウキョウで働く夏輝には輝いて見えた。
「サーフボードにしてもクロージングにしても、ジェシーの作ったものなら手に入れたくなる。なぜならそこには彼の確固たる世界観が感じられるから。そういう存在に憧れる」
ジェシーがクリエイトしたものには味がある。ヴィンテージクロージングに刺繍やスクリーンプリントを施しアップサイクルした彼のブランド「チャンバー」のアイテムにもそんな彼のセンスが宿っている。それらは古着好きにはたまらない一点ものばかり。ニューポートビーチのジェシーの仕事場を訪れるや否や、夏輝はチャンバーのカーディガンを一着ゲットした。

ジェシーのスタジオは、いい意味でカオスな雰囲気で、アーティストがものを生み出す現場そのものだった。彼は夏輝にギフトとしてフィンを一本手渡した

メタル製の重すぎるスケートボードなど、スタジオは面白い創作物で溢れている

ペインティングのセクション。ダークなジェシーの世界観が全開だ

エントランスのギャラリースペース。このときはアートをディスプレイしていたが、スケートボードや自身のブランド「チャンバー」のクロージングのショールームになることも
祖母から受け継いだスクリーンプリント業がジェシーの生業。とはいえ本業のスペースより彼の創作空間のほうが広い。ペインティングのスペースにシェイピングベイ、エントランスには小ぶりなギャラリースペースも。スケートボードも作っているというから、これまたひとつの肩書で収まらない多才ぶりだ。
いまはキャプテンフィンのライダーを務めていて、ミッチ・アブシャーとも極めて近い存在だ。「全部かっこよすぎる。彼と何かコラボできたら最高だな」。夏輝の頭のなかではいろんな妄想が渦巻きだした。
ペインティングには4年の歳月をかけた作品もある。サーフボードも一部のショップの店置きを除きカスタムシェイプがメイン。クロージングも手間ひまをかけるので量産はできない。すべてが時間をかけて創り出されるレアもの。そのかけた時間から付加価値が生まれることを改めて学んだ。

「コーヒーでも飲もうか」。スタジオからすぐのショップ「デイドリーム」で一息入れ、打ち解けるふたり

シェイピングベイの削りかけのボードも気になる

サーフボードやフィン、ドローイングアートやインピレーションブックを見せてもらいながら、クリエイティブな話が弾む

Artist, Shaper
アンダーグラウンドな雰囲気が魅力のフリーサーファー。ハンティントン・ビーチで生まれサンクレメンテやカウアイのノースショアで育つ。シェイピングは父の影響で始める。10年ほど前からログにも乗るようになり、ここ数年そのオールラウンドなサーフィンが人を魅了する。
photography & text _ Takashi Tomita
>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください
TAG #A PILGRIMAGE to CALIFORNIA#Jesse Guglielmana#ジェシー・グーグルマナ#笹子夏輝

世界を魅了するウェイブハンター、松岡慧斗。母国・日本を舞台に、“Right time, Right place”を探し続ける。四季が織りなす日本列島を旅しながら、波と向き合い、感覚を研ぎ澄ます。すべては、1本の「最高の波」を掴みとるために。
シグネチャームービー『852 DOWN THE LINE ‒ JAPAN -』が、いよいよ劇場上映される。
収録されたフッテージはすべて日本。荘厳な波、雄大な雪山——。繊細でありながら力強い、日本の自然が生み出すコントラストが、松岡慧斗という唯一無二のサーファーの感性と響き合う。
自然の流れを読み、動き、スキルと直感を極限まで研ぎ澄ます。その一瞬に懸ける圧巻のライディングと映像美を、ぜひ映画館のスクリーンで体感してください。

【上映会詳細】
日時:10月30日(木)
会場:ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター1
住所:東京都渋谷区渋谷1-23-16 ココチビル 7・8F
開場: 18:30、上映:19:00
入場:2000円(税込)
※チケットは下記より購入可能
・オンライン販売
10 月21 日(火)19:00 から販売開始 ※上映時間20 分前まで販売
購入はこちらから
・劇場窓口販売
10 月22 日(水)劇場オープンから販売開始
TAG #852 DOWN THE LINE – JAPAN -#イベント#サーフフィルム#サーフムービー#松岡慧斗

オーストラリア・バイロンベイ在住の映像作家、ザック・バラン制作のサーフムービー『RIDING THE WIND』の上映会を、10月28日(火)原宿のカフェ「HATTO COFFEE」で開催。本作品はフリーサーファーのライフスタイルを3年間に渡って録りまとめたドキュメンタリー映像で、アンドリュー・キッドマン、エリス・エリクソン、アリ・ブラウンなどタレントサーファーが多数出演。バイロンベイのローカルサーファーが奏でるサウンドが、彼らのライフスタイルとライディング映像と完璧にシンクロします。店内は画家としても活躍するザックのアート作品で演出。入場は無料。 みなさまの来場を、心よりお待ちしております!


【RIDING THE WIND】
時間:57分(日本語字幕付き)
出演:エリス・エリクソン、ボー・フォスター、オージー・ロング、ジャリーサ・ビンセント、アンドリュー・キッドマン、アリ・ブラウン、クリード・マクタガード、ジャック・リンチ、ジェイク・ビンセント、その他レジェンドサーファーも多数
【Event Information】
日時:10月28日(火)
場所:HATTO COFFE
住所:東京都渋谷区神宮前2丁目18−19 SHOP2
電話:03-6910-5757
アクセス:JR山手線「原宿」駅 徒歩10分
東京メトロ千代田線・副都心線「明治神宮前」駅 徒歩8分
公式サイト / Instagram

<Time Scheule>
18:30:開場
19:00: フィルム上映(57分)
20:00 :フリータイム
20:30 :終了
※入場無料(1ドリンクはオーダー願います)
TAG #HATTO COFFEE#RIDING THE WIND#アート#イベント#サーフフィルム

フリーサーファー笹子夏輝は、現状に何ともいえない焦燥感を覚えていた。どうすれば解消できるのか、何をすれば次のステージに進めるのか、その答えを探しに南カリフォルニアに旅に出た。出会うサーファーたちのスタイルと生き方にヒントを求めて……。
この人に会ってみたい。夏輝がそう強く思っていたひとりが、ブライアン・ベントだった。強烈な個性とエネルギッシュな存在感。一度きりの人生なのだから自分のやりたいことを貫いて生きていく。一緒に過ごし、そんな彼の人生哲学を学んだ。
サーファーである以外に、アーティストでミュージシャン、デザイナーでビルダー、スケーター、ホットロッド・マニア、ポストモダン・サーフボード愛好家、インテリアデザイナーなどなど、ブライアンの肩書を挙げたらキリがない。つまりは多彩な才能と趣味の持ち主ということだ。才能だけでなく、彼が注目される理由はそのルックスにもある。DIY 感満点のセルフビルドのホットロッドカーに1920年代風のクークボックスやホットカールを載せて、サンノーやドヒニーのビーチに現れるその姿は、目立つなんてもんじゃない。そして陸でも海のなかもキャプテンズハットを被り、カットオフした短めのショーツとTシャツというお決まりの出立ち。一筋縄ではいかないボードを乗りこなすライディングスタイルも独特で、グライドとトリムを繰り返しながらサーフィンの真の喜びを体全体で表現する。一見すると変わり者。でもその一本筋の通ったスタイルに夏輝は惹かれていた。
カリフォルニアでも歴史のあるサン・ホアン・カピストラーノの街にブライアンは住んでいる。彼はまず、ガレージの車とサーフボードを見せてくれた。その世界観に夏輝は早くも圧倒される。基本的にシングルフィン・ログが多いが、ウッドを削り出した自作のホットカールや1920年代後半にトム・ブレイクが開発し普及した木製の中空ボード、クークボックスもいたるところに転がっている。
「ロングボードに乗り始めたのは1980年代のはじめごろ。まだ周りはみんなショートボードに乗っていた時代だね。いろんなことを言うヤツもいたけど、俺はやりたいことをしたかっただけ」。本格的にロングボードがリバイバルするずっと前から、彼はロングボードでリッピングしていたという。そうやって流行にとらわれることなく好きなことをとことん貫いてきた結果、いまのブライアンがある。

ハワイで生まれたホットカールも独自の解釈で自作し、その乗り味を楽しむ

ホットロッド、アート、サーフボード、スケート。ガレージにはブライアン・ワールドが広がっていた

ブライアン・ベントの代名詞、ホットロッドカー。いまどきの快適な車とは真逆の乗り心地だが、腹に響くエンジン音がたまらない
夏輝を家に招き入れると、アートも音楽もファッションアイテムもシェアしてくれた。レトロ感に満ちたアートは、特徴的なタッチや流れるような動き、豊かな色彩表現により一目で彼の作品だとわかる。モチーフはサーフィン、ホットロッド、カリフォルニアと、まったくブレがない。スピーカーやレコードプレイヤーへのこだわりはもちろん、’70年代の音楽を8トラックのテープとプレイヤーで聞くなど、音楽との触れ合いかたにも懐古主義的なマニアっぷりが見てとれる。それらの音楽は古いロックが好きな夏輝には刺さった。さらにギター、ピアノの生演奏と続く。インスピレーションは明らかに過去から得たものだが、クリエイティブのすべてがブライアンにしか表現できない唯一無二のものに昇華していた。
「やってること全部が本物で嘘がない。自分が心地いいと思うことをとことん突き詰めることこそが本当にかっこいいことなんだって教わった気がした」。ご自慢のホットロッドカーの助手席にも乗せてもらい、夏輝は完全にブライアン・ワールドにやられてしまった。

そのオリジナルのファッションも筋金入り。自身のブランド「ユナイテッド50」も手掛けるなど服にはうるさい

こよなく愛するジャズ、ロック、ゴスペルを咀嚼し、自らの音楽としてアウトプット。ピアノの弾き語りで歌い上げる楽曲はソウルフルだ

アーティストとしても知られ、その作品はレトロでミッドセンチュリーの匂いがする

ブライアンは自身のお気に入りの、’80年代のネオロカビリー・ブームの火付け役Stray Cats のT シャツを夏輝にプレゼント

Artist, Musician, Designer, Hot Rodder, Skateboarder
サーフィン、車、アート、音楽、ファッションなど、それらすべてで独自の美学を貫く、SoCal カルチャーを体現するサーファーであり、ホットロッドビルダーでもある。愛娘のエスターといっしょに“ ザ・ベント・デュオ・バンド” を結成し、ライブも精力的に行っている。
photography & text _ Takashi Tomita
>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください

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