

フリーサーファー笹子夏輝は、現状に何ともいえない焦燥感を覚えていた。どうすれば解消できるのか、何をすれば次のステージに進めるのか、その答えを探しに南カリフォルニアに旅に出た。出会うサーファーたちのスタイルと生き方にヒントを求めて……。
佇まいそのものがかっこいい。コーヒーをすする、タバコをふかす、そんなちょっとした仕草も絵になる。憧れの存在でありつつ親近感も抱いていたジェシー・グーグルマナ。アートにサーフボード。創り出すものすべてに類まれなセンスが宿る。
以前から夏輝は、気になるサーファーとしてジェシーの名をよく挙げていた。10代のころからクイックシルバーにスポンサーされショートボートのコンペティターだったこと、その後コンペを離れフリーサーファーに転身したこと、そして気づけばロギングでも輝きを放つようになったことなど、ジェシーの歩みに自分と重なるものを勝手に感じていた。
南カリフォルニアで生まれ育ち、子どものころはスケートボードにハマっていたジェシーは、家族とカウアイ島に引っ越したのをきっかけにサーフィンにのめり込む。ただコンペには馴染めなかった。その後クロージングブランド「ブリクストン」のライダーになると、その類まれなセンスがデザイナーのピーター・スタダードの目に留まり、ブリクストンのデザイナーに大抜擢される。着こなしがかっこよければ、デザイン未経験でも服を作るチャンスを得ることができる。そんなエピソードがキャプテンズヘルム トウキョウで働く夏輝には輝いて見えた。
「サーフボードにしてもクロージングにしても、ジェシーの作ったものなら手に入れたくなる。なぜならそこには彼の確固たる世界観が感じられるから。そういう存在に憧れる」
ジェシーがクリエイトしたものには味がある。ヴィンテージクロージングに刺繍やスクリーンプリントを施しアップサイクルした彼のブランド「チャンバー」のアイテムにもそんな彼のセンスが宿っている。それらは古着好きにはたまらない一点ものばかり。ニューポートビーチのジェシーの仕事場を訪れるや否や、夏輝はチャンバーのカーディガンを一着ゲットした。

ジェシーのスタジオは、いい意味でカオスな雰囲気で、アーティストがものを生み出す現場そのものだった。彼は夏輝にギフトとしてフィンを一本手渡した

メタル製の重すぎるスケートボードなど、スタジオは面白い創作物で溢れている

ペインティングのセクション。ダークなジェシーの世界観が全開だ

エントランスのギャラリースペース。このときはアートをディスプレイしていたが、スケートボードや自身のブランド「チャンバー」のクロージングのショールームになることも
祖母から受け継いだスクリーンプリント業がジェシーの生業。とはいえ本業のスペースより彼の創作空間のほうが広い。ペインティングのスペースにシェイピングベイ、エントランスには小ぶりなギャラリースペースも。スケートボードも作っているというから、これまたひとつの肩書で収まらない多才ぶりだ。
いまはキャプテンフィンのライダーを務めていて、ミッチ・アブシャーとも極めて近い存在だ。「全部かっこよすぎる。彼と何かコラボできたら最高だな」。夏輝の頭のなかではいろんな妄想が渦巻きだした。
ペインティングには4年の歳月をかけた作品もある。サーフボードも一部のショップの店置きを除きカスタムシェイプがメイン。クロージングも手間ひまをかけるので量産はできない。すべてが時間をかけて創り出されるレアもの。そのかけた時間から付加価値が生まれることを改めて学んだ。

「コーヒーでも飲もうか」。スタジオからすぐのショップ「デイドリーム」で一息入れ、打ち解けるふたり

シェイピングベイの削りかけのボードも気になる

サーフボードやフィン、ドローイングアートやインピレーションブックを見せてもらいながら、クリエイティブな話が弾む

Artist, Shaper
アンダーグラウンドな雰囲気が魅力のフリーサーファー。ハンティントン・ビーチで生まれサンクレメンテやカウアイのノースショアで育つ。シェイピングは父の影響で始める。10年ほど前からログにも乗るようになり、ここ数年そのオールラウンドなサーフィンが人を魅了する。
photography & text _ Takashi Tomita
>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください
TAG #A PILGRIMAGE to CALIFORNIA#Jesse Guglielmana#ジェシー・グーグルマナ#笹子夏輝


ビーチに落ちている無数のタバコの吸い殻。それを拾い集め、実際に乗ることのできるサーフボードへと変えてしまう。そんな大胆なアイデアから生まれたドキュメンタリー映画『The Cigarette Surfboard(シガレット・サーフボード)』。
SALT...Vol.04で特集したが(作品の背景や「Ciggy Board」が生まれたストーリーについては、こちらの記事をチェック)、9月15日から27日までオンラインプレミアが開催されることが決まった。日本からも、自宅で作品を観ることができる貴重な機会。オンラインプレミアムのWEBサイトはこちらから。

『The Cigarette Surfboard』は、監督ベン・ジャドキンスが、アーティストでありサーファーでもあるテイラー・レインのプロジェクトを追った作品。舞台はカリフォルニア。テイラーはビーチに落ちているタバコの吸い殻を拾い集めるが、その数なんと1万本。それらを素材として、実際にサーフィンができるサーフボードをつくり上げていく。
完成したサーフボード=Ciggy Boardは、海洋環境について考えるためのシンボルとなり、さらに大手タバコ産業が生み出すプラスチック廃棄物の問題を問いかける、草の根のアクションへとつながっていく。
小さなポイ捨ても、積み重なれば大きな問題になる。ならば、その小さな行動を逆方向へ積み重ねることで、何かを変えることもできるのではないか。『The Cigarette Surfboard』が面白いのは、環境問題をただ「正しく」伝えるのではなく、サーフィンとアート、そして人の情熱を通して、楽しみながらその問題を考えさせてくれるところにある。
作品に登場するのは、テイラー・レインをはじめ海を守るために活動するプロサーファーや海洋活動家たち。それぞれの視点から、海の環境やコミュニティ、そして自分たちにできるアクションについて語っている。「環境問題」という言葉だけを聞くと、少し難しく感じるかもしれないが、この作品が伝えるのは、もっとシンプルなこと。
まず問題に気づき、そして自分にできることを見つけ、プロセスそのものを楽しむこと。アートやサーフィンを入り口に、社会に変化を生み出していく。そんな前向きなアクティビズムのあり方を描いた作品だ。
『The Cigarette Surfboard』はこれまで、世界12カ国、アメリカ16州の映画祭で60回上映され、16の賞を受賞。さらにUCLA、UCサンディエゴ、ジョージア大学、クレムソン大学、ロードアイランド大学などの教育機関でも47回上映されている。各地で行われた草の根の自主上映会でも24回上映されるなど、サーフィンや環境問題という枠を越えて、多くの人に届けられてきた。因みに2024年のBend Film Festivalでは、長編部門の観客賞を受賞した。また、ミュージシャン、サーファー、アクティビストとして知られるジャック・ジョンソンも、この作品についてコメントを寄せている。
「シギー・ボード(The Ciggy Board)が体現しているのは、ある問題を見つけ、自分がその解決の一部になれる方法を見出し、そのプロセス自体を楽しむということだ」
— ジャック・ジョンソン(ミュージシャン/サーファー/活動家)




映画のインパクトは、スクリーンの中だけにとどまらない。『The Cigarette Surfboard』は、カリフォルニア州サンタクルーズで、使い捨てタバコフィルターの販売を禁止する条例の成立にもつながった。プロサーファー、地元の活動家、さまざまな団体とともに議員への働きかけを続けた結果、サンタクルーズ郡、サンタクルーズ市、カピトラ市がこの政策を導入。地域で生まれたひとつのアクションが、実際の社会の変化へとつながったのである。
サーファーとして海に入る。海岸でゴミを拾う。日々の生活のなかで、少しだけ選択を変える。そんな一人ひとりの行動も、積み重なれば大きな力になる。この映画は、そんな「最初の一歩」を後押ししてくれる作品でもある。
今回のオンラインプレミアは、International Coastal Cleanup Day(国際海岸クリーンアップデー)である9月19日を記念して、2026年9月15日〜27日に開催される。チケットを購入すると、映画本編をオンラインで鑑賞できるだけでなく、作品に登場するプロサーファーや海洋活動家をゲストに迎えたライブ配信Q&Aにも参加できる。サーフィンや海の環境について、本人たちに直接質問できる貴重な機会だ。
【LIVE Q&A SCHEDULE】
9月15日(火)8:00 PM PDT
Cliff Kapono|化学博士/プロサーファー(ハワイ)
9月16日(水)8:00 PM PDT
Hannah Bennett|海洋活動家/プロサーファー(フィジー)
9月17日(木)12:00 PM PDT
Fergal Smith|リジェネラティブ農家/プロサーファー(アイルランド)
9月18日(金)12:00 PM PDT
Easkey Britton|環境・社会学博士/プロサーファー(アイルランド)
9月19日(土)12:00 PM PDT
Chris Hines|Surfers Against Sewage共同創設者(イギリス)
※Q&Aの日時は現地時間表記です。参加の際は販売ページで最新情報をご確認ください。
オンラインプレミアのチケットは、単体チケットからグループチケットまで、さまざまな形で用意されている。
さらに、単体チケットに「Ciggy Board」オリジナルのハット、Tシャツ、ロングスリーブ、スウェットシャツを組み合わせたセットも用意されている。サーフコミュニティや家族、仲間で一緒に観るのもよさそうだ。
環境問題について考えるとき、どうしても「何か大きなことをしなければ」と考えてしまう。けれど、『The Cigarette Surfboard』が見せてくれるのは、その逆なのかもしれない。ビーチに落ちていた1本の吸い殻。それを拾い集め、何か新しいものをつくる。そして、それをきっかけに誰かと話す。そんな小さなアクションが人を動かし、コミュニティを動かし、やがて社会を変えていく。サーフィンを愛する人にとって、海は単なる「遊び場」ではない。毎日を豊かにしてくれる、大切な場所だ。だからこそ、その未来について考える時間を、この映画から始めてみてはそうだろうか。

配信期間:2026年9月15日〜27日
Ticket / Online Premiere
SALT...専用トラッキングリンクからチケットを購入できます。
https://watch.eventive.org/thecigarettesurfboard?utm_source=salt
※チケット購入に関する最新情報、配信詳細は販売ページをご確認ください。
TAG #Ciggy Board#The Cigarette Surfboard#サーフフィルム#テイラー・レイン#ベン・ジャドキンス

モーメンタム世代を代表する2人のサーファー、ロブ・チャドとテイラー・ノックスを起用した新作ショートフィルム『Na Lesu(ナ・レズ)』が公開。舞台は、彼らにとって特別な意味を持つフィジー・タバルアだ。
タイトルの“Na Lesu”は、フィジー語で“Return(帰還)”を意味する言葉。キャリア初期から幾度となく訪れてきたこの場所へ再び戻ることで、自然や人々、そして自分自身との関係を見つめ直す旅が描かれている。


本作では、世界屈指のライトハンドポイントとして知られるタバルアの波を舞台に、2人の対照的なスタイルが印象的に映し出される。流れるようなラインのロブ・マチャドと、力強く正確なパワーサーフィンを魅せるテイラー・ノックス。それぞれのアプローチが、サーフィンという表現の奥深さと美しさを際立たせている。
1990年代以降のサーフカルチャーに大きな影響を与えてきた2人にとって、タバルアは単なるサーフトリップの目的地ではない。数え切れないセッションと記憶が積み重なる、象徴的な場所である。


本作は、世代を超えて受け継がれるサーフカルチャーと、同じ場所へ戻ることの意味を静かに描き出す。変化し続ける時代のなかで、サーフィンを通じて見えてくる普遍的な価値に目を向けさせてくれる作品だ。
また本作は、Vuoriのブランドフィロソフィーである「The Rise. The Shine.」を体現する映像作品でもある。自然との調和、人とのつながり、そして前向きに生きることの豊かさを映し出し、観る者に新たなインスピレーションを与えてくれる。

about Vuori
カリフォルニア発のパフォーマンスアパレルブランド。フィットネスやヨガ、サーフィンなどアクティブなライフスタイルに寄り添い、機能性と快適性、洗練されたデザインを融合したウェアを展開する。2015年の創業以来、「Built to Move In. Styled for Life.」を掲げ、ワークアウトから日常までシームレスに対応するプロダクトを提案。サステナビリティにも注力し、人と自然、コミュニティの豊かな未来づくりを目指している。
TAG #Na Lesu#Vuori#サーフフィルム#タバルア#テイラー・ノックス#ロブ・マチャド

「波に乗ることは、生き方そのものだった」。
そんなメッセージを掲げるドキュメンタリー作品『MOON SUITS × LOGRAP』が公開された。登場するのは、ロングボード界のレジェンドJoel Tudorの息子、Tosh TudorとJudah Tudorをはじめ、Saxon Wilson、Greyson Messierの4人。彼らが日本を旅しながら、サーフィンというカルチャーを通して何を感じ、何を考え、どのように生きているのか。その内面にフォーカスした作品となっている。
舞台は東京、湘南、千葉。日本各地で波に乗り、人々と交流するなかで映し出されるのは、ハイパフォーマンスなライディングだけではない。家族との関係、仲間との時間、自分らしく生きること……。彼らが語る言葉からは、サーフィンが単なるスポーツではなく、人生そのものと深く結びついたカルチャーであることが伝わってくる。
特に注目したいのは、ToshとJudahの存在だ。世界タイトルを獲得した偉大な父を持ちながら、それぞれが自分自身のスタイルを模索する姿からは、世代を超えて受け継がれるサーフカルチャーの本質が見えてくる。
作品は2部構成で、今回公開されたのは第1部。13分の収録時間に詰め込まれているのは、サーフィンを通して見つめる「生き方」の物語。サーファーはもちろん、スケーターやカルチャー好きにも響く作品となっている。
波に乗ることの先にあるもの……。ぜひ映像で感じてほしい。



TAG #Greyson Messier#Judah Tudor#MOON SUITS × LOGRAP#Saxon Wilson#Tosh Tudor#サーフフィルム

サーフィンは、自然との深い対話を楽しむ文化だ。波の動き、太陽の光、その中で生きるサーファーたち。そこには、瞬間ごとに無限の可能性が広がっている。その可能性を映し出すのが、フィルマーの仕事だ。映像は単なる記録ではなく、彼らの“フィルター”を通して生まれる表現であり、心象風景を形にする、繊細なプロセスでもある。彼らの頭の中には、どんなビジョンが広がっているのか? それぞれの視点を通じて、サーフィンの魅力をどう表現しているのか? 6人のフィルマーの情熱と創造の世界に、少しだけ足を踏み入れてみた。
2024年末にローンチしたサーフフィルム『Alreadynaked』は、これまでの常識を打ち破り、未来の映像を示した。仲間とのリレーションシップで作り上げる作品とは。
未碧(みりゅう)がカメラを手にしたきっかけは、「サーフィン映像を撮りたい」と思ったからではなかった。実家にあったビデオカメラを偶然手にし、何気なく弟のサーフィンを撮り始めたことが、映像制作に興味を抱くきっかけとなった。弟・田中透生(とうい)は11歳の頃から試合に出場し、現在はJPSAやWQS を主戦場に活躍するプロサーファー。その姿を撮るうちに、次第に映像の持つ可能性に気づき、のめり込んでいった。
もともとモノ作りが好きで、家具やサーフボードを自作することを楽しんでいた未碧にとって、映像制作もまた“モノを作る”という感覚に近かった。特に撮影よりも編集作業に強く惹かれた。映像素材を選び、音楽を組み合わせることで自分の感性やメッセージを表現できることに、大きな魅力を感じている。「映像制作の面白さはその過程にある」と語り、作業を通じて感じた空気感や思いを作品に込めることの大切さに気づいたのだ。



映画や音楽、スケートビデオを愛する未碧は、特に’90 年代のカルチャーに惹かれている。その当時の映像や音楽、ファッションが醸し出す自由で反骨的なエネルギーに共鳴し、そこからカセットのビデオカメラや8mmフィルムにも興味を持つようになった。映像制作において最も大切にしているのは、“空気感”だ。映画監督ハーモニー・コリンの作品や、スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』といった、少し奇妙で奇抜な世界観に影響を受け、それを自身の作品に反映しようとしている。
「映画や音楽、スケートボードの映像を観るとき、『この作品は何を伝えたいのか』を常に考えています。特にスケートの映像は自由な表現が多く、学ぶことが多いです」
映像制作で目指しているのは、「視覚的に新しい体験を提供すること」。親友でカメラマンのレイ(オコレフィルム)と手掛けた『Boys On Analog』では、バリでの旅の模様を映像と写真集で表現。この作品を通じて、映像にストーリー性を持たせることの重要性を再確認したという。また撮影した映像は“アート”ではなく、あくまでも“ 記録”として捉えている。「おしゃれでカッコよく、アートっぽい映像を撮りたいというより、日々の記録を残している感覚で撮影している」と未碧。日常の何気ない一コマを切り取ることで、自然とアート的な要素が加わるのだ。また編集作業においても、その時々の感覚を大切にし、特定のテーマやスタイルに囚われず編集することで、結果的に「アートのような映像」が生まれることが多い。

制作には、弟や友人、カメラマンのオコレフィルム、サーファーでありAlreadynakedで3DCG アニメーションを手掛ける齋藤祐太朗といった仲間たちの協力関係が欠かせない。彼らとの意見交換やコミュニケーションが、新たなアイデアやインスピレーションの源となり、作品に反映される。この協力関係こそが、未碧の映像に独特の魅力を与えている。
「言葉にすると薄っぺらく聞こえるかもしれないですが、仲間とのコラボレーションで最も大切にしているのは「心」です。心で繋がっているからこそ、できあがった作品に愛着が湧き、良いモノが生まれると思っています」
未碧の映像制作にかける情熱と、自由かつ挑戦的なアプローチは、彼の作品に独自の魅力を与えている。都内で開催された最新作『AlreadyNaked』の上映会では、サーフィンをしない人たちからの反響も高く、自信を深めるきっかけとなった。最近では、茅ヶ崎の若手サーフィンチーム「C-boys」の活動に参加し、ビーチクリーンイベントを撮影、その様子を映像としてまとめた。この活動を通じて自然環境への意識が高まり、撮影中に無意識にゴミを拾うようになったという。こうした経験が、映像制作に新たな視点をもたらしている。将来的には、音楽やスケート、さらにはサーフィン以外のカルチャーとの融合を目指し、サーフィンに触れたことのない若い世代にもその魅力を伝えられる作品を作りたいと考えている。

「自分の作品を通して伝えたいのは、表現の自由さです。作品を発表する際、どうしても周囲の評価を意識してしまいますが、本来、表現は自由で楽しいものであるべきだと思っています」
自由であることを大切に、楽しいモノ作りを続ける、それが未碧の信念だ。映像は、彼にとって“ありのまま”を伝える手段。『Alreadynaked』のタイトルにもあるように、「映像を通じて、自分が思っていることをそのまま表現したい」と語る。因みに「ありのまま」という言葉は、見た目ではなく、内面のことを指している。
「言葉で伝えるのが苦手だからこそ、映像を通して自分の気持ちを表現できると感じています」
未碧はこれからも感性を磨き、映像を通じて新しい価値観や想いを発信し続けるだろう。彼の作品が今後どのように進化していくのか、ますます楽しみだ。

茅ヶ崎市出身。偶然手にしたビデオカメラでサーフィンの撮影を始め、映像制作の魅力に引き込まれる。『Boys On Analog』、『Alreadynaked』など独自の表現方法でアプローチを仕掛ける。@miryu_tanaka
text_Nachos
>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください
TAG #Alreadynaked#SALT...#04#STORIES behind THE WAVES#サーフフィルム#田中未碧

サーフィンは、自然との深い対話を楽しむ文化だ。波の動き、太陽の光、その中で生きるサーファーたち。そこには、瞬間ごとに無限の可能性が広がっている。その可能性を映し出すのが、フィルマーの仕事だ。映像は単なる記録ではなく、彼らの“フィルター”を通して生まれる表現であり、心象風景を形にする、繊細なプロセスでもある。彼らの頭の中には、どんなビジョンが広がっているのか? それぞれの視点を通じて、サーフィンの魅力をどう表現しているのか? 6人のフィルマーの情熱と創造の世界に、少しだけ足を踏み入れてみた。
サーフィン映像を撮り続けて20年。Riseはロングボードの魅力を伝え、日本のサーフシーンを活性化させてきた。そして2024年のマリブでの撮影を機に、また新たな挑戦が始まる。
サーフィンの撮影を始めて約20年。映像制作に対する情熱は、サーフィンとの深い結びつきの中で生まれ、長い年月をかけて形作られてきた。映像を通じてサーフィンの魅力を伝えることに全力を注いできたが、最初から映像制作を意識していたわけではなかった。しかし現在では、日本のロングボードシーンで広く知られる存在となっている。フィルマーとしての呼称「Rise」は “サンライズ”に由来し、「もう一度日の出を迎え、新たな光を照らしたい」という強い思いが込められている。
「僕がサーフィンを始めた頃は、ロングボード専門誌『ON THE BOARD』や『NALU』があり、フィルマーの池田潤さんも活躍されていました。しかし、廃刊や一線から退かれる中で、もう一度ロングボーダーが注目される場所を作りたい……と考えるようになったんです」
映像制作を始めたきっかけは、ハワイとカリフォルニアで過ごした留学時代に遡る。約5年間、弟や友人とサーフィンをする際に、交代でお互いのライディングを撮影していた。最初は作品として発表する意図はなく、あくまで記録のためだった。しかし、後に世界的なシェイパーとなるカイ・サラスのライディングを撮影し、彼が喜ぶ姿を見たことでフィルマーとしての道が拓かれた。
ハワイ滞在中に、現地のサーファーたちを集めて撮影し、それを一本のDVDにまとめたところ、大きな反響を得る。これが転機となり、日本でも同じような取り組みをしようと決意。約2年間にわたりプロサーファーや新進気鋭の若手ライダー、レジェンドたちを撮影し、一つの作品を完成させた。
「当時、自分が観るサーフムービーはショートボードのものが多かったのですが、テイラー・スティールや池田潤さんをはじめとする日本の先輩たちの映像を観て、『面白いことをやっているな』と刺激を受けました」



Rise の目標は、単に映像を作ることではなく、その映像を通じてロングボード文化を盛り上げることだった。最初は編集技術も未熟だったが、経験を積むうちにスキルが向上し、映像にはロングボードのライディングに合うエモーショナルなロックやアコースティックなサウンドを組み合わせるなど、独自のスタイルを確立していった。予算がないときは、サウンドクラウドでインディズのアーティストを探して直接交渉し、楽曲の使用許可を得るなど地道な努力を続けた。
映像制作には多くの費用がかかり、DVDの販売でも赤字になることがあった。それでもRiseは、良い作品を作ることを最優先し、全力を注ぎ続けた。その結果、ついに彼の作品を支援する人々も現れるようになった。また、家族や仲間の存在も彼の作品に大きな影響を与えている。プロサーファーである弟の畑雄二のコネクションを活かし、日本各地で撮影を実現。さらに、SDGs 活動を行う先輩との出会いをきっかけに環境問題への意識も高まり、ビーチクリーン活動にも積極的に参加するようになった。撮影時にもゴミを見つけるとすぐに拾うなど、環境保護の意識を持ち続けている。毎年SDGsイベントの映像を無償で撮影・編集し、環境問題への関心を広める活動にも力を入れている。

彼の名が広く知られるようになったのは、コロナ禍に開催したオンラインコンテストだった。サーフィンの大会が次々と中止となる中で、ライディング動画を募集し、オンラインでのコンテストを企画。これが予想以上の反響を呼び、日本のロングボードシーンの活性化に大きく貢献した。そして2024年、ロングボードの聖地マリブで開催されるコンテストに日本人チームが参加することが決まり、彼はフィルマーとして同行することに。カリフォルニア時代の先輩・横手誠一さんを通じてMSA(Malibu Surfing Association)から連絡を受け、「僕も同行してドキュメンタリーを撮りたい」と申し出たのがきっかけだった。
「実はその時期、映像制作を続けることに迷いを感じていました。でも、この話が持ち上がったことで、再びモチベーションが上がったんです」
この作品は今年の3月に茅ヶ崎で上映され、観客に大きな感動を与えた。マリブでの撮影を通じて新たな視点を得た彼は、「また別の場所にサーフィン仲間と旅をし、その姿を映像に残したい」という新たな意欲を抱くようになった。
近年、若い世代のクリエイターたちが新しい発信をしている姿を見て、大きな刺激を受けていると言う。特に若手のフィルマーやアーティストの積極的な活動に影響を受け、自身の気持ちも引き締まった。
「良いライディングを撮影し、それに音楽を合わせ編集し、一つの作品として完成したときは、サーフィンをしていなくても、自分がサーフィンをしているような感覚になる。その映像が誰かの心に届き、観る人を喜ばせることが何より楽しい」
この感動こそが、Riseが映像制作を続ける最大の原動力となっている。


大阪生まれ大阪育ち。父の影響で幼少期からサーフィンを始める。高校卒業後カリフォルニアに約1年住んだ後、ハワイ・マウイ島の大学に進学。その時に手にしたビデオカメラがきっかけで、撮影活動を始める。@rise_lb
text_Nachos
>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください
TAG #Rise#SALT...#04#STORIES behind THE WAVES#サーフフィルム#畑勝也

サーフィンは、自然との深い対話を楽しむ文化だ。波の動き、太陽の光、その中で生きるサーファーたち。そこには、瞬間ごとに無限の可能性が広がっている。その可能性を映し出すのが、フィルマーの仕事だ。映像は単なる記録ではなく、彼らの“フィルター”を通して生まれる表現であり、心象風景を形にする、繊細なプロセスでもある。彼らの頭の中には、どんなビジョンが広がっているのか? それぞれの視点を通じて、サーフィンの魅力をどう表現しているのか? 6人のフィルマーの情熱と創造の世界に、少しだけ足を踏み入れてみた。
サーフィンとストリートカルチャー、そして仲間との深い絆を描くHefty Beef。互いを認め合い、ともに歩む。その想いが結実した映像には、“ラブ&ピース”の精神が刻まれている。
近年、SNS やNobodySurf などのプラットフォームで頻繁に目にするフィルマーネーム"Hefty Beef"(ヘフティビーフ)。その本名は森脇海。彼がこのユニークな名前を使うようになったのは、ある日友人たちとオンラインゲーム「Among Us」をプレイしていた際に、ランダムに割り当てられた名前が“Hefty Beef”だったことに由来する。カナダ人の友人にその意味を尋ねると、「分厚くてジューシーなステーキのような肉って意味だ!」と説明され、その響きとユーモラスな意味が気に入り、以来フィルマーネームとして使用している。
彼が映像制作の世界に足を踏み入れたきっかけは、現在の奥さんとの出会いにある。当時、彼女が映像を撮影していたことがきっかけでカメラに興味を持ち始めると同時に、サーフィンにも傾倒していった。そして、牧之原でローカルサーファーの原田空雅と出会う。この出会いが彼の人生における大きな転機となった。原田の独創的でスタイリッシュなサーフィンを目の当たりにしたとき、「この映像を残さなければならない!」という強い使命感に駆られ、すぐにカメラを購入し撮影を開始した。周囲にフィルマーがほとんどいなかったことも後押しし、次第に映像制作の道へ深くのめり込んでいった。
Hefty Beefが目指しているのは、単なるサーフィン映像の制作ではなく、「自分がかっこいいと思うものを形にすること」。彼の映像にはサーフィンとストリートカルチャーが融合した独自の美学が反映されている。意外なことに、彼はサーフィン映像をあまり観ず、むしろスケートボードや他のカルチャーからインスピレーションを得ることが多い。特に影響を受けたのが、シュプリームのクリエイター、ウィリアム・ストロベック。その独特の視点や編集手法に魅了され、それらのエッセンスを自身の作品にも取り入れている。



撮影時に最も気を配っているポイントを尋ねると、「光の角度と海の色」と即答した。太陽の位置や光の入り方、海がどのような色を映し出すかを慎重に観察しながら撮影を進める。この技術は、スノーボードや山での撮影経験を通じて学んだという。「太陽の角度次第で、光の陰影や色の出方が劇的に変わるので、時間と場所の選定には特に気を遣っています。ただ、こだわりすぎて時間が足りなくなり、『あの時、こうしておけばよかった』と後悔することも多いですね」。この悩みはフィルマーだけでなく、クリエイターなら誰しもが抱えるものかもしれない。
編集作業で特にこだわっているのは「音楽」。映像の構図やアングルも重要だが、音楽が作品の印象を決定づけると語る。クラブやライブに足を運び、さまざまなジャンルの音楽を聴くことで、自身の作品に最適なサウンドを探し出す。「ヒップホップ、ジャズ、ダンスミュージックなど、特定のジャンルに縛られず、好きなものをミックスして形にしています。万人に伝わらなくてもいい、自分の中で『これだ!』と思うものを常に模索しています」。
映像制作を始めて3~4年ほどのキャリアだが、創作の過程で行き詰まることも少なくない。「最近も自分の映像がマンネリ化しているのではないかと悩んでいました。でも、友人と遊んだり環境を変えることで頭をリフレッシュすることができました」。彼にとって新たなアイデアは、日常の遊びやリラックスした瞬間から生まれることが多いという。「仲間と遊んでいるときに感じたことがヒントになったり、逆に1人でリラックスしているときに『これだ!』と思いつくことがよくあります。正解かどうかは分からないけど、流れに任せて進んでいきたいですね」。
SNS の評価や他人の意見には左右されず、「自分が納得できるか」を最も大切にしているHefty Beef。“バズるリール”を作ることには関心がなく、ただ純粋に「自分が本当に表現したいこと」を追求し続けている。その姿勢は、彼が目指す映像制作の本質「アートであり続けること」を体現している。

昨年、原田空雅をフィーチャーしたフィルム『MAD SKIING』の上映会が原宿のアートギャラリーで開催され、そのPR 映像が表参道の交差点にあるビルの巨大モニターに映し出された。東京の中心地で自分の作品が流れるという経験は、CGにも初挑戦した彼にとって、大きな学びとなった。
Hefty Beef の最終目標はまだ明確に決まっていない。しかし今考えているのは、「サーフィンの技術の上手い下手に関係なく、自分がかっこいいと思うサーファーをピックアップし、世界に発信し、認めてもらうこと」。そのためには、被写体であるサーファーの個性や魅力を最大限に引き出すことが自分の役割だと考えている。
「自分の映像とは何か、次に何を作るべきか――それを常に考え続けることが大切。新しいアイデアや表現を探し続ける姿勢は、これからも変わらないと思います」
彼が追い求めるのは、単なる映像作品ではなく、ミックスカルチャーの表現。サーフィン、ストリート、音楽、それらを融合させ、一つの作品として昇華させる。その探求はまだ始まったばかりだ。


静岡県出身。横乗りの世界に魅了され、サーフィン、スケート、スノーボードに傾倒。サーフィンとストリートカルチャーの融合を追求し、独自の視点で一瞬の美しさを切り取る。多数のメディアに取り上げられる注目のフィルマー。@hefty_beef
text_Nachos
>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください
TAG #Hefty Beef#SALT...#04#STORIES behind THE WAVES#サーフフィルム#森脇海

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