• 【連載:Ride of a Lifetime】カナダからカリフォルニアまで、ヴァンで旅するサーファーの旅の記録_Episode 2/自然との調和
  • 2025.09.17

極限の海が紡ぐ、魂と自然の深い共鳴

朝日が木々の間をすり抜け、ゆっくりとビーチをオレンジ色に染めていく。同時に海から霧が立ち上り、潮の香りとともに町全体を包み込んだ。カナダ西海岸の小さなサーフタウン、トフィーノ。ここで僕は「自然と調和して生きること」を教えてもらった。久しぶりに訪れた町の景色は、以前と変わらず生の自然と人々の生き生きとした生活に満ちていた。
バンクーバーから約5時間。フェリーで島に渡り、古代の森を抜け、山の谷間を縫う一本道の終点に、海と山に抱かれたトフィーノはある。この一帯はユネスコの生態圏保護区に指定され、多様な生命が息づいている。空にはイーグルが舞い、ビーチを熊が散歩することも。夜になれば、プラネタリウムのように輝く満天の星と、暗がりで無数に光る目がこちらを見つめている。多くはアライグマだが、クーガーという大型の山猫も生息しているため油断はできない。子どもを1人で歩かせてはいけないのは、不審者のせいではなく、クーガーから守るためだ。

街の桟橋から望む景色はいつ見ても飽きない。正面のミアーズ島にはネイティブカナディアンのビレッジが残る

パシフィックリム国立公園の中にあるフローレンシアベイ。大自然のサーフスポットの空にはイーグルが飛翔する

“カナダのサーフィンの聖地”と呼ばれるトフィーノは、夏でもウェットスーツとブーツは必須で、ドルフィンをすれば凍てつく水が頭を突き刺す。2時間も入れば顔の筋肉が引き攣るほどだ。そんな、修行ともいえるカナダのサーフシーンを世界的に有名にしたのがローカルレジェンドのピート。コールドウォーターサーフィンの第一人者で、ケリー・スレーターが「フル装備でピートほど自由に動ける人はいない」と評するほどの存在だ。ここトフィーノこそが、彼のホームタウンである。

ピートの芸術的なカットバック。テイクオフからノートリムでターンし、スピードを落とさずパワーゾーンに戻る

南北に伸びる海岸線にはいくつかポイントが点在するが、トフィーノといえばやはりコックスベイ。うねりに敏感で、他がフラットでもここなら波がある。ある日、ここでサーフィンをしていたとき、何発もターンを決めるサーファーが目に入った。ピートだった。テイクオフからフィニッシュまで全く無駄のない動きに、すぐに卓越した技術を感じた。すると彼が笑顔で声をかけてきた。
「やぁ! いい波乗れてるかい?」
驚きと同時に嬉しさが込み上げた。ローカルレジェンドが、見ず知らずの外国人に自ら話しかけてくれるなんて。オーストラリアから中南米まで、色々な場所でサーフィンしてきたが、こんな体験は初めてだった。ファンであることを伝えると、彼は「ようこそカナダへ」と握手をしてくれた。

コックスベイの知る人ぞ知る穴場の夕日スポット。海、森、夕日が同時に楽しめる絶景

トフィーノの人々は優しさに溢れている。カフェでもビーチでも、誰もが生き生きとしている。散歩する犬ですら笑っているように見えるほどだ。その理由は、この町と自然が持つ力にある。朝日とともに町が動き出し、水平線に沈む夕日とともに一日を終える。夏は22時まで明るく、仕事を終えたローカルは夕暮れのビーチに集まる。気づけば23時になっていることもある。自然の中で、時間の感覚を忘れてしまうのだ。自然と近いのではなく、自然の一部として生きている。サーフィンは自然が生み出すエネルギーと身体を融合させる最大の行為だと思っていたが、この土地は僕に「すでに自然の一部であること」を気づかせてくれた。

サーフタウンのお手本と言わんばかりに、小さいエリアにサーフショップいくつも集まる。夏は毎日サーフレッスンで大忙し

温帯雨林が広がるトフィーノでは、湿地帯の上をボードウォークで抜けビーチにアクセスすることがよくある


古川良太(サーファー/鮨職人)
20代の3年間、カナダ、オーストラリア、インドネシア、中南米の波を求めて旅を重ね、サーフィンに明け暮れる。帰国後は鮨職人として6年間修行し、日本文化と真摯に向き合う日々を送る。現在は妻と共にヴァンライフを送りながら、カナダからアメリカ西海岸をロードトリップ中。旅の様子はYouTube「アーシングジャーナル」で定期的に公開。
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