• 【シングルフィン特集】NEALPURCHASE JR._シングルフィンを進化させた“デュアル”
  • 2025.08.19

端正なルックスと大きな身体、クローズ気味のスタンスで波を刻んでいく。シングルフィンに現代的なアプローチを取り入れ、「DUO」を開発したニール・パーチェスJr. 。そのシェイプ理論に迫った。


スピード、操作性、推進力を兼ね備えたボードを目指して

レノックスエリアに住んでいるニール・パーチェスJr.。ホームポイントはボルダーとシャーぺス。ノースボルダーはこの辺りでは貴重なレフトの波がブレイクしており、通称“パーチェス・レフト”と呼ばれている。そう、ニールが毎日のようにサーフィンすることから、そう名付けられた。2005年からシェイプを始め、もうすぐ20年を迎える。1年間に400本近く削っているので、生涯本数はおおよそ9000本。実は’90年代にも20本ほどシェイプしたことがあったが、当時はサーフボード作りに興味を持てず、それ以降続かなかった。その理由についてニールは、「市場にスラスターしかなかったから」と振り返る。

撮影日は生憎波がよくなかったが、30分だけと言って入水。クラシックなスタイルと波のパワーを活かした、流れるようなサーフィンを披露

彼のシェイピングベイは、海からクルマで20分ほどの工場地帯にあり、すぐ隣にはバリナ・バイロン・ゲートウェイ空港がある。’80年代後半にできた建物には5人のシェイパーが部屋を借りており、かつてはエリス・エリクソンもここでシェイプしていた。日々多くのシェイパーが訪れ、日夜サーフボード談義が交わされる環境は、ニールにも少なからず影響を与えた。しかし、最も影響を受けたのは、父であるニール・パーチェス・シニアだと言う。
「子供の頃、父がシェイプをしている姿をよく見ていた。ある日突然、『お前も削ってみろ』と言われ、ブランクスを手渡された。最初は父がアウトラインを削り、仕上げの部分を私が担当していた」

「もしラスターしかなかったら、シェイパーにはなってなかったと思う」とニール。妻とふたり、家族経営でブランドを運営している

コンペティターだったニールは、’83年までフラットデッキのスラスターに乗り、15歳から20歳までコンテストに参戦していた。ナラビーンで開催されたプロジュニアでは3位入賞、’99 年ヌーサでのオーストラリアタイトルでは2位を獲得。ASPサーキットもフォローし、千葉で行われた丸井プロにも出場した。マーチン・ポッターと対戦したことも記憶に新しい。’88 年から’91 年までビラボンとスポンサー契約を結び、広告用の写真撮影だけでなく、自身が描いたグラフィックを提供したこともあった。その後、ホットツナ、リズムと契約し、8年前まではアート活動も行っていた。さらに時間があればバンド活動もするなど、クリエイティブな一面も持ち合わせている。そんなニールがオルタナティブボードに興味を持つきっかけになったのは、アンドリュー・キッドマンのフィルム『リトマス』だった。デレク・ハインドがスキップ・フライのフィッシュでJ BAYを滑走するシーンを観たとき、衝撃を受けたという。当時の映像はプロのサーフスターしか取り上げていなかったため、自由なサーフィンと独自のスタイルに深く感動したのだ。
2000年代初頭からツインフィン、2+1、クアッドなどが注目されるようになり、ニールも本格的にシェイプを開始。しかし、その当時のオーストラリアにはオルタナティブボードを削るシェイパーはほとんどいなかったため、リッチ・パヴェルやスキップ・フライといった、カリフォルニアのシェイパーから影響を受けた。ニールにとってシェイプは“流れ”が重要であり、まず最初に完成形をイメージし、一度削り始めたら途中で止めることなく最後まで仕上げる。その過程で苦戦することも多かったが、ある日突然、すんなりできるようになったという。現在、NEAL PURCHASE DESIGNSには10種類ほどのモデルあり、その中にシングルフィンもある。ピンテールが特徴的で、希望に応じてカスタムオーダーも受け付けている。2010年当時、ニールはシングルフィンに夢中になり、ほぼそれしか乗っていかった。フィルム『グラスラブ』では、グリーンマウントでバックサイド・チューブを披露したが、そのとき乗っていたのはリッチ・パヴェルのシングルフィンだった。そんな彼が生み出したシングルフィンの進化系が、DUO(デュオ)である。

スピードを維持しながら、ツインフィンのようなターンが可能なDUOZA。波のポケットでの加速とドライブ、ターン時のグリップ力はDUOを上回る

「シングルフィンのフィーリングを残しながら、パフォーマンス性能を高められないかずっと模索していた。そこで、2本のフィンをパラレルにセットすることでドラッグを抑え、縦へのアプローチも可能になると閃いたんだ」
このデュアルフィン(ツインではない)は、シングルフィン同様にレールやロッカー、テール幅の影響を受けやすく、試行錯誤を重ねた末に理想のカタチへと辿り着いた。その答えが、「2本のフィンの間隔を6インチ、テールからフィンまでの距離も6インチにする」という数式。この数値は、ボードの長さが変わっても不変だ。さらに、フィンをダブルフォイルすることでスピードを損なわず、スムーズな走りとパワーのあるターンを実現。乗り心地はシングルとツインの中間で、2+1に近い感覚だ。またフィン自体のベース幅、高さ、レイクのバランスも微調整を続け、最適なデザインが完成した。見た目こそレトロだが、そのパフォーマンス性能は圧倒的に高いDUO。それをさらに進化させたのが、2年前に開発した「DUOZA(デュオザ)」である。DUOZAはDUOにボンザーのコンセプトを組み合わせ、サイドバイトフィンを追加したモデル。これにより、ターン時のホールド感とドライブ性能がさらに向上している。
長年にわたってシングルフィンに乗り、多種多様な形状、テンプレート、サイズを試しながら、デュアルフィンという革新的なデザインを開発したニール。その挑戦は、これからも続いていく。


ニール・パーチェスJr.

父、シニアからシェイピングの英才教育を受け、2005年から本格的にシェイプをスタート。100%ハンドメイドで作られるボードはオルタナティブが中心で、DUO、APEX TWIN、DUOZAが代表的なモデル。サーファーとしても高い評価を受けている。


photography _ MACHIO

>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください

「SALT…Magazine #04」 ¥3300
サーフィン、暮らし、生き方、そして思考をより本質的なものへと回帰。シンプルで持続可能な在り方を追求することこそが、真の豊かさにつながる。

<Contents>
⚪︎Burleigh Single Fin Festival
⚪︎未知なる領域へ̶̶ サーフィンの新境地
⚪︎シングルフィンを愛する10人のインタビュー
⚪︎STILL AND TRUE
⚪︎笹子夏輝 ~カリフォルニア・スタイル巡礼の旅
⚪︎サーフィンによるマインドセットのススメ
⚪︎Stories Behind the Waves
⚪︎今を生きるサーファーたちのダイアログ
⚪︎世界の果て、南ポルトガル・サグレス
⚪︎Column _ Miyu Fukada

オンラインストアにて発売中!

TAG ####