#Rise

  • STORIES behind THE WAVES/映像の先に繋がるもの_05 Rise/畑勝也
  • 2026.02.09

サーフィンは、自然との深い対話を楽しむ文化だ。波の動き、太陽の光、その中で生きるサーファーたち。そこには、瞬間ごとに無限の可能性が広がっている。その可能性を映し出すのが、フィルマーの仕事だ。映像は単なる記録ではなく、彼らの“フィルター”を通して生まれる表現であり、心象風景を形にする、繊細なプロセスでもある。彼らの頭の中には、どんなビジョンが広がっているのか? それぞれの視点を通じて、サーフィンの魅力をどう表現しているのか? 6人のフィルマーの情熱と創造の世界に、少しだけ足を踏み入れてみた。




ロングボードカルチャーの復活を目指して

サーフィン映像を撮り続けて20年。Riseはロングボードの魅力を伝え、日本のサーフシーンを活性化させてきた。そして2024年のマリブでの撮影を機に、また新たな挑戦が始まる。



作品が誰かの心に届き、喜んでもらえることが何より楽しい

サーフィンの撮影を始めて約20年。映像制作に対する情熱は、サーフィンとの深い結びつきの中で生まれ、長い年月をかけて形作られてきた。映像を通じてサーフィンの魅力を伝えることに全力を注いできたが、最初から映像制作を意識していたわけではなかった。しかし現在では、日本のロングボードシーンで広く知られる存在となっている。フィルマーとしての呼称「Rise」は “サンライズ”に由来し、「もう一度日の出を迎え、新たな光を照らしたい」という強い思いが込められている。
「僕がサーフィンを始めた頃は、ロングボード専門誌『ON THE BOARD』や『NALU』があり、フィルマーの池田潤さんも活躍されていました。しかし、廃刊や一線から退かれる中で、もう一度ロングボーダーが注目される場所を作りたい……と考えるようになったんです」
映像制作を始めたきっかけは、ハワイとカリフォルニアで過ごした留学時代に遡る。約5年間、弟や友人とサーフィンをする際に、交代でお互いのライディングを撮影していた。最初は作品として発表する意図はなく、あくまで記録のためだった。しかし、後に世界的なシェイパーとなるカイ・サラスのライディングを撮影し、彼が喜ぶ姿を見たことでフィルマーとしての道が拓かれた。
ハワイ滞在中に、現地のサーファーたちを集めて撮影し、それを一本のDVDにまとめたところ、大きな反響を得る。これが転機となり、日本でも同じような取り組みをしようと決意。約2年間にわたりプロサーファーや新進気鋭の若手ライダー、レジェンドたちを撮影し、一つの作品を完成させた。
「当時、自分が観るサーフムービーはショートボードのものが多かったのですが、テイラー・スティールや池田潤さんをはじめとする日本の先輩たちの映像を観て、『面白いことをやっているな』と刺激を受けました」

Rise の目標は、単に映像を作ることではなく、その映像を通じてロングボード文化を盛り上げることだった。最初は編集技術も未熟だったが、経験を積むうちにスキルが向上し、映像にはロングボードのライディングに合うエモーショナルなロックやアコースティックなサウンドを組み合わせるなど、独自のスタイルを確立していった。予算がないときは、サウンドクラウドでインディズのアーティストを探して直接交渉し、楽曲の使用許可を得るなど地道な努力を続けた。
映像制作には多くの費用がかかり、DVDの販売でも赤字になることがあった。それでもRiseは、良い作品を作ることを最優先し、全力を注ぎ続けた。その結果、ついに彼の作品を支援する人々も現れるようになった。また、家族や仲間の存在も彼の作品に大きな影響を与えている。プロサーファーである弟の畑雄二のコネクションを活かし、日本各地で撮影を実現。さらに、SDGs 活動を行う先輩との出会いをきっかけに環境問題への意識も高まり、ビーチクリーン活動にも積極的に参加するようになった。撮影時にもゴミを見つけるとすぐに拾うなど、環境保護の意識を持ち続けている。毎年SDGsイベントの映像を無償で撮影・編集し、環境問題への関心を広める活動にも力を入れている。

彼の名が広く知られるようになったのは、コロナ禍に開催したオンラインコンテストだった。サーフィンの大会が次々と中止となる中で、ライディング動画を募集し、オンラインでのコンテストを企画。これが予想以上の反響を呼び、日本のロングボードシーンの活性化に大きく貢献した。そして2024年、ロングボードの聖地マリブで開催されるコンテストに日本人チームが参加することが決まり、彼はフィルマーとして同行することに。カリフォルニア時代の先輩・横手誠一さんを通じてMSA(Malibu Surfing Association)から連絡を受け、「僕も同行してドキュメンタリーを撮りたい」と申し出たのがきっかけだった。
「実はその時期、映像制作を続けることに迷いを感じていました。でも、この話が持ち上がったことで、再びモチベーションが上がったんです」
この作品は今年の3月に茅ヶ崎で上映され、観客に大きな感動を与えた。マリブでの撮影を通じて新たな視点を得た彼は、「また別の場所にサーフィン仲間と旅をし、その姿を映像に残したい」という新たな意欲を抱くようになった。
近年、若い世代のクリエイターたちが新しい発信をしている姿を見て、大きな刺激を受けていると言う。特に若手のフィルマーやアーティストの積極的な活動に影響を受け、自身の気持ちも引き締まった。
「良いライディングを撮影し、それに音楽を合わせ編集し、一つの作品として完成したときは、サーフィンをしていなくても、自分がサーフィンをしているような感覚になる。その映像が誰かの心に届き、観る人を喜ばせることが何より楽しい」
この感動こそが、Riseが映像制作を続ける最大の原動力となっている。



Rise /畑勝也

大阪生まれ大阪育ち。父の影響で幼少期からサーフィンを始める。高校卒業後カリフォルニアに約1年住んだ後、ハワイ・マウイ島の大学に進学。その時に手にしたビデオカメラがきっかけで、撮影活動を始める。@rise_lb

text_Nachos

>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください

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