#ミック・ロジャーズ

  • 笹子夏輝 ~カリフォルニア・スタイル巡礼の旅/A PILGRIMAGE to CALIFORNIA_6
  • 2025.11.13

フリーサーファー笹子夏輝は、現状に何ともいえない焦燥感を覚えていた。どうすれば解消できるのか、何をすれば次のステージに進めるのか、その答えを探しに南カリフォルニアに旅に出た。出会うサーファーたちのスタイルと生き方にヒントを求めて……。





MICK RODGERS/サーファーの理想のワークライフバランスを見た


謙虚な性格で、けしてサーフシーンのなかで目立つ存在ではないが、そのロングボードでのテクニックは夏輝を魅了し続けている。ミック・ロジャーズ。本業は消防士である。会って一緒にサーフィンしてみて、その人がらも大好きになった。


「チャドにもコーリーにも、次元の違うサーフィンを見せつけられたけど、ミックはさらに異次元だった」
サンディエゴのノースカウンティ。パイプスでのミックとのセッションで、夏輝はシングルフィン・ログのスタイルの奥義のようなものを思い知らされた。日本でもずっとミックのサーフィン映像に見惚れていて、実はもっとも一緒にサーフィンしたかったサーファーだった。ダクトテープ・インヴィテーショナルに縁がなくても、群を抜いて上手いローカルヒーローのようなサーファーはけっこういる。この層の厚さがサーフィンのメッカ、カリフォルニアだ。

ミックのシグネチャーモデル“ コンチネンタル” でセッション。3本とも同じモデルだが、実験のための細工が施されていて微かに異なる

青空のイメージが強いカリフォルニアだが、実はヘイジーな天気の日も多い。ときには海辺では沖の波が見えないほどの濃霧になることも

さまざまな妙技を見せつけてくれたミック。同時に生き方でも夏輝を感化した

日を重ねるごとにノーズライドが上手くなっていった夏輝


以前ビング・サーフボードのファクトリースタッフとして働いていたミックは、数年前に一念発起して夢だった消防士/救急救命士の資格試験を受け、見事に合格。いまは南サンディエゴのナショナルシティにある消防署に勤務している。消防士はアメリカでもっとも尊敬されている職業。まさに市民の味方、ローカルヒーローだ。いまでも彼はビングのライダーで、夏輝との待ち合わせもビングのファクトリーだった。サーフインダストリーが軒を連ね、エンシニータスでもっとも歴史ある“ザ・ヒル”と呼ばれるエリアにファクトリーはある。そこにはヴィンテージのヌイーバ・ノーズライダーなどのミュージアム級のお宝がたくさん。さすがにそれには乗れないので、ミックのシグネチャーモデルを借りることにした。最初はミックとふたりで、翌日はビングのヘッドシェイパーのマット・カルバニも加わり、連日セッションすることができた。ミックとマットはテストと称してパテやワックスでテールを盛ってキックをつけ、微妙な乗り味の違いを探っていた。
「即興でキックをつけたりしてボードデザイン開発のリアルな現場を目の当たりにした。あれがライダーとシェイパーの理想的な姿だと思う」
夏輝自身、恩師ともいえる茅ヶ崎のシェイパー大場衛さんとボード作りに取り組んでいる。ミックとマットがデザインと乗り味を語りあう姿に触発されていた。ミックのサーフィンに刺激されたのか、彼のモデルが乗りやすかったのか、明らかに夏輝は安定したノーズライドを見せるようになり、ログの扱いも様になってきた。ただ夏輝には、テクニックよりもミックの生き方のほうが強く印象に残った。
「あまり多くを語らないけど、ログに対する強い情熱を感じた。消防士としての生業にもプライドを持っている。仕事と家族とサーフィンのバランスが最高にかっこいい。彼と過ごした時間が今回のハイライトだったかもしれない」

ミックとビングのヘッドシェイパーのマットは、ワックスを切ってテールに貼り付け、テールキックを調整していた。こうしてつねに実験が行われている

ファクトリーの2階でミックがラックから出してきたのは、’60年代製のヌイーバ・ノーズライダー。歴史を感じさせる一本だ

以前ミックが働いていたビングのファクトリーを案内してもらう

Mick Rodgers


Firefighter

LA のサウスベイ育ち。’60年代を知る父親からサーフィンの本質を伝授され、シングルフィン・ログでのクラシックなスタイルを確立。素早いフットワークと超絶的なノーズライド・スキルにより、老舗ビングのトップライダーとして長年にわたりモデルの開発にも携わる。

photography & text _ Takashi Tomita

>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください

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