#ウリエル・ジーン・アーメル

  • 【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/23_ジェシカ・マルティーニ & ウリエル・ジーン・アーメル
  • 2025.09.11

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Jessica Multini ジェシカ・マルティーニ
Uriel Jean Armel ウリエル・ジーン・アーメル
バリ島ウルワツ在住。ウルワツにあるサーフショップショップ「KARMAFREE Surf Shop & Café」のオーナー。エシカルで地球に優しいプロダクトを販売しながら、自然に寄り添い、波ともに暮らしている。

あなたのことについて教えて

Jessica Multini
ブラジルのサンパウロ出身。ブラジルにいた頃は心理学を学びながら企業で働いていたけど、正直あまり幸せじゃなかった。常に不安や鬱のような感覚があり、自分自身や自然から切り離されているように感じていた。そんな時に出合ったのがヨガや瞑想。それをきっかけに少しずつ自分を取り戻し、約11年前にアジアを旅することを決意した。
そしてバリに来て、自然への祈りやお供え物の文化に触れたとき、日々を献身的に生きるその姿に心から惹かれた。その瞬間からバリに恋をし、気づけばもう11年近くここで暮らしている。

Uriel Jean Armel
生まれ育ちはフランスのビアリッツ。インドネシアに来たのはもう10年前のこと。当時は国際ビジネスを勉強していて、インターンシップのためにシンガポールに滞在していた。その頃からインドネシアへ頻繁に旅をするようになり、この土地の文化や波の良さにどんどん惹かれていった。
そこから少しずつ道がインドネシアへと繋がっていき、勤めていた会社を辞め、自分を新しく作り直すようにして映像や撮影の仕事を始めた。スマトラの離島にあるリゾートでフォトグラファー兼ビデオグラファーとして過ごした時期もある。そして昨年は、仲間と一緒に制作したドキュメンタリー映画を公開。そのタイミングで、自分たちのショップ「KARMAFREE」をバリ・ウルワツにオープンして、大きな節目を迎えた。

ショップ「KARMAFREE」を始めたきっかけ

Jessica:バリに移住したとき、私は不安や鬱を経験した後で「自分の本当の目的に沿ったことを創りたい」と強く思っていた。ヨガや瞑想はその過程で大きな助けとなり、「どうすれば自分の内側に秘められた想いを表現し、分かち合えるのか」という問いを探すようになった。
その答えのひとつが“創造”だった。インドネシアのサステナブルな要素を取り入れ、小さなブランド MEISOUを立ち上げ、ジャーナル用のノートやヨガ・瞑想用のクッション、ヨガウエアなど、自己の成長を支えるアイテムを販売し始めた。私は常に「バリの人々とどのように協力し、自然を傷つけない形でプロダクトを開発できるか」に関心を持ち続けてきた。それが今の活動の原点になっている。
その後Urielと出会い、海とのつながりを深く持ち、強い情熱を抱く彼の影響で私もサーフィンを始めた。波に乗ることを学ぶ中で、自然とふたりで「情熱を組み合わせて何かを創ろう」という流れになっていった。

Uriel:KARMAFREEをオープンしたのはパンデミックの頃。私たちはバリ北部のバリアンに住んでいて、ある朝、長いビーチウォークに出かけた。雨季のビーチは大量のゴミで覆われていて、とても拾いきれない。だから「歯ブラシと歯磨き粉だけに絞ろう」と決めて拾い始めた。家に戻ると、ジェシカが「それを全部どうするの?」と聞いてきた。私は「カルマを浄化しているんだよ」と答えたことを覚えている。人は生まれてからいったい何本の歯ブラシと歯磨き粉を使ってきたのだろう。そのいくつかは違法な埋め立てやビーチに流れ着き、また自分たちの目の前に戻ってくる。これはまさに“カルマ”だと思った。そこから「カルマのないプロダクト、つまり“Karmafree”なものを作るべきだ」というアイデアが生まれた。私は本気で、ガラス瓶に入った化学物質を使わない歯磨き粉を作りたいと思った。レシピを調べて実際に作ってみたが、味があまりにもひどく「これは無理だ」と諦めた。つまり名前は決まったものの、肝心の中身はまだ何もなかった。残ったのは「KARMAFREE」という名前だけだった。
ちょうどその頃、自分のセルフドキュメンタリー制作にも取り組んでおり、資金を集めるためのトレーラーを完成させ、ウルワツやチャングー、ウブドなどバリ各地で上映会を開いた。上映会用に着るシャツが欲しくて、お気に入りのデザインをもとにジェシカに作ってもらった。それが天然染料とオーガニック生地を使った、藍の植物で染められたインディゴブルーのシャツだった。
上映会では多くの人から「そのシャツ素敵!」「どこで買えるの?」と声をかけられ、そこから少しずつシャツ作りを始めた。やがて多くの人に求められるようになり、嬉しい成功体験となった。その流れの中で「自分たちのクリエーションを発表する場を持ちたい」「人々がつながれる場所をつくりたい」と思うようになった。ただモノを作るのではなく、もっとエシカルで責任ある形で、地球を汚さず資源を浪費しないやり方で創造を続けること。それが“KARMAFREE”の根底にある想いだ。
そしてショップを訪れる人々との会話を通じて、その可能性を共有していきたいと考えている。「プラスチックのパッケージを紙やガラスに変えてみた」――そんな小さな工夫でも、コミュニティで分かち合うことでお互いにインスピレーションを与え合い、持続可能な未来への移行を後押しできると信じている。

サーフィンを始めたきっかけ

Uriel:生まれ育ったフランスではほとんどサーフィンをしておらず、本格的に始めたのは20歳のとき、メキシコへの交換留学がきっかけだった。メキシコでサーフィンに出合い夢中になった。当時一緒にいた友人がすごく上手なサーファーで、その冒険についていくようにしてサーフィンを続けた。
でも正直、私にとっては半分“自殺行為”のようなものだった(笑)。何度も危険な状況に飛び込んでしまったけど、その経験が逆に「自分はこれからどこへ向かうべきか」という羅針盤のようになった。
大学では国際ビジネスを専攻していたものの、授業はあまり楽しめず、就職先も都市部が中心だった。リタイアして身体がボロボロになってからサーフィンを始めるなんて考えられなかったら、学生ローンを返し終えたタイミングで「これからは本当にやりたいことに集中しよう」と決めて、インドネシアに移住した。それ以来、波と共に生きている。次に行きたい場所はフレンチポリネシア。

海、自然との関係を言葉で表すなら?

Jessica:サーフィンをしているときはもちろん、ビーチを歩いているときやハイキングをしているときもそう。自然の中にいるときは、“今”という時間に集中できる。日常の喧騒に邪魔されることなく、その場所や、そこにいる人との会話を楽しめる私にとって大切な時間。

あなたの生活に欠かせない3つのものは?

Jessica:良質な睡眠、自然の中で過ごす時間、瞑想
Uriel:旅をすること、サーフィン、家族と友達


今後の夢や目標は?

Uriel:洋服や食べ物といったクリエーションを通して表現を続けながら、その枠を少しずつ広げていきたい。そして同時に「これをもっと記録に残したい」という想いも強くなってきた。そのひとつの形として、ポッドキャストの制作も考えている。これまで私たちにインスピレーションを与えてくれた人たちにインタビューを行い、その声をシェアすることで、さらに多くの人が互いに刺激し合える場をつくりたい。
正直、世界で起きている破壊や環境問題を目の当たりにすると、希望を失いそうになることもある。だからこそ私たちは、お互いに光を分かち合い、励まし合うことが必要だと思う。ポッドキャストはその一つの方法であり、今後はショップでのコミュニティイベントも増やしていきたいと考えている。

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

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