#GRLSWIRL

  • 【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/26_ナオミ・フォルタ
  • 2026.01.09

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Naomi Folta ナオミ・フォルタ
アメリカ東海岸出身。沖縄とボストンにルーツを持ち、サーフィンとスケートを軸に世界を旅する、「GRLSWIRL」のライダー兼クリエイター。多文化環境で育った経験を強みに、海とコミュニティを通じて女性が自分らしく挑戦できるスペースを広げる活動を続けている。

あなたのことについて教えて

アメリカ東海岸・北バージニア州の出身で、母は沖縄、父はボストン出身。小さい頃から沖縄空手をはじめて、チアリーディングや体操、陸上など、両親が勧めてくれたスポーツをとにかくいろいろ経験してきた。毎年夏になると沖縄に行って、母が通っていた地元の小学校・中学校・高校に1ヶ月ほど通いながら、父の空手道場のコミュニティの中で過ごしていた。いつも沖縄の文化がすぐそばにあって、すごくアクティブな環境で育ったと思う。
スケートボードとサーフィンを始めたのは20代に入ってから。大学では機械工学を専攻して、卒業後は1年間エンジニアとして働いていた。でも、「やっぱりスケートもサーフィンも、好きなときにできる生活がしたい!」と思うようになって、仕事を変えた。それが、私の人生を大きく変えるきっかけになった。
今はGRLSWIRLという女性だけのスケートチームのライダー(8〜9人いるメンバーのうちのひとり)として活動しながら、グラフィックデザイナー、イラストレーター、モデル、そしてSNS関連のフリーランスも手掛けている。子どもの頃からいろいろなことに挑戦してきたから、複数のことを同時にやるのはわりと慣れている。

サーフィンを始めたきっかけ

一人旅やバックパッキングが大好きで、大学卒業後に東南アジアを約1年かけて旅した。旅の途中でフィリピンに辿り着いて、サーフィンもダイビングもハイキングもできるし、何をしようか考えていたとき、ホステルで出会った人に「これからサーフタウンに行くけど、一緒に行かない?」って声をかけてもらった。そして向かったのが、サンフアン・ラウニオン(San Juan La Union)。そこで初めてサーフレッスンを受けて、多くの人がそうなるように、あっという間にハマってしまった。「ちゃんと乗れるようになるまで、この町を離れない」って決めて、気づいたら2ヶ月くらい滞在していた。そこが、私が本当にサーフィンを覚えた場所。
今はロングもショートもどちらも好きで、憧れのサーファーは、ジョージー・プレンダーガスト。滞在していたサーフタウンには女性ロングボーダーがすごく多くて、彼女たちの華麗でスタイリッシュなライディングを見るたびに、もっと上手くなって「クロスステップして、ノーズまで行きたい」って思うようになった。
お気に入りのスポットは、太平洋側のメキシコ。よく行くエリアで、大好きな波がたくさんある。次に行きたい場所は、フィリピンのシャルガオとモロッコ。

日本とアメリカの両方で育った経験、それが今の自分にどんな影響を与えている

沖縄は西洋文化の影響も強く受けていて、そこが少し特別な感じ。一番違いを感じたのは“責任感”の部分だった。日本の学校では、自分たちで教室を掃除したり、給食を取りに行って配膳したり、「自分たちでやる」ことが当たり前。それがすごく新鮮だった。アメリカの学校では、そういう経験がなかったから。
アメリカの学校は、また違う意味で自由というか……。女の子でもサッカーをしたり、大きな声で笑ったり、ちょっとアグレッシブでも全然OK。でも日本の学校に行ったとき、男の子たちとサッカーをしたくても、一緒にやりたい女の子が全然いなくて、「え? みんなどこ?」って思ったのを覚えている(笑)。そういう文化や空気感の違いを見るのが、すごく面白かった。
沖縄では、“アメリカの私”と“日本の文化を大切にする私”を、自然と使い分けていた。当時はまだSNSが普及していなかった2000年代で、私や兄、他のハーフの友達は、周りの子たちから「誰?」「何してるの?」「アメリカってどんな感じ?」と、すごく興味を持たれる存在だった。
そうした経験から、自然と適応力が身についたと思う。どんな場所でも自分を調整して馴染めるし、文化や背景の違う人の気持ちも理解できるようになった。毎年同じ友達に会っていても、学校に通うのは1ヶ月だけだから、いつも“新しい転校生”みたいな感覚。それが、人の気持ちに寄り添う力や共感力につながったと思う。責任感も強くなったし、自分でいろいろできるようになったことで自信もついた。その感覚は旅をするときにもすごく役立っていて、どこに行っても自分で立て直せるし、環境にもすぐ順応できる。女性としても、「女の子だって、自分の世界を広げていい」「挑戦していい」という感覚が、自然と身についた気がする。

GRLSWIRLでの活動

GRLSWIRLのチームライダーとして声をかけてもらったのは、2年近く前。カリフォルニアに引っ越したのが2022年8月で、そのときは仕事もなくて、手元のお金も1,000ドルくらい。叔父さんの家にお世話になっていた。それでも、「サーフィンとスケートを思いきりやって、たくさんの女性たちとスポーツを楽しむ生活がしたい」という気持ちが強かった。GRLSWIRLの本拠地がヴェニスだと知ったとき、「これだ」って思った。初めて参加したスケートのミートアップは、本当に魔法みたいな時間だった。50人以上のガールズたちが集まって、ヴェニスのスケートパークから桟橋まで、みんなでスケートしていく。その光景は、まさに思い描いていたカリフォルニアのシーンだった。周りは素敵な女性ばかりで、スケートして、サンセットを見て、笑って。ただ一緒に滑っているだけなのに、心の底から満たされる時間だった。その瞬間から、「この感覚をずっと感じていたい」「この人たちと一緒にいたい」と思って、すべてのイベントに参加して、ボランティアも続けた。そうして活動しているうちに、いつも積極的に参加してスケートしている姿を見てくれていたメンバーから、チームに入らないかと声をかけてもらったの。今はチームの一員として、同じような境遇のガールズたちを支えながら、コミュニティを広げている。


海、自然との関係を言葉で表すなら?

子どもの頃から沖縄でたくさんの時間を過ごしてきたから、海は私にとってすごく身近で、安心できる場所。家族や友達がいつも海に連れて行ってくれて、シュノーケリングをしたり、ボートに乗ったり、泳いだりしていた。だから自然とのつながりは、ずっと強く感じている。自然は、自分に戻れる場所であり、好奇心を思い出させてくれる場所。海にいると「帰ってきた」っていう安心感があって、サーフィンをしているときは、力強さとしなやかさ、その両方を自分の中に感じられる。

これからの目標

ロサンゼルスのNPO「Los Courage Camps」でボランティアとして活動し、さまざまなバックグラウンドを持つ子どもたちに、無料でサーフィンレッスンをしている。サーフィンって、実はハードルの高いスポーツ。サーフボードやウェットスーツが必要だったり、海に行くにはクルマが必要だったり、LAだと駐車場代もかかったりして、それだけで大きな負担になる。私たちは、そうしたハードルをすべて取り払って、ボードもウェットもレッスンもすべて無料で提供している。人生で初めて海に入る子や、その年に初めて海を見る子もいる。私の夢は、サーフィンを通して、彼らが一緒にサーフトリップに行ける友達に出会ったり、何でもシェアできるサーフコミュニティを見つけてくれること。
もうひとつの大きな夢は、沖縄でローンチしたGRLSWIRLをサポートすること。立ち上がったばかりだけど、その広がりを手伝いながら、レベルや見た目に関係なく、誰でもスケートを楽しめるコミュニティを育てていきたい。

あなたの生活に欠かせない3つのもの

コラージュジャーナル、サーフボードとスケートボード、それからピクルス。

これから何か新しいことに挑戦したい人へのアドバイス

大切なのは、「こうなってほしい」という期待を手放すこと。新しいことを学ぶときや、新しい場所に行くとき、何かを始めるときは、その結果よりもプロセスにちゃんと向き合って、今この瞬間を感じることが大切だと思う。期待で自分を縛ってしまうと、その時点で可能性は狭まってしまう。だからこそ、目の前で起きるいろいろな経験をそのまま受け止めて、プロセスを楽しむこと。それが一番大事だと思っている。

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

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  • ガールズスケーターによるヒップなスケートフェス「SWIRL SURFSKATE FEST」に潜入
  • 2024.09.02

カリフォルニアを代表するビーチタウンのひとつ、ベニス。街を歩けば前衛的なウォールアートやサイケデリックなグラフィティが溢れ、海岸線をクルージングで楽しむガールスケーターたちの姿が……。サーフスケート・カルチャー誕生の地としても知られ、世界各地から様々な人が集まるお洒落スポットだ。

ここで毎年行われているヒップなスケート&サーフイベント「SWIRL SURFSKATE FEST(スウィル・サーフスケート・フェスト)」。今年も大盛況のうちに幕を閉じたこのイベントを主催するのは「GRLSWIRL(ガールスウィル)」。ベニスを拠点としたガールズスケート集団だ。

公道を封鎖してスケートのコンペが開催。さらに一般向けのパンプトラックも登場した

GRLSWIRL(ガールスウィル)って?

8人のガールズスケーターがベニスで立ち上げたスケートグループ。メンバーを取りまとめるルーシーをリーダーに、モデル、フォトグラファー、グラフィックデザイナーなど、個性豊かなメンバーがグループを運営している。彼女たちが身にまとうのは、ベルボトムやハイウエストのデニムにクロップドトップなど、ノスタルジックでレトロなスタイル。ときにはスカートを穿いてランプに入る姿も……。これまでのスケートファッションのイメージを覆す彼女たちのスタイルは、ファッション・ピープルからも注目を集めている。

ガールスウィルを立ち上げた、出身も育った環境も性格も違うユニークな8人

彼女たちはガールズスケーターのコミュニティを作り、イベントの開催やチャリティイベントなど様々な活動を行っている。なかでも代表的なイベントは、2週間に一度行われるグループスケート。回を重ねるごとに規模は大きくなり、100人以上のガールズスケーターが集まることもあるのだとか。

さらに海の近くで暮らすメンバーは自然環境への意識が高く、ビーチクリーンや社会貢献の奉仕活動も実施。来場者から募金を募り、女性の自立を支援するNPO団体や、地元の学校に寄付するファンドイベントなども開催している。

イベントで行われたモーニング・サーフィンでのメンバーのショット

3回目となるSWIRL SURFSKATE FESTに潜入

そんなガールスウィルが地元ベニスで行う、年に一度のイベントが「SWIRL SURFSKATE(スウィル・スケート・フェスト)」。アイコニックな“VENICE”のサインの真下で、ヒップな人々が集まり、スケートやサーフィン、ライブミュージックに興じるイベント。今回は主催者のルーシーに話を聞くことができた。

コンペが行われている傍らにはアイテムの販売ブースもあり、お祭り感覚で楽しめる

「“サーフスケートが生まれた場所で、その伝統を祝う”をコンセプトに、イベントを開催しました。公道を封鎖して、スケートパークのポップアップや大規模な(スケートの)コンペ、ラストはDJパーティ! 毎回参加人数が増えているけれど、今回は1000人以上が参加してくれました」

この人数での一斉パドルアウトは、圧巻のひと言!

朝はベニスビーチでモーニング・サーフィンからスタート。ビーチではDJのセッションや、地元のカフェによるスムージーの出店などが行われた。午後から開催されたスケートコンペでは、地元のスケートブランド『Carver Skateboards(カーバー・スケートボード)』が制作したカスタムコースを滑走。

 ガールスウィルのメンバーが愛用するシューズブランド『カリウマ』。「スタイリッシュだけど何にでも合うこと、ブランドとして環境保護に貢献しているところが好き」とルーシー

さらに審査員には、プロスケートボーダーのクリスチャン・ホソイやペギー・オキ、'70年代のガールズスケーターのアイコン的存在のローラ・ソーンヒルなど、スケート界のレジェンドたちを迎えた。

「今回のコンセプトにあるように、サーフスケートという文化を築いてきたスターやクリエイターたちがまだ活躍しているこの時代の中で、彼らが作り上げた文化を守っていきたいと思ったんです」とルーシー。

審査員にはペギー・オキ、ローラ・ソーンヒル、ブリアナ・キング、クリスチャン・ホソイ、グレッグ・フォークが参加した

コンペに参加しない人でも終日利用できるスケートランプも設営され、たくさんの人がスケートを楽しんだ。夜になるとローカルバンドやDJによるライブミュージックが開催。多くの人が集まり大盛り上がりを見せた。

イベントの締めに行われたDJイベント。朝からの疲れも見せず参加者はダンスに興じた

過去には日本で開催されたことも

実は2024年6月、沖縄でガールスウィルによるグループスケートが開催されていた。「私たちのチームに沖縄出身の女の子がいたので、初めて日本での開催を決めました。40人以上の女の子が参加してくれたのですが、皆こういうコミュニティを熱望していることが分かった」と話すルーシー。今後日本でも活動を行っていきたいとのことなので、続報に期待したい。

「いつか、女性が一斉にスケートする人数の世界記録を作りたい」というガールスウィルのメンバー

GRLSWIRLが目指すもの

“スケートを通じて姉妹のように団結し、女性を支援し、勇気づけ、インスパイアするコミュニティを作る”ことを目的に作られたガールスウィル。

「地元の文化を祝うため、皆が一団となってこうして集まった……。とてもパワフルなこのコミュニティを多くの人に伝えたいです」とルーシー。 

彼女たちのイベントやチャリティが、ガールズスケーター同士の出会いの場として機能し、環境保全やサーフスケートの文化を守ることへと繋がっているのだ。成長し続けているガールスウィルの活動から、今後も目が離せない。

coordinate_Kazue Mizushima text_Miri Nobemoto

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