#オージー・ライト/ロング

  • 【シングルフィン特集】OZZY WRIGHT ⁄ WRONG_無限に湧き上がるクリエイティビティ
  • 2025.09.02

「絵を始めたきっかけなんてないよ。子供の頃はみんな描くだろ? 俺はそれを続けてきただけだよ。ずっとね」。独自の道を歩み続けるオージーの、現在のライフスタイルとは?



「シングルフィンで“ピット”にハマったときは最高だね」

「16歳のとき、ジュニアコンテストでアメリカの『SURFERS MAGAZINE』のインタビューを受けたんだ。そのとき、『チャンピオンになりたくない』って言ったら、それが記事の見出しになっちゃって(笑)」
オージーはその言葉通り、早い段階でコンテストを離れ、フリーサーファーやアーティストとしての道を歩み始めた。その後、WSLに出場しているオーウェン・ライトと名前をよく間違われるようになり、アーティスト名を「ライト(正しい)」ではなく、「ロング(間違い)」に改名する。

遊び心を常に忘れない。彼の佇まいはアンダーグランドの枠から突き出た、ポップアーティストのようだ

オージーと初めて会ったのは、5年前のパーティだった。そこにはサーファーたちも多く集まっていたが、中でも一際目を引く男がいた。背が高く、真っ黒に日焼けした肌、毛むくじゃらのたくましい腕、潮風に傷んだ金髪。穴の空いたTシャツには、カラフルなペンキが付着していた。その風貌から放たれるオーラはまさにサーファーそのもので、ポジティブなエネルギーに満ち溢れていた。
フリーサーファー、画家、ロックミュージシャン、ボルコムの看板ライダーとして、その圧倒的な個性とキャラクターは他のプロサーファーたちとは一線を画し、常に業界の最前線で活躍してきたオージー。シドニー郊外のノーザンビーチで生まれ育ち、幼少期から毎日波と戯れながらサーフィン漬けの日々を送った。高校時代には、最高で1日14時間サーフィンをしていたこともあるという。彼のアドレナリン全開のラフでパンキッシュなスタイルは、まさにその環境が育んだものだった。

1日1本のペースで、4本のボードにアートを施した。日本から輸入した中古のエルグランドに詰み込み、サーフショップへ納品

2001年、20代前半のオージーはヨーロッパやインドネシアを旅し、映画『156 Tricks』を制作。タイトル通り、156回のエアリアルやチューブライディング、スラッシュなどのトリックを、ビデオカメラとスーパー8で収録した。その斬新かつエッジの効いた映像は、カウンターカルチャーやオルタナティブ文化に傾倒する若者の間で瞬く間に話題となる。2004年には、トム・キャロルやケリー・スレーターなどレジェンドサーファーを収録した『DOPED YOUTH』を発表。この作品をきっかけにオージーは唯一無二の存在となり、その名は世界中に知れ渡ることとなる。

現在はレノックスヘッドから5分ほど内陸に入った、自然豊かなエリアに暮らしている。朝7時に目を覚ますとエスプレッソを淹れ、バナナを手にワゴン車で波チェックへ。お気に入りのレフトの波を見つけると、エキサイトした少年のように海に飛び込み、GoProを片手にチューブに入って自撮りをするのが日課だ。帰宅後はウクレレを奏でながらリラックスし、アート制作に取り掛かる。彼の作品はカラフル且つ大胆で、絶妙なバランスで色を組み合わせている。ユニークなキャラクターやメッセージ性のあるフレーズを多く描き、思わず笑ってしまうようなコミカルな要素も含まれている。これまでに1000本以上のサーフボードに絵を施し、仕事でも「楽しむことが最優先」というスタイルを貫いている。“Anti Bad Vibes Club(アンチ・バッド・ヴァイブス・クラブ)”というフレーズを使ったアートは彼のトレードマークであり、これは、「ネガティブなエネルギーを排除し、常にハッピーでいようぜ」というメッセージを込めたもの。最近ではミシンを購入し、リサイクルショップで買ったファブリックをつなぎ合わせたアートを制作している。その理由は、「大きな作品でも簡単に収納でき、海外へ持ち運べるから」だという。

家のバルコニーに散乱した筆を手に取り、おもむろにアートを描き出す。スプレー、アクリル、クレヨンなどを使い分け、カラフルに表現

また彼はミュージシャンとしての顔も持ち、『GOONS OFDOOM』というパンクロックバンドでベース兼ボーカルを務めている。20年前に幼なじみと結成し、毎晩のようにガレージでセッションを繰り返した。そのサウンドは彼らのライフスタイルそのもので、エネルギッシュなパーティロックである。社会的なメッセージを含んだ楽曲もあり、ライブでは常に大盛り上がりとなる。

オージーがベースとボーカルを務める『Goons of Doom』のミュージックビデオの撮影現場にて

普段はツインかトライフィンのショートボードに乗ることが多いオージー。操作性に優れ、エアに必要なスピードを得ることができるから。アーティストでもある彼は、シングルフィンのように決められたラインを走るメローなスタイルよりも、自由にラインを描き、ターンを刻みながら走るライディングを好む。その滑りは、まさに波のキャンバスにアブストラクトアートを描いているかのよう。それでもたまに、シングルフィンに乗ることもあるという。

「インドネシアのホローな波では、シングルフィンを選ぶことがある。友人のボードやその場にあるボードを借りたりもする。スラスターはスピードがつきすぎてチューブから飛び出してしまうこともあるけど、シングルフィンならポケットにしっかりハマり、ステイすることできる。波との一体感を長く楽しめるんだ」
彼は毎年バリで開催される「ウルワツ・シングルフィン・クラシック」に招待されており、2019年には1本の波で3度バレルを抜け、10ポイント満点を叩き出し優勝を果たした。仕事と遊びの境界をなくし、自由なライフスタイルを確立したオージー。今日もクレヨンを手に絵を描き、ウクレレを奏でながら鼻歌を歌い、周囲の人々を楽しませている。


オージー・ライト/ロング

1976年生まれ、シドニー・ノーザンビーチ出身。フリーサーファー、アーティスト、ミュージシャン。エアリアルの先駆者であり、唯一無二のスタイルマスター。日本にもファンが多い。


photography & text _ Zack Balang

>>SALT...#04から抜粋。続きは誌面でご覧ください

「SALT…Magazine #04」 ¥3300
サーフィン、暮らし、生き方、そして思考をより本質的なものへと回帰。シンプルで持続可能な在り方を追求することこそが、真の豊かさにつながる。

<Contents>
⚪︎Burleigh Single Fin Festival
⚪︎未知なる領域へ̶̶ サーフィンの新境地
⚪︎シングルフィンを愛する10人のインタビュー
⚪︎STILL AND TRUE
⚪︎笹子夏輝 ~カリフォルニア・スタイル巡礼の旅
⚪︎サーフィンによるマインドセットのススメ
⚪︎Stories Behind the Waves
⚪︎今を生きるサーファーたちのダイアログ
⚪︎世界の果て、南ポルトガル・サグレス
⚪︎Column _ Miyu Fukada

オンラインストアにて発売中!

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