夏といえばビール。ビールといえばコロナビール! サーファーの永遠の相棒とも言えるコロナビールが今年で誕生100周年を迎え、大型のキャンペーンがスタート! サーフボードやHelinoxのチェアなど合計1,500名にあたる超豪華なプレゼントが用意されており、アイテムのキュレートを弊誌SALT...が担当しました。7種類ある景品のうち、チェアとコットを除くすべてのアイテムにはオリジナルのアートが施されている。
筆を執ったのはアーティストの上岡拓也さん。青く澄んだ海と白い砂浜、輝く空を仰ぎながら風に揺れるパームツリー。対岸を眺める女性の手には、キンと冷えたコロナビールが握られており、後ろから彼女を見守る人の姿も。美しい風景と情緒感たっぷりの作品は、上岡さんが旅先で訪れたメキシコの原風景だった。
──子供の頃からアメリカンカルチャーが好きだったと聞きました。
そうなんです。先輩に教えてもらったとか、誰かに影響されたというより、自分の中で自然にハマっていった感じです。小学校の高学年くらいから、ヒップホップとかスケートボードとか、そういうアメリカンカルチャーに惹かれるようになって。「なんかカッコいいな!」って、直感的に感じてました。私立の学校に通っていて、まわりにオシャレでませてた子が多かったのも、影響してたかもしれません。それと、通学で乗っていた電車の線路沿いに描かれていたグラフィティに、すごく衝撃を受けたのを覚えてます。
──そのグラフィティがきっかけで絵が好きに?
それだけではないですが、間違いなく影響はありますね。母親にアルファベットを教えてもらって、見よう見まねで自分の名前を描いたりしてました。うまくはなかったけどそういうのが楽しかったし、グラフィティに限らず、絵を描くこと全般が好きでした。勉強もそこまで好きじゃないし、スポーツが得意というわけでもなかったけど、絵だけは誰にも負けない自信があった。クラスに一人くらい、“絵がうまいやつ”っているじゃないですか。まさにあれです(笑)。「この才能を伸ばせば、将来は絵で食っていけるかも」って、子供ながらに本気で思ってました。小学5年のときです。

──小学5年生で将来の道を見定めるとは! その後、美術系の道へ進んだのですか?
高校2年のときから、美大を目指す予備校の造形学科に通い始めました。そこで、アクリル絵の具を使った平面構成とか、鉛筆でのデッサンなど、基礎的なことを学びました。並行して、独学でグラフィティや油絵もやってました。どれも好きですが、ひとつ選べと言われたら間違いなく油絵を選びます。

──油絵で影響を受けたアーティストはいますか?
特定の誰か、というのはいないですが、ルネッサンス期とかバロック期の宗教画が好きです。油絵って、色んな種類がある絵の中で一番オーセンティックで、奥が深く、写実性が高いところが好きです。それに何十年も何百年も残るものじゃないですか。ゴッホとかラッセンみたいに。せっかく絵を描くなら、自分の作品もそんなふうに残ってほしいと思ってます。
──デジタルで制作することは?
最初から最後まで全部デジタルってことはないです。書いたものをデータ化して、画面上で色味を調整するくらい。今回のコロナビールの作品もそうでした。油絵で描いたものをPCに取り込み、色を修正してます。
──ビールの話になりましたが、普段からお酒は飲みますか?
めちゃくちゃ飲みます(笑)。仕事終わりにベランダで飲むビールが最高なんですよ! 最近は外で飲むより、家で飲むことが多くって。あと少しで描き終わるときに、我慢できず、「1本だけ!」って飲みながら作業することもあります。

──それだけビール好きなら、今回のオファーは嬉しかったのでは?
めちゃくちゃ嬉しかったですし、「これはもう俺しかいないでしょ!」って気持ちで即答でした(笑)。コロナビールはすっきりしてて飲みやすいですよね。旅行が趣味で、メキシコに2回行ったことがあるんですけど、作品はカンクンの南にあるトゥルムという街をイメージして描きました。海は青く、砂浜は真っ白。色々な海に行きましたが、トゥルムのビーチは忘れられない風景です。
──実物の絵はかなり大きいですね。
サイズはP30(651mm×909mm)で、僕にとってはよく使うベーシックな大きさです。油絵って、ペインティングナイフで重ね塗りする描き方もあるけど、僕は筆で大胆にざぁ〜と描く方が好きなんです。キャンバスが小さいとディテールも表現ができないし、今回は海や空の透明感を出したかったので、軽めでマットな仕上がりを目指しました。

──そうすると水彩画の方が透明感は出しやすそうですが、油絵にこだわる理由は?
水彩って偶然性を活かす描き方なので、思った通りに描くのが難しいんです。滲み具合は時間の勝負だし、失敗すると取り返しがつかない。その点、油絵は自分のペースでじっくり考えながら描けるのがいいですね。
──出来上がりには満足してますか?
最初は「海に行きたくなるような絵を」と言われて、人物を入れてなかったんです。でも、動きがほしいなと思って、女性を描きました。彼女はフィリピン・メキシコ・日本のクォーターで、アトリエに来てもらって撮影して、それをもとに模写しています。コロナビールのイメージにピッタリの子がいて、よかったと思います。描き始めると楽しくて、1週間くらいで描き終えました。
──今回の作品はプロダクトに落とし込まれる予定ですが、意識したことはありますか?
縦横比とか画角は一応気にしましたが、あまりガチガチに考えず自由に描きました。あまり縛られすぎると、面白いものができないので。

何気ない日常や旅の中で出合った景色や感情を、独自の感性と卓越した描写力で切り取る上岡拓也さん。差し込む光と、その影がつくる豊な表情──そんな一瞬の美しさが、今回の作品にも丁寧に映し出されている。

上岡拓也/Takuyua Kamioka
イラストレーター、アーティスト
1985年生まれ、東京都出身。幼少期から絵を描き始める。2008年、桑沢デザイン研究所を卒業すると同時にフリーとして活動開始。水彩画、グラフィティ、エアブラシ、油絵など幅広い技法を用い、描写力にも優れた稀有な画家。バヤリースオレンジ、レッドブル、湖池屋等のパッケージや、水曜日のカンパネラ、KOHH、KANDYTOWN、YENTOWN、舐達麻などのアーティストのジャケットを手掛ける。
公式サイト/Instagram
photography_Yusuke Kigoro
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