海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。
Profile
Margarita Salyak イネス・マリア・カラチェド
ロシア出身の水中フォトグラファー/アーティスト。インドネシアを拠点に、メンタワイやハワイで世界中のサーファーをカメラに収める。
あなたのことについて教えて
生まれ育ちはロシアのモスクワ。幼い頃からアートに興味があって、大学でもアートを専攻していた。在学中のプロジェクトがひと段落した頃、6ヶ月の休暇を使って初めてバリを訪れたのが19歳のとき。サーフィンやライフスタイルなどその全てが私の理想で、ここに長く滞在したいと思った。そのために仕事を探していたとき、メンタワイでサーフィンフォトグラファーとして働く機会をもらった。今までイベントやファッションの撮影経験はあったけど水中カメラは触ったことがなく、それに当時(10年前)のインドネシアは今では想像できないほど手付かずの状態で、メンタワイを知っている人も少なかった。
ただただ海・サーフィンが好きで、どうにかしてインドネシアに滞在したくて、“Yes”と答えて片道切符でメンタワイへ向かった。水中撮影ができるハウジングなどのカメラギアも揃え、一日のほとんどの時間を海の中で過ごした。当時20歳だったけど不安はあまりなくて、最高の波がある場所で思う存分学び、今後に生かせるよう経験を積むことが純粋に嬉しかった。
撮影中に怖い経験もたくさんした。ハワイのパイプラインで撮影していた時、いきなり天気が嵐のように変わり、強いカレントのせいでビーチに戻ることが出来なかった。波もかなり大きかったから、とても怖かったのを覚えてる。
サーフィンを始めたきっかけとお気に入りのスポットは?
インドネシアにはもう10年以上住んでいるけど、サーフィンを本格的に始めたのは4年くらい前。パンデミックで観光客がいなくなった海に毎日入り、そのお陰でだいぶ自信がついた。それまではメンタワイとハワイを行き来しながら生活していて、どちらも初心者には難しい波だった。だから撮影に専念して、キャリアを築いていた。
お気に入りのサーフスポットはやっぱりメンタワイ。最高の波で地球の楽園のような場所。次に行きたい場所はタヒチと日本!
海、自然との関係を言葉で表すなら?
私のライフスタイルと自然は密接に繋がっている。仕事も私生活も海があるからこそ成り立っていて、考え事や不安なことがある時は、いつも海へ戻るようにしている。サーフィンでもビーチを散歩するだけでも、自然の中にいることが私を謙虚にさせてくれる。
あなたの生活に欠かせない3つのものは?
海(サーフィン)、友達と家族、あとは大好きなチョコレートかな。
何か新しいことを始めたい人へのアドバイスを
やると決めたら、その直感を信じてとにかく行動すること! 不安や迷い、失敗したら……と考えることもあるかもしれないけど、やってみないと分からないこともたくさんあるから。その過程で出会う人々や、新たなコネクションもきっとあるはず。
text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram
TAG #Ocean People#サーフィンフォトグラファー#ビーチライフ#マルガリータ・サルヤック#メンタワイ#連載
5月下旬、過去10年で最高のスウェルがインドネシアに入ってきた。多くのプロサーファーがインドネシアのそれぞれの島へストライクミッションを行うなか、メンタワイへのトリップを計画していた9人の女性サーファーたちがいた。まさかこのタイミングで最高のスウェルが入ってくるとは! 強運を持ち合わせた9人のガールズサーファーたちの、泣いて笑ってサーフィンし尽くした12日間の旅の記録。
5月の終わりのある日、9人のグループチャットは、スウェルの大きさ、方向、風、すべてがインドネシアにとって完璧な予報と、盛り上がっていた。普段使っているボードより長めのサーフボード、無数のワックスとビキニ、予備のリーシュが詰まった大きなボードバッグを抱え空港を歩いていると、同じような大きなボードバッグを持ったガールズサーファーたちがいた。彼女たちが今回の旅の仲間だと、言葉を交わさなくてもわかった。
私たち9人はボートが出航するパダンで初めて出会い、その場で意気投合した。ハワイ、フランス、カリフォルニア、バリ、オーストラリア、アイルランド、世界中のサーフスポットから集まったエネルギーに満ち溢れたメンバーたち。20代後半で友達作るのはなかなか難しいけど、サーフィンで繋がる友達は一生モノ。
目の前でブレイクする波に誰よりも早く乗りたくて、8時半にはベッドに入る生活がスタート。「モーニン〜グ!」と目をこすりながらコーヒーを啜り、暗くてよく見えない波を横目に早朝5時半から人生トーク。日焼け止めを塗りながら、ストレッチをしながら、ワックスアップしながら、ボーイフレンド、キャリア、セルフラブについて語った。サーフガイドもびっくりするほど、朝からフル回転のガールズたち!
ハイシーズン中にも関わらず、ラインナップには誰もいない日が何日もあった。これがどれだけ幸せなことか、いつも混雑した海でサーフィンをしている人ならわかるはず。まさにこれがこの旅を特別にしてくれた大きな理由だった。
女性サーファーが、体格もパワーも上回る男性と競い合って波を捕まえるのは難しい。混雑したローカルのラインナップから離れることで波の取り合いから解放され、テクニックに集中することができる。メンタワイはそれを叶えてくれる場所だ。仲間たちだけで波をシェアし、誰にも邪魔されずにチャージ! 極上のメンタワイの波にガールズみんなが恋をした。
今までサーフィンしてきたなかで、一番大きくてパーフェクトな波。まさにパラダイスという言葉がピッタリ! 順番に波に乗り、誰かが良い波に乗ると歓声と興奮の声が海に響き渡る。ただただ純粋に波に乗ることを楽しみ、自然と一体になるサーフィンのあるべき姿。旅の後半、自分たちのサーフィンがどれだけ上達したかビデオでチェック。セットの波にテイクオフをする、チューブに入る、スタイリッシュなターンをする……それそれが目標として掲げていたことが、この12日間で実現した。
朝くたくたになるまでサーフィンをして、朝食をとった後2〜3時間昼寝をして、夕方になったらサンセットサーフィン。どこを見渡してもココナッツの木があり、透き通った海と真っ白なビーチが視界いっぱいに広がる。このパラダイスに、年に一度は帰ってきたいと思った。
電波も入らないインド洋のど真ん中で仲間との会話を楽しみ、お腹いっぱいサーフィンをして、体力的にも精神的に良い意味で疲れ果てていた。当分サーフィンしなくていい状態になっていたが、翌日スウェルが到着したバリに戻ると、やっぱりボードを片手に海に走っていた。まさにサーフィン中毒。
12日間の旅が終わりボートを降りる頃にはみんな姉妹みたいに仲良くなり、お別れするのが悲しく大きなハグと共に涙が溢れた。メンタワイで築いた絆は言葉では上手く言い表せない特別なもので、このトリップは私たち9人の心の中に一生残るものになった。
text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram
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