#シリグルデヴ・カルサ

  • 【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/33_シリグルデヴ・カルサ
  • 2026.04.27

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Sirigurudev Khalsa シリグルデヴ・カルサ
ロサンゼルス出身の水中フォトグラファー。WSLやプロサーファーの撮影を経て、現在は日本を拠点に、世界各地で培った感性と経験をもとに、水中から波とサーファーの一瞬を捉えている。

あなたのことについて教えて

ロサンゼルスで生まれて11歳まで過ごし、その後はインドの全寮制学校で6年間、17歳頃まで過ごした。アメリカに戻ってからはロサンゼルスのサンタモニカカレッジに通いながら、写真やアートを学んだ。
アメリカに戻ったタイミングでサーフィンを始めて、すっかりとりこに。生活のすべてを持っていかれるような感覚で、完全にのめり込んでいたと思う。その頃からカリフォルニア・トーランスのサーフボード工場で見習いとして働き始めて、サーフボード製造の技術や3Dデザインを身につけた。
本格的にサーフフォトグラフィに取り組み始めたのは22歳の頃からで、マリブで継続的に撮影を始めてから、1ヶ月ほどでプロサーファーから仕事をもらえるようになった。
2021年の10月には、チャレンジャーシリーズの大会を追いかけてポルトガルとフランスへ。ロサンゼルスでプロサーファーを2人しか知らなかったところから、気づけばチャンピオンシップツアーやチャレンジャーシリーズに出ているほとんどの選手と知り合いになっていた。そこから一気に軌道に乗った感覚がある。それからは毎年バリにも通っていて、4年間ほどは毎年3〜4ヶ月、インドネシアで過ごしていた。

日本に移住したきっかけ

自分でもかなり予想外の流れで、これまでの人生の中でも大きな決断だった。もともと日本にはずっと興味があって、5歳の頃から家族ぐるみで仲のいい友達に「日本においでよ」と誘われていた。ただ、その人と一緒に来る機会はなかった。
その後、その友達が日本に戻ることになって、「東京は本当に楽しいから絶対来たほうがいい」と半年ほど誘われ続けていた。ちょうどその頃、バリへの渡航を何度も計画していたけど、撮影のタイミングと重なって毎回直前でキャンセルになり、フライトも4回すべて取り直すことになった。さすがに「今年はバリに行くべきじゃないのかもしれない」と感じて、正直かなり落ち込んだ。ただ、時間ができたこともあって、今まで行ったことのない場所に行こうと思い、軽い気持ちで日本への旅行を計画した。
2024年9月に来日して、本来は2週間の予定だったが、気づけば東京に2ヶ月滞在。その後一度離れたものの、12月末に再び戻り、そのまま日本で年越しを迎えた。そして2025年2月に今の妻と出会い、「もうここを離れることはない」と自然に思えた。それ以来、日本での生活が続いている。
バリへの旅が何度もキャンセルになったことも含めて、すべてが自然と日本へ導かれていたように感じている。自分の計画とは違う形だったけど、結果的にはこれ以上ない形で収まった。今振り返るとそんな風に思える。
日本でも水中撮影は続けていて、千葉や湘南、伊豆など、さまざまな場所を回りながら撮影している。日本はスウェルがそこまで安定しているわけではないので、「ここが良くなったらあっちへ」というように、自分の中でいくつも候補地を持って、波の状況を見ながら動いている。本当にいい波が撮れるタイミングを待ち続けている感覚。

海、自然との関係を言葉で表すなら?

海との関係はとても深くて、世界全体が静かになるような感覚がある。何かに悩んでいたり、考えないといけないことがあるときは、自然と海に入りたくなるし、その状態に身を置くのが好き。
サーフィンをしているときは完全に一点に集中していて、「今サーフィンしている自分」だけになる。特にサイズのある波のときはなおさらで、例えばウルワツのような場所でサイズがあると、本当に危険な場面もある。しっかり集中していないと、「あと1秒遅かったら10フィートのセットにやられていた」ということもある。だからこそ、やっていることに意識が完全に向いて、他のことは一切考えられなくなる。むしろ、考える余裕がなくなる状態になる。それが自分にとっては心地いい。

これまで撮影してきた中で一番好きな場所と、次に行きたい場所

お気に入りのスポットは間違いなくタヒチ。水の透明度、完璧な波、海の中の雰囲気、そのすべてが揃っている場所は他にないと思う。これまで一緒に撮影してきたサーファーたちも、プロもローカルも含めて本当にスピリットが素晴らしく、優しい人ばかり。その人柄がビッグウェーブに挑むサーフィンにも表れている。いつも滞在させてもらっている家族がいて、何度も通ううちに、今では“3つ目の家”のような場所になった。またすぐに行きたくなる場所だ。
それから食べ物も外せない。タヒチの食事が大好きで、フランス領ということもあってフレンチ、特にシーフードが素晴らしい。すべて含めて100点満点で、自分にとっては世界で一番好きな場所。
次に行ってみたい場所はいくつかあって、具体的に計画しているのは新島と小笠原。小笠原は東京から真南の位置にあって、船で丸一日かかると聞いている。行くなら最低1週間は滞在する必要があり、写真や動画で見る限り水も透き通っていて、波もかなり良さそう。沖縄と同じくらいの緯度なので、冬でも水温は17〜18度、場合によっては20度近くあるかもしれない。ローカルの人たちがサーフスポットをとても大切にしているので、外に情報があまり出ていない可能性がある。カメラを持って行っても「ここは撮影しないで」と言われるかもしれないが、それでも行ってみたい場所だ。

今後の目標

少なくとも日常会話ができるくらいには、日本語を話せるようになりたいと思っている。今も勉強しているが、とっても難しい(笑)。毎日使って、英語が通じない環境に身を置くことで、少しずつ身についてきている感覚がある。この調子で続けていきたいと思う。

あなたの人生に欠かせない3つのもの

1つ目は間違いなく海。サーフボードがなくても生きてはいけると思うけど、かなり落ち込むと思う。でも海に入れるなら、ボディサーフィンでも十分だ。2つ目はカメラとノート。瞬間を記録することもそうだけど、絵を描いたり、落書きをしたり、文章を書くことが好きなのでノートは欠かせない。3つ目は、最近ハマっているギターかな。

東京での展示会

4月29日から6月14日まで、東京・三軒茶屋の「Space Orbit」で、展示会を行う予定。メインとなる写真を10点展示する予定で、今はそのためのフレームを自分で制作しているところ。この6年間で撮影してきた海やサーフィンの写真の中から、ベストを集めた内容になっている。
これまで15カ国ほどで撮影してきて何万枚という写真があるが、なかなか展示することができなかった。そんな中、妻が背中を押してくれて「いい会場を知っているから、オーナーに話してみたら」と紹介してくれた。実際に話してみるとタイミングもよく、スムーズに決まった。オーナーはサーファーですぐに意気投合! 最初に会場を見に行ったとき、入口に大きなロングボードが置いてあって、「これは絶対うまくいく」と感じたのを覚えている。

これから何か新しいことに挑戦したい人へのアドバイス

好奇心を持ってたくさん質問すること、そして謙虚でいることが大事だと思う。どんな会話も笑顔で始めれば、大抵のことは教えてもらえる。これまでいくつかの国に住んできて、世界中で素晴らしい人たちに出会ってきたが、ほとんどの人は優しくて親切だ。
「どんな人でも必ず何か面白いことを持っているし、誰もが自分の知らないことを知っている」という意識で接すると、新しい出会いやコネクションにつながる。だからこそ、相手に興味を持って向き合うことが大切だと思う。

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

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