1950年代以前、それ以降10年単位でサーフィンの歴史を振り返るTHE HISTORY of SURFING。本誌で最も反響が高かった特集のひとつであるが、第2回目の今回は1960年代をピックアップ。歴史的に見て、'60年代はサーフィンの世界が大きな転換期を迎えた時代。’60年代初頭、サーフィンのメッカがハワイからカリフォルニアに移り始め、映画『ギジェット』の公開とともに一大ブームが到来した。
未曾有のサーフィン人気でカリフォルニアの多くのサーフブレイクは大混雑に見舞われた。マリブのラインナップの人口密度も10倍以上増加し、その大半が初心者だった。サーフィンと南カリフォルニアのビーチカルチャーを題材にしたB級映画も数多く作られ、サーフィンとサーファーに対する世間のイメージが定着する。
アメリカの新しいスポートとなったサーフィンは、サーフボードやショップに加え、ケイティンやハングテンなどのクロージングブランド、サーファー誌をはじめとする雑誌、さらにTV番組サーフズ・アップが登場した。また、波のない日にサーフィン気分を味わえる遊びとしてサードウォークサーフィン(スケートボード)が普及したのも’60年からだ。
もっとも有名なのは赤いデッキがトレードマークのローラーダービーだろう。その後ライフガードのラリー・スティーブンソンが'60年代を代表するマカハ・スケートボードを立ち上げる。初めてスケートチームを結成したのもマカハで、チームライダーにはフィル・エドワーズやマイク・ドイル、マイク・ヒンソンといった当時のホットなサーファーたちが名を連ねていたことから、スケートボードはサーファーのマストアイテムになっていく。
サーフィンが上手いだけでなく、個性が際立ったサーファーも増え始めた。いわゆる“スタイル”である。ピッグ以降のポストモダン世代のサーファーたちは確固たるスタイルでサーフィン界のスターになっていき、やがてサーフボードレーベルはそうした彼らのスター性をビジネスに利用するアイデアを思いつく。シグネチャーモデルである。
1963年、ワールドクラスのサーファーとして当時絶対的な人気を誇っていたフィル・エドワーズのモデルがホビーからリリースされる。10フィートのスリーストリンガー、クリアボランのこのモデルが業界初のシグネチャーモデルだ。これが憧れのサーフスターに近づきたい一般サーファーたちの購買意欲を大いに刺激し、大当たりする。
サーフィンがスポーツとして広く捉えられるようになると、コンペティションも盛んになる。1954年から始まったマカハ・インターナショナル・サーフィン・チャンピオンシップが最も古く、続いて1956年リマで開催されたペルー・インターナショナルが2番目に大きい。
1964年、シドニーのマンリー・ビーチで栄えある第1回ワールド・サーフィン・チャンピオンシップが開催され、ミジェット・ファレリーが優勝を飾った。翌1965年にカリフォルニアで開催されたトム・モーリー・インヴィテーショナルでは1,500ドルの賞金が用意され、このスポーツに初めて賞金システムが導入された。
‘60年代を語る上で欠かせないのがショートボード・レボリューションであり、その起源はジョージ・グリーノーだった。’60年代半ばに彼がオーストラリアに持ち込んだラディカルなカービングサーフィンとデザインコンセプトを、オーストラリアのサーフコミュニティはすぐに受け入れた。
マクタビッシュはグリーノーのニーボード「ヴェロ」をスタンドアップ・サーフィンに転換するデザインとしてVボトムを考え出す。一般的なロングボードよりも2フィート短く、1インチ薄かった。1967年の秋にデューク・カハナモク・インヴィテーショナルに招待されたマクタビッシュとヤングは、プラスティック・マシーンと命名したVボトムでサンセットの波に挑むもスピンアウトを繰り返し苦渋を舐める。ただその後、マカハとマウイのホノルアベイではVボトムが見事に本領を発揮した。ノーストリンガーならではのフレックスから、ターンで溜め込んだエネルギーを解放するときの爆発力は驚異的で、ヘビーなボトムターンからハイラインに上がるスピードはそれまでのサーフィンの常識を覆すものだった。
全文は本誌もしくは電子書籍でお楽しみください。
次回は、1970年代をピックアップします。
text_Takashi Tomita
SALT...#01「THE HISTORY of SURFING」より抜粋
1950年代の記事はこちら
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