#まほろば

  • ⽥岡なつみとナチョスによるサーフドキュメンタリームービー『MAHOROBA』。11月18日(月)ついに日本での上映が決定!
  • 2024.11.05

プロロングボーダー田岡なつみとフォトグラファーのナチョスは、2022年秋、2023年冬、同年春の3回、北海道・利尻島などに赴き、過酷なサーフィン撮影に臨んだ。その様子は創刊号のSALT...で「美しき白の世界の物語」と題し8ページにわたって特集しているが、実はこのときの撮影の主役は映像であり、出来上がった作品は『MAHOROBA』と名付けられた。

同行スタッフはゼロ。特別な機材はなく、ふたりきりで構成から撮影、編集まで行い、30分のドキュメンタリー作品として完成した。ナチョスは、日本のサーフシーンを世界に知ってもらいたいと、ロンドン、スペイン、ニュージーランド、カリフォルニア、イタリア、ポルトガル、ハワイの映画祭に作品をエントリー。最初に送ったロンドンの映画祭は落選するも、2024年1月、バスク映画祭からノミネートの連絡が届いた。360作品がエントリーしたというから、その倍率は10倍以上だ。

その後、世界中のサーフィンフィルムフェスティバルで上映され、満を持して日本での上映が決定した。場所は渋谷の「ヒューマントラストシネマ渋⾕」。巻末に詳しい情報を掲載するが、ここでは7月26日発売のSALT...#02でインタビューした「映画を作ろうと思ったきっかけ」や「映画祭に参加した感想」などを掲載。ふたりの思いを知ることで、映画の見方も変わるはず。

世界が認めた日本のサーフドキュメンタリー

 2024年2月、田岡なつみとナチョスはスペイン・バスクの映画祭にいた。上映前「日本からスペシャルゲストが来ています!」とMCから突然のアナウンス。スクリーンの前に呼び出され、作品や日本の女性のサーフシーンについてインタビューを受けた。終了後も世界各国のメディアから質問攻めにあい、多くの人が日本のサーフィンに興味を持っていると、ふたりは改めて確信した。

「日本のサーフィン、しかも雪が舞う中でのサーフィンを、真剣な眼差しで観てくれていました。でも一番印象に残っているのは、なっちゃんのサーフィンの上手さにみんな驚いていたことかな」

 田岡なつみは、世界で活躍する日本で1番、いや、アジアで1番のロングボーダーだが、実はショートボードのプロ資格も持っている実力の持ち主。作品の中ではロングボードだけでなく、華麗にミッドレングスを乗りこなす姿も収められている。

 話は戻るが、そもそもふたりはどういったきっかけで映画を作ろうと思ったのか?

「海外の選手やフリーサーファーたちが、日本の波のポテンシャルや素晴らしい文化に気づき、たくさん撮影に来て発信しているにも関わらず、日本人が全く発信できてないことに気づいたんです。私たち日本人が、日本の良いところをきちんと発信しなきゃって。実際、日本のサーフシーンが、こうやって世界をまわるのは初めてじゃないかな?」

田岡のコメントに対してナチョスは「パンデミックで海外に行けなくなり、日本を旅することが多くなったんですけど、行く先々で“あぁ日本は素敵なところがいっぱいで、もっと見てみたいな”って思ったんです。あと映画祭についても、これまでは人の作品を観に行ってたんですが、“自分が撮った作品と一緒に行きたい”と思うようになったんです」。

 期せずしてふたりの気持ちとやりたいことのタイミングが一致し、『MAHOROBA』は誕生した。日本ではあまり馴染みがないサーフィンの映画祭だが、世界各地では毎年行われている恒例のイベント。ノミネート作品も多種多様で、ライディング中心のモノから有名サーファーをフィーチャーしたドキュメンタリー、海・サーフィン・スケートを通じての教育系、地元愛あふれるローカル作品からナザレやカムチャッカの山を越えて旅する壮大なものまで、様々な作品がラインナップ。20分前後を基準にショート編とロング編に分けられ、英語の字幕が必須というのがレギュレーションとして設けられている。審査員も映像関係者から人気のクリエイターまで幅広いのが特徴だ。イベントは複数日間かけて行われ、フィルムの上映以外にアートエキシビジョンやライブ、スケートボードのデモンストレーション、トークショー、海や自然をテーマにしたワークショップなどが併催されている。

 多忙な合間を縫って訪れたバスクの映画祭。参加した感想をふたりはこんな風に語っている。

「スペインではアジア人が珍しいこともあって、たくさんの人に声をかけてもらえました。作中に登場する日本食や温泉のシーンにざわついたり、これぞ“ニッポン”というものを伝えられたのはよかったと思います。また、他の映画祭で作品を見た人から、日本に行ってみたい、サーフィンしてみたいっていうメッセージをもらえたのが嬉しかったです。これからも作品を作り続け、日本のいいところをたくさん発信していきたいと思います」(田岡)

「現場の空気感や盛り上がりは、実際に訪れてみて初めて知ることができました。オーガナイザーや審査員から、このシーンが良かったなど、意見を聞けたのもとても勉強にもなりました。わたしはイタリア・ミラノのイベントにも参加したのですが、スペインとは雰囲気や形式が違っていて、いい刺激になりました。この作品をきっかけに海外に挑戦しようと思う日本人が増え、その後押しをすることが出来たら最高に幸せです!」(Nachos)

 最終的に10カ国の映画祭からノミネートされた『MAHOROBA』(2024年7月12日現在)。ドライスーツ片手に極寒の北海道を訪れ、ふたりキャンプしながら波を探した日々。「楽しかったけど、めちゃくちゃ過酷でしたぁ」と笑いながら当時を振り返るが、そこはふたりにしか分からない厳しさがあったはずだ。かっこよく撮る、素敵に写すなど言ってられない状況の中、いま目の前にあるものをありのままドキュメントした結果、世界の共感を得ることができた。

「誰かがやったことを真似するんじゃなく、自分がやりたかったことをやる。自分に正直に、責任を果たす。その重圧に負けそうになることもあるけれど、そういうのも嫌いじゃないってことにも気が付くことができました。これからもっといい作品を作り、表現の場を増やしていきたいです」

 ナチョスのまっすぐで力強い言葉。これからの日本のサーフィン映画の未来に期待したい。

スペイン・ビルバオ映画祭のオープニングパーティにて。パネルの前でワクワクしながらの記念写真

上映前にサプライズで呼ばれて登壇。緊張しながら日本の女性のサーフシーンについて語る

イタリア・ミラノの映画祭。立ち見が出るほど人が集まり、上映後は拍手と“Beautiful!”の歓声が

photography_Nachos

SALT...#02より抜粋


【MAHOROBA ジャパンプレミア上映】

⽇時:2024年11⽉18⽇(⽉)
第1部:17:00開場/17:30上映開始
第2部:18:30開場/19:00上映開始
※各会終了後、「カフェ347」で行われる懇親パーティに参加いただけます

場所:ヒューマントラストシネマ渋⾕シアター2
住所:東京都渋⾕区渋⾕1-23-16 ココチビル7F
座席:全席⾃由席
チケット代:2,000円(税込/2ドリンク付)
※ドリンクチケットはパーティー際に3Fカフェ347で利⽤可能です

※チケットの購⼊はこちら

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