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SALT Magazine - Surf&Beach Life Style Magazine -

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海と共にある暮らしを、新しい価値観でニューノーマル=オルタナティブなライフスタイルを海をフィールドとして、新しい価値観で伝えていくメディアです。

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林芳史

【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/39_ステファニー・バード

2026.9.24. by 林芳史

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Stephanie Baird ステファニー・バード
オーストリア出身のフォトグラファー。水中写真に魅了され、以来、ジンベエザメやマンタ、サーファーたちを海中で撮り続けている。現在はハワイとインドネシアを拠点に、サーフィンと写真を軸としながら、女性向けのサーフリトリートも主催している。

あなたのことについて教えて

オーストリアで生まれ、スペイン、ドイツ、アメリカなど、小さい頃からいろいろな国で暮らしてきた。18歳の頃にロンドンへ行き、もともとは演技を勉強するつもりだったけど、フォトグラフィーを学ぶようになって、ファッションやトラディショナルな写真を撮るようになった。それから5年ほどロンドンで過ごし、その後オーストラリアへ。オーストラリアでは西海岸を旅し、パースからさらに北にあるコーラルベイという小さな町にたどり着いた。ニンガルーリーフの近くにある場所で、そこで私はすっかりマリンライフ、そして海が近くにある生活に恋をした。
オーストラリアではボートで働きながら、ジンベエザメやマンタ、タイガーシャークなどの水中写真を撮るようになった。その後、東南アジアを6カ月ほど旅して、再びオーストラリアへ戻り、ビザが切れたタイミングでハワイへ移住。そこで本格的にサーフィンを始めたの。
今はハワイとインドネシアを拠点に、サーフィンと写真を軸としながら、女の子たちのサーフリトリートを運営している。リトリートを始めたのは2年半くらい前。インドネシアのメンタワイでガールズサーファーたちと出会って、当時は今ほど女の子が多くなかったから、海で女の子を見かけるだけで「女の子たちだけでこんなところに来てるの、最高じゃない?」って話していた。そこから始まって、今は初心者向けのリトリートを開催している。これからは初心者向けだけじゃなく、もう少しレベルの高い女の子たちに向けた、プログレッション系のサーフトリップもやっていたいと思っている。

写真、サーフィンを始めたきっかけは?

もともと写真は好きだったけど、本格的に興味を持つようになったのは、オーストラリアのコーラルベイにいた頃。マンタと一緒に泳ぐ女の子たちを水中でアーティスティックに撮って、それを見たときに「これってすごく面白い」と思った。そこから水中写真にどんどん惹かれていった。その後はハワイでウェディングを撮ったり、ブランドの撮影をしたり、いろんな仕事をしてきたけど、水中撮影ほど楽しいものはないと思う。
実は、サーフィンをするようになる前から、海の中でサーファーを撮っていた。特にハワイ・ノースショアにいた頃は、サーフィンのカルチャーの中に入りたかった。でも、そこにはフォトグラファーにもある種のヒエラルキーがあって、誰でも簡単にその輪の中に入れるわけではなかった。だから、自分で海に泳いで出て、撮影するように。頻繁に通って撮り続けているうちに、少しずつその世界に入らせてもらえるようになった。
初めて行ったときは友達に連れて行ってもらって、どうやって入って、どうやって出るのかを一から教えてもらった。その1年後、今度は一人で泳いで出た。その日はかなり大きくて、ダブルオーバーヘッドくらい。パイプラインで写真を撮る女性は多くないから、「一人でここまで来たんだ」と思えて、パイプラインは私の中で特別な場所になった。それからビッグウェーブサーファーたちと仲良くなって、ジェットスキーから撮影するようにもなった。波を追いながら、後ろを振り返ったらトリプルオーバーヘッドの波が来ていて、それを見た瞬間「やばい!」って思ったけど、そこから来るアドレナリンは言葉では説明できないわ。
サーフィン中も似たようなことが起きる。自分のレベルより少し上のサイズの波になると、全神経を使って目の前のセット、波、状況に集中しなきゃいけない。日常で起こっていることや、仕事のこと、人生のことなんて考える暇がないほど、「今、ここにいること」が求められる。だから私は、少しチャレンジングなサイズや、簡単じゃないスポットが好きなんだと思う。

海、自然との関係を言葉で表すなら

海のそばにいないと、ちょっとおかしくなる。それくらい私にとって欠かせないもの。最近よく考えるんだけど、海に行けない日って、一日何をして過ごしているんだろうって。もちろん他にもやることはあるんだけど、外にいること、自然の中にいること自体が、私にとってすごく大切なんだと思う。もちろん「サーフィンが私そのもの」とは言いたくない。自分の幸せを全部サーフィンに依存したくないから。でも、サーフィンができない期間があると、100%自分らしくない感じがする。だから、海に入ることと、身体を動かすこと、外にいること。その全部が、自分を自分に戻してくれるんだと思う。
サーフィンは、フィジカルだけじゃなく考え方にも影響している。特にリトリートでは、サーフィンを始めたばかりの人たちに、マインドセットについてよく話をする。サーフィンって、実は“サーフィン”だけじゃないんだってこと。波に乗ること自体は10%くらいで、残りの90%は波を読むことだったり、水の動きを理解することだったり、人との関係だったり、自分自身との向き合い方だったりする。
サーフィンは、自分がどういうふうに自分に話しかけているかを、そのまま映し出してくれる。結局、人生もサーフィンも、「全部わかっている必要はない。次の一歩に必要なことだけ知っていればいい」んだと思う。

今後の夢や目標

今運営しているサーフリトリートを成長させたい。コミュニティ、サーフィンの上達、自分に合ったレベルのガールズサーファーをつなげることにフォーカスして、世界各国のサーフスポットでトリップを開催できたらいいなと思っている。
そして、パートナーともたくさんサーフトリップに行きたい。まだ行ったことのない場所で、できるだけたくさんサーフィンしたい。特に、アイスランドは行ってみたい国の一つ。寒い場所でサーフィンすることに挑戦してみたくて、昔『Under an Arctic Sky』を観たとき、その世界観に惹かれた。真冬のアイスランドの人里離れた場所へ、完璧な波を求めて旅するサーファーたちのドキュメンタリー。数日経った頃、数十年に一度ともいわれる猛烈な嵐が襲来し、彼らの旅は命を懸けたサバイバルへと変わっていくんだけど、いつかあの世界に行って、自分の目でその景色を見るのが夢になった。

あなたの生活に欠かせない3つのもの

1つ目はもちろん、サーフィン。それから、成長すること。私は成長することに、ちょっと中毒なんだと思う。いつも何か新しいことを学んだり、自分が成長できる何かが必要。一番つらいのは、停滞すること。快適だからという理由だけで、同じ場所にずっといること。それから、自然。外にいる時間が何よりも必要。

これから何か新しいことを始めたい人へのアドバイス

ためらわず、まずはやってみること。自分の心に従って、自分を幸せにしてくれるもの、ワクワクするものを見つけてほしい。怖さを感じる瞬間を恐れないでほしい。サーフィンを通して学んだのは、怖いと感じることは、「危険だからやめろ」というサインとは限らないということ。むしろ、「自分は今、生きている」と感じる瞬間でもある。だから不安を感じたら、「怖い」ではなく、「自分は今、生きている」と考えるようにしている。もちろん、無謀になれということではないけれど、恐怖だけを理由に、自分の人生を小さくしてほしくない。
人は、安心できる場所に留まろうとするもの。でも、成長するのはいつも、少しだけ居心地の悪い場所に出たとき。だから、ワクワクするけど、ちょっと怖い。そんなものを追いかけてみてほしい。

Ocean People Archive

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

Filed Under: LIFESTYLE 関連タグ:Ocean People, Stephanie Baird, サーフィンフォトグラファー, ステファニー・バード, ビーチライフ, 連載

1万本のタバコの吸い殻から、1本のサーフボードをつくる! 映画『The Cigarette Surfboard』がオンラインプレミアを開催

2026.9.14. by 林芳史

ビーチに落ちている無数のタバコの吸い殻。それを拾い集め、実際に乗ることのできるサーフボードへと変えてしまう。そんな大胆なアイデアから生まれたドキュメンタリー映画『The Cigarette Surfboard(シガレット・サーフボード)』。
SALT...Vol.04で特集したが(作品の背景や「Ciggy Board」が生まれたストーリーについては、こちらの記事をチェック)、9月15日から27日までオンラインプレミアが開催されることが決まった。日本からも、自宅で作品を観ることができる貴重な機会。オンラインプレミアムのWEBサイトはこちらから。

1万本の吸い殻から生まれた「Ciggy Board」

『The Cigarette Surfboard』は、監督ベン・ジャドキンスが、アーティストでありサーファーでもあるテイラー・レインのプロジェクトを追った作品。舞台はカリフォルニア。テイラーはビーチに落ちているタバコの吸い殻を拾い集めるが、その数なんと1万本。それらを素材として、実際にサーフィンができるサーフボードをつくり上げていく。
完成したサーフボード=Ciggy Boardは、海洋環境について考えるためのシンボルとなり、さらに大手タバコ産業が生み出すプラスチック廃棄物の問題を問いかける、草の根のアクションへとつながっていく。
小さなポイ捨ても、積み重なれば大きな問題になる。ならば、その小さな行動を逆方向へ積み重ねることで、何かを変えることもできるのではないか。『The Cigarette Surfboard』が面白いのは、環境問題をただ「正しく」伝えるのではなく、サーフィンとアート、そして人の情熱を通して、楽しみながらその問題を考えさせてくれるところにある。

サーフィンから始まる、ポジティブなアクティビズム

作品に登場するのは、テイラー・レインをはじめ海を守るために活動するプロサーファーや海洋活動家たち。それぞれの視点から、海の環境やコミュニティ、そして自分たちにできるアクションについて語っている。「環境問題」という言葉だけを聞くと、少し難しく感じるかもしれないが、この作品が伝えるのは、もっとシンプルなこと。
まず問題に気づき、そして自分にできることを見つけ、プロセスそのものを楽しむこと。アートやサーフィンを入り口に、社会に変化を生み出していく。そんな前向きなアクティビズムのあり方を描いた作品だ。

世界12カ国・60回の映画祭上映、16の賞を受賞

『The Cigarette Surfboard』はこれまで、世界12カ国、アメリカ16州の映画祭で60回上映され、16の賞を受賞。さらにUCLA、UCサンディエゴ、ジョージア大学、クレムソン大学、ロードアイランド大学などの教育機関でも47回上映されている。各地で行われた草の根の自主上映会でも24回上映されるなど、サーフィンや環境問題という枠を越えて、多くの人に届けられてきた。因みに2024年のBend Film Festivalでは、長編部門の観客賞を受賞した。また、ミュージシャン、サーファー、アクティビストとして知られるジャック・ジョンソンも、この作品についてコメントを寄せている。

「シギー・ボード(The Ciggy Board)が体現しているのは、ある問題を見つけ、自分がその解決の一部になれる方法を見出し、そのプロセス自体を楽しむということだ」
— ジャック・ジョンソン(ミュージシャン/サーファー/活動家)

サンタクルーズの条例にもつながった「Ciggy Board」

映画のインパクトは、スクリーンの中だけにとどまらない。『The Cigarette Surfboard』は、カリフォルニア州サンタクルーズで、使い捨てタバコフィルターの販売を禁止する条例の成立にもつながった。プロサーファー、地元の活動家、さまざまな団体とともに議員への働きかけを続けた結果、サンタクルーズ郡、サンタクルーズ市、カピトラ市がこの政策を導入。地域で生まれたひとつのアクションが、実際の社会の変化へとつながったのである。
サーファーとして海に入る。海岸でゴミを拾う。日々の生活のなかで、少しだけ選択を変える。そんな一人ひとりの行動も、積み重なれば大きな力になる。この映画は、そんな「最初の一歩」を後押ししてくれる作品でもある。


9月15日〜27日、オンラインプレミア開催

今回のオンラインプレミアは、International Coastal Cleanup Day(国際海岸クリーンアップデー)である9月19日を記念して、2026年9月15日〜27日に開催される。チケットを購入すると、映画本編をオンラインで鑑賞できるだけでなく、作品に登場するプロサーファーや海洋活動家をゲストに迎えたライブ配信Q&Aにも参加できる。サーフィンや海の環境について、本人たちに直接質問できる貴重な機会だ。

【LIVE Q&A SCHEDULE】
9月15日(火)8:00 PM PDT
Cliff Kapono|化学博士/プロサーファー(ハワイ)
9月16日(水)8:00 PM PDT
Hannah Bennett|海洋活動家/プロサーファー(フィジー)
9月17日(木)12:00 PM PDT
Fergal Smith|リジェネラティブ農家/プロサーファー(アイルランド)
9月18日(金)12:00 PM PDT
Easkey Britton|環境・社会学博士/プロサーファー(アイルランド)
9月19日(土)12:00 PM PDT
Chris Hines|Surfers Against Sewage共同創設者(イギリス)

※Q&Aの日時は現地時間表記です。参加の際は販売ページで最新情報をご確認ください。

オンラインプレミアのチケットは、単体チケットからグループチケットまで、さまざまな形で用意されている。

  • 単体チケット:$10
  • 団体チケット(3〜5名):$25
  • 団体チケット(6〜10名):$40
  • 団体チケット(最大25名):$99
  • パブリックイベント:$499

さらに、単体チケットに「Ciggy Board」オリジナルのハット、Tシャツ、ロングスリーブ、スウェットシャツを組み合わせたセットも用意されている。サーフコミュニティや家族、仲間で一緒に観るのもよさそうだ。


「海のために、自分には何ができるだろう?」

環境問題について考えるとき、どうしても「何か大きなことをしなければ」と考えてしまう。けれど、『The Cigarette Surfboard』が見せてくれるのは、その逆なのかもしれない。ビーチに落ちていた1本の吸い殻。それを拾い集め、何か新しいものをつくる。そして、それをきっかけに誰かと話す。そんな小さなアクションが人を動かし、コミュニティを動かし、やがて社会を変えていく。サーフィンを愛する人にとって、海は単なる「遊び場」ではない。毎日を豊かにしてくれる、大切な場所だ。だからこそ、その未来について考える時間を、この映画から始めてみてはそうだろうか。


『The Cigarette Surfboard』ONLINE PREMIERE

配信期間:2026年9月15日〜27日

Ticket / Online Premiere

SALT...専用トラッキングリンクからチケットを購入できます。
https://watch.eventive.org/thecigarettesurfboard?utm_source=salt

※チケット購入に関する最新情報、配信詳細は販売ページをご確認ください。

公式サイト/Instagram

Filed Under: SURF 関連タグ:Ciggy Board, The Cigarette Surfboard, サーフフィルム, テイラー・レイン, ベン・ジャドキンス

「SALT... meets ISLAND CAFE -Sea of Love 4-」発売開始

2026.9.11. by 林芳史

海を愛するアーティストたちが奏でるアルバム第4弾


“海”をテーマに、シティポップ、ソウル、R&B、レゲエ、サーフミュージック、ジャズ、ファンク、フュージョン、HIPHOPなど、さまざまなスタイルのニュートラック15曲を収録。海辺で過ごす時間はもちろん、サーフィンへ向かうドライブ、夕暮れのビーチ、キャンプの夜など、1年を通してビーチタイム・フレイヴァーを感じられる一枚です。

今作には、土岐麻子、関口シンゴ、Cosmic Mauve、Fukumoto Nao、THREE1989がシリーズ初参加。それぞれが「海」をテーマに書き下ろした新曲を提供しています。
土岐麻子による、夏の海にぴったりのクールでしなやかなラブソング「Waves」、七里ヶ浜を舞台に、波のように寄せては返す人生の循環を描いたTHREE1989「Rhythm of Wave」、穏やかな海を漂うような浮遊感と心地よいグルーヴが溶け合う関口シンゴ「Dolphin」など、新たな“海の音楽”が誕生しました。
海、サーフを体現するPictured Resort、UEBO、Lisa Halim、Shimon Hoshino、レゲエをベースに新作を届けるNatsu Summer、MARTER、HANAH SPRING、沖縄を拠点に活動するFukumoto Nao、keigo、そしてビートマスターDJ Mitsu the Beats & Takumi Kaneko、フュージョン・インストのLiquid Stellaまで、世代も音楽的バックグラウンドも異なるアーティストが「海」をキーワードに集結。
Pictured Resortはディスコ/ファンクをベースにした爽快なダンス・シンセ・ポップ「Show Me Your Flow」、Liquid Stellaは'70〜'80年代のフュージョン・マナーを現代的にアレンジした「Velvet Summer Tide」、UEBOは海の記憶と別れた恋人への想いを描いたノスタルジックな「Omokage Drive」を収録。ジャンルは違えど、それぞれの楽曲から海辺の空気が立ち上がります。
沖縄を拠点に活動するFukumoto Naoは、海へ向かうドライブと離れてしまった大切な人への想いを描いた「あの日のメロディー」を、keigoは夕暮れから夜へと移り変わる沖縄の風景を描いたミッドテンポR&B「Ride Together」を書き下ろし。Natsu Summerは今井美樹の「去年は、8月だった」をシティポップ・レゲエとしてカバーし、MARTERはオーガニック・サーフ・レゲエとも呼べるピースフルな「Enjoy the day」を、HANAH SPRINGはデニース・ウィリアムスの名曲「Free」を心地よいラヴァーズ・トラックとして届けます。
さらに、DJ Mitsu the BeatsとTakumi Kanekoによる「I Can’t Help It」は、Michael Jacksonの名盤『Off The Wall』収録曲をメロウなインストゥルメンタル・カバーとして再構築。Lisa Halimは、10代後半に書き下ろした楽曲「花火」を、温かなサーフ・アコースティック・アレンジで新たに作品化。Shimon Hoshinoの「melt」は、流麗なピアノと優しいギター、Lo-Fiビートが心地よく溶け合うチル・ナンバーに仕上がっています。
ジャンル、スタイルを問わない総勢15組のアーティストが、「海」というひとつのキーワードでつながった『Sea of Love 4』。海を感じたいとき、サーフィンへ向かう車の中で、夏の夕暮れや、キャンプの夜に……。一年を通して「海」を感じられる、SALT...が提案するビーチタイム・ミュージックの最新作です。

【収録曲】全曲新録音源!
01. 土岐麻子/Waves
02. THREE1989/Rhythm of Wave
03. Pictured Resort/Show Me Your Flow
04. Liquid Stella/Velvet Summer Tide
05. UEBO/Omokage Drive
06. 関口シンゴ/Dolphin
07. Cosmic Mauve/Hold Me Tide
08. Natsu Summer/去年は、8月だった
09. MARTER/Enjoy the day
10. HANAH SPRING/Free
11. DJ Mitsu the Beats/I Can’t Help It
12. Fukumoto Nao/あの日のメロディー
13. keigo/Ride Together
14. Lisa Halim/花火 -Sea of Love Ver.-
15. Shimon Hoshino/melt

タイトル:SALT… meets ISLAND CAFE –Sea of Love 4-
発売日:2026年9月11日
価 格:税込¥3,000

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Filed Under: NEWS 関連タグ:NEWS, SALT… meets ISLAND CAFE, SALT...ONLINE STORE, Sea of Love, Sea of Love 2, Sea of Love 3, Sea of Love 4, サーフミュージック

【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/38_ケイン・マッカートニー

2026.8.19. by 林芳史

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Kane Macartney ケイン・マッカートニー
オーストラリア出身のサーファー。建築を学んだ後、バリの竹建築教育機関「Bamboo U」を経て、現在はスンバ島を拠点に「Sumba Safari」を運営。サーフィン、文化、そしてローカルとのつながりを通して、この島ならではの魅力を届けている。

あなたのことについて教えて

生まれ育ったのは南オーストラリア、アデレードの西の外れにあるグレンジという小さな町。サーフィンに出合ったのは12歳、ハワイのノースショアへ家族旅行に行ったとき。そこでパイプラインを目の前で見て、その瞬間にこのスポーツに恋をした。その旅では実際にサーフィンはしなかったけど、ただただ「サーフィンって世界で一番かっこいいスポーツだ」と、強烈に思ったのを覚えている。
その年のクリスマスに、小さなソフトトップのサーフボードをもらった。サーフショップのものじゃなくて、アウトドア用品店で買ったような代物。決して良いボードではなかった。でも、それがすべての始まりだった。水泳やライフセービングを通して少しずつ水に慣れていって、気づけばサーフィンが人生の選択の中心にあるようになっていた。
高校では、交換留学生として1年間、熊本で過ごした経験もある。日本の文化にも、人にも、食べ物にも、何もかもすっかり魅了された。今でも日本語は理解できるし、あの1年は、サーフィンとはまた違う形で、自分の世界を広げてくれた時間だった。
大学卒業後、モルディブのヨットでサーフガイドの仕事をした。1日6時間以上海に入る生活で、当時はそれが世界で一番いい仕事だと思っていた。
その後、大学で学んだ建築の分野に戻りたいと思うようになり、サステナブルなデザインと、実践的な竹建築のワークショップを通じて、世界中のクリエイター、デザイナー、建築家がつながる教育機関「Bamboo U」で働いた。2017年、バリに移住して2年間過ごし、平日は働き、空いた時間はサーフィンに費やした。2019年までバリでBamboo Uの仕事を続けていたけれど、パンデミックの影響で一度オーストラリアに帰り、半年ほどロックダウンの中で過ごすことになった。それでもインドネシアに戻りたいという気持ちはずっとあった。

スンバとの出合い

バリにいた頃、駐在している人たちの間でスンバの噂をよく耳にしていた。バリから飛行機で1時間の東にある島。だんだん興味が湧いてきて、コロナの間もずっと調べ続けていた。スンバの文化、波、景色。島の宗教はキリスト教が中心だけど、地元のマラプという信仰と結びついていて、それがとても興味深かった。いつか必ずここに行くと、なんとなく確信していた。
実際にスンバを訪れたのは今から4年前で、10日間の滞在だった。そのときは母の60歳のお祝い旅行で、家族と一緒だったため、あまりサーフィンはできなかった。同じ年、今度は一人で訪れたが、このときはサーフィンだけに集中した。どんな波があるのかリサーチし、島への想いは一層深くなっていった。
2023年7月、自分の30歳の誕生日をスンバで祝うことにした。今までの人生に関わってくれた人たちに、誰彼構わず声をかけた。それくらいスンバへの想いが強かったし、実際に来てもらえれば、みんなも同じように感じてくれると確信していたから。結果的に、30人が集まってくれた。
誕生日の前に、1ヶ月間、はっきりとした意図を持ってこの島で過ごした時期がある。この頃には、それが自分の求めている暮らし方だとわかっていた。家を建てるか、ビジネスを始めるか。どちらにしても、ただの外国人としてではなく、この場所にちゃんと根を張り、地域社会に還元できる存在になりたかった。そのためには時間を積み重ねるしかなかった。週に一度顔を出す程度では意味がない。何度もローカルと会話をし、儀式に誘われたら参加し、少しずつ、お互いの信頼が生まれていく。正直、「もう無理かもしれない」と思った瞬間も何度もあった。土地を探そうとして失敗した人、揉め事になった人、アクセスのない土地を売りつけられた人、そんな話をたくさん聞いた。同じ目に遭いたくないから、慎重に、きちんと手続きを踏む。公証人を見つけて証明書が本物かどうか確認し、土地の測量も行うなど、全部に時間がかかった。それでも、これが自分の望む人生だとわかっていたから、やり続けられた。

Sumba Safariを始めたきっかけ

この島に何度も通ううちに、あるパターンに気づくようになった。せっかくスンバまで来た旅行者たちが、まるで迷子のように、どこに泊まればいいのか、どこで食べればいいのか、どの道を進めばいいのかもわからず途方に暮れていた。旅の段取りを考えるだけで半日が過ぎてしまい、それが本来の体験を奪っている。
同じ質問を何度も受けるうちに、ここには本当にニーズがあると気づいた。スンバに来たいけど、アクセスの方法がわからない人たち。もちろん、道中で宿を探しながら旅を楽しむ、いわゆるノマド的な旅行者もいる。でも、誰もがそんな旅ができるわけじゃなく、快適さを求める人だっている。そこにギャップがあった。自分自身、旅程を組み立てる作業が好きだったというのも大きいかもしれない。
最初のきっかけは、まさに自分の30歳の誕生日旅行。空港からの送迎、アクティビティの手配、サーファーの友人たちにどのブレイクをいつ狙うか、村での英語教室、地元の女性たちとの機織り体験、文化ツアー、船でしか行けないブレイクへの送迎。すべてを自分で組んでみて、実際にどれだけの労力がいるのかを学んだ。
ここで届けたいのは、贅沢な体験ではない。それはスンバじゃないから。見るだけじゃなくて、感じてほしい。文化も、言葉も、食べ物も、それがここで提供したいものだと思っていた。一人旅で来る人にも、安全に、ちゃんと体験してもらえる形を作りたかった。それがSumba Safariの一番の目的。

スンバで生きるということ

この島で一番心に残っている出来事のひとつが、The Holeという波のこと。一人で、初めてこの波に乗った日。ボートは波の裏側に停めて、波はライトにもレフトにも割れていた。目の前には切り立った崖、その手前には浅いリーフ。とてもパワフルで、つながればロングライドできるパーフェクトな波だけど、テイクオフをミスすると、次から次へ来るセットに押されて、崖の方へどんどん流されていく。
最初の波でいきなりチューブに入ることができ、「この波、最高だ!」と感動した。少し自信過剰になっていたときに次のセットが来て、もっと深い位置からチューブを狙おうと思ってテイクオフした瞬間、パーリングした。ボードが横を向き、レールが思い切り鎖骨にあたった。危険なワイプアウト。息が整わないうちに、後ろに控えた2〜3本の波をなんとかダックダイブでやり過ごした。船長が気づくまで20分かかり、ようやく陸に戻ることができた。
あの日は結局1本しか乗れなかったけど、いい教訓になった。一人であのポイントに行き、何も起きないと思っていた自分は、少し浅はかだった。スンバに来るなら慎重さが必要だ。一番近い病院まで40分、深刻な状態ならバリに行くしかない。
この島にはカフェもコーヒーショップもない。サーフショップすらなく、ワックスも手に入らない。先週、友人に「何か必要なものある?」と聞かれて、答えたのが白いタオルとワックス3個だった。それくらい、何もない。でも正直、今のままの状態であってほしいと願う自分もいる。
スンバを3つの言葉で表すなら、手つかず、文化、そして純粋さ。火山がなくて、島全体が石灰岩でできていて、水は驚くほど透明。ドローンで撮った映像を見ると、まるでモルディブのように見える。
30歳の誕生日の翌日には、忘れられない出来事があった。村の葬儀に誘われて、会場に着くと5メートルおきくらいに17頭の水牛が家や木につながれていた。墓石で囲まれた砂地の広場で、次々と水牛が捧げられていく。友人の中には目を背ける人もいたけど、自分はこの島に暮らしたいと思っていたから、最後まで見届けることにした。
深夜2時、ようやくすべての儀式が終わった。地元の人たちはそのまま夜通しで牛を解体し、参加した人に肉を持たせてくれる。水牛はこの地域では富と地位の象徴。マラプの信仰では、儀式で動物を捧げることで、亡くなった人があの世で心地よく過ごせると考えられている。捧げる動物が多いほど、その人の来世での地位も高くなる。だからそれは犠牲ではなく、大切な人へ最善を尽くすという、シンプルな愛情の形なのだ。
3週間前、僕は名づけの儀式を受けた。土地の持ち主の家族に正式に迎え入れられる儀式で、今ではその人の弟という立場になった。彼は僕を「ケイン」ではなく、「アマル」という現地の名前で呼んでいる。その儀式の一環として、豚を生贄に捧げることが求められた。外国人だから断ることもできたけど、地域での本当の信頼を得るためにやると決めた。今まで一度も動物を殺したことがなかったから、直前まで本当に緊張していたが、60人ほどのローカルに見守られて無事儀式を終えることができた。

あなたの生活に欠かせない3つのもの

サーフィン、旅(ただの旅行じゃなくて、観光地化されていない場所への旅)、そして家族。血のつながった家族はもちろんだけど、この島で出会った家族も含めて。

これから何か新しいことを始めたい人へのアドバイス

直感を信じること。これは本当に大事だと思う。ちゃんと調べて、そして思い切ってすべてを懸ける。怖さと楽しさは、いつも同じくらいの大きさで存在している。心地良い場所に留まることもできるけど、それで将来満足できるかというと、多分できない。
「リスクを取らなければ、得るものもない」という言葉があるけど、大事なのはそのリスクに根拠があるかどうか。まずは自分の気持ちを確かめることから始めるべきだと思う。どんな暮らしをしたいのか、何が自分を喜ばせるのか。それが1年後だけじゃなく、5年後も10年後も、変わらずそうであり続けられるかどうか。
この場所がこれから栄えていくことは、直感だけじゃなく、実際に調べてわかっている。出会う人たちの層、ここに流れ込んでいる投資、SNSでの広がり方。インドネシア政府も、スンバを観光地として発展させる計画をどんどん進めている。これは直感じゃなくて、ちゃんと調べた上での判断。
全部を懸けたことで、犠牲にしたものもたくさんある。家族と過ごす時間、恋愛、誰にでも合う生き方じゃないというのはわかっている。だからこそ、それなりの犠牲を払ってきた。簡単なことなんて何もない。自分のために何かを選び、人生を変えようとすることは、決して簡単なことじゃない。
でも、モチベーションをくれる人、インスピレーションをくれる人たちに囲まれていると、それだけで少し楽になる。支えは環境かもしれないし、パートナーかもしれないし、友人のグループかもしれない。週に一度、家族に電話するだけでもいい。そんな小さなつながりが、挑戦を続けるための支えになってくれる。

今後の夢と目標

これからの数年で目指しているのは、Safariのための拠点を作ること。体験そのものをもっと洗練させて、プロフェッショナルなチームを作り上げたい。豪華な部屋も、エアコンも、専用バスルームも必要ない。もっとみんなで一緒に過ごせるような、共同体的な空間を作りたい。ツアーは少人数、6人までと決めていて、ラインナップを混雑させたくないし、この島の「手つかず」という感覚をできる限り守りたいから。
夜になったら、みんなで焚き火を囲んで、その日あった出来事を話す。それがスンバらしさだと思う。オフロードで、荒々しくて、冒険的で。ずっと記憶に残るような時間。僕はこれを「サーフィンへのノマド的な原点回帰」と呼んでいる。サーフィンが世界中に広がりすぎる前、サーファーたちが本来持っていた感覚。それがスンバにはある。

Ocean People Archive

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

Filed Under: LIFESTYLE 関連タグ:Kane Macartney, Ocean People, Sumba Safari, ケイン・マッカートニー, スンバ, ビーチライフ, 連載

海を感じて暮らす贅沢。葉山に誕生した、Ron Hermanのリゾートレジデンス「JOYLUXE 葉山 SUITES & RESORT」

2026.8.17. by 林芳史

海とともにある、心地よい暮らしのかたち

朝、窓を開けると潮の香りを含んだ風が吹き抜ける。海へ出かけた後は、ゆっくりとコーヒーを飲みながらテラスで過ごす。夕暮れには水平線に沈む太陽を眺め、大切な人と語らう……。海の近くで暮らすことの魅力は、景色だけではない。自然と寄り添い、時間そのものを豊かに楽しむことにある。そんな海辺のライフスタイルを、一棟の住まいとして表現したブランデッドハウス「JOYLUXE 葉山 SUITES & RESORT」が、神奈川県・葉山に誕生した。

Ron Hermanが描く、海辺のラグジュアリー

JOYLUXEシリーズの第4弾となる「JOYLUXE 葉山 SUITES&RESORT」は、カリフォルニア発のスペシャリティストア「Ron Herman」がトータルプロデュースする。
1976年、ロサンゼルス・ハリウッドのメルローズアベニューからスタートしたRon Hermanは、ファッションを通して「心地よく、自分らしくいられる時間」を提案してきたブランド。上質でありながら肩肘張らないスタイル。自由でリラックスした空気感。そして、人生を楽しむための豊かな価値観。今回の住まいにも、そんなRon Hermanが大切にしてきた世界観が息づいている。創業の地であるカリフォルニアと同じく、海を感じながらゆったりとした時間を楽しめる場所として選ばれたのが葉山だった。

葉山という特別な場所で過ごす時間

延べ床面積約163坪の邸宅は、ロンハーマンが提案する「California Style」を背景に、シンプルなデザイン、特別な素材、ユニークなディテールによって構成されている。デザイン監修を手掛けたのは、人々の暮らしや社会をデザインする三井デザインテック。施工は日本を代表するハウスメーカー、積水ハウスが担当した。
空間の主役となるのは、石目や木目、塗り壁など自然素材の風合い。時間の経過とともに味わいを増していく素材を取り入れ、海や緑と調和する、余白のある美しい空間を創り上げている。

コンセプトは、
「海と緑を五感で身近に感じられること」
「本物の素材感と人の手による価値を楽しめること」
「時間とともに変化する風合いを楽しめること」
「くつろげる親密な空間で創造的な生活を送ること」
海辺で過ごす時間を、より豊かにするための4つの思想が、この邸宅には込められている。

ゲストを迎える1階、海を感じる2階、空とつながる3階

1階は、大切なゲストを迎えるためのおもてなしのフロア。2つの大型ガレージに加え、広々としたロビー、バーコーナー、トレーニングルームを備える。また、サウナや水風呂、バスコートも設けられ、心身を解放するリラクゼーションスペースとして設計されている。

1st Floor

2階は、海を五感で感じながら過ごすゲストフロア。吹き抜けのある約90㎡のリビングダイニングは、圧倒的な開放感を演出。オーシャンビューを楽しめるゲストルームも備え、家族や仲間と特別な時間を共有できる空間となっている。

2nd Floor

そして3階は、オーナーだけのプライベートフロア。海と空を望むリビングダイニングキッチンや主寝室を備え、自分らしく心地よい時間を過ごせる場所に。さらに屋上へ続く螺旋階段の先には、海と空を全身で感じられるルーフテラスが広がる。BBQを楽しんだり、仲間と語り合ったり。葉山ならではの贅沢な時間を自由に描くことができる。

3rd Floor

住まいではなく、人生を豊かにする場所へ

「自分らしく心地よくいられることこそが、真のラグジュアリー」Ron Hermanが掲げるこの価値観は、「JOYLUXE 葉山 SUITES & RESORT」にも通じている。海を眺めること。自然を感じること。大切な人と過ごすこと。何気ない一瞬一瞬を、かけがえのない時間へ変えてくれる場所。葉山の海辺に誕生したこの邸宅は、新しい時代のラグジュアリーなビーチライフを象徴する一邸となりそうだ。

Wall Water Feature
Training Room
Bathroom
Sauna
Roofterrace

【Information】
建物名:JOYLUXE 葉山 SUITES & RESORT
所在地:神奈川県三浦郡葉山町堀内162-1
交 通:京浜急行線「逗子・葉山」駅 バス乗車6分 「葉山マリーナ」バス停 徒歩1分
土地面積(実測):349.63㎡(約105.76坪)
建物面積:539.62㎡(約163.23坪) ※ガレージ面積78.35㎡、EV面積6.97㎡含む
間取り:4LLDDKK+Lobby & Bar Corner+Training Room+Sauna
構造・階数:重量鉄骨造3階建

【問い合わせ先】
大藤不動産グループ 公式サイト

Filed Under: NEWS 関連タグ:JOYLUXE 葉山 SUITES & RESORT, PR, Ron Herman, ロンハーマン

【特集:Ocean People】海から始まるストーリー/37_ベン・ルース

2026.7.29. by 林芳史

海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Ben Roose ベン・ルース
ベルギー生まれ。24歳でインドネシアを訪れたことをきっかけにサーフィンと出合い、人生が大きく変わる。その後、父との別れや事業の失敗など人生のどん底を経験するも、メンタワイ諸島へ移住。ジャングルを自ら切り拓き、手づくりでサーフキャンプ「Driftwood」を築き上げた。

あなたのことについて教えて

生まれ育ちはベルギー。自然はそれほど多くなく、海岸線もほんのわずかしかない国。サーフィンはできるけれど、水は驚くほど冷たい。もともとはスノーボードばかりしていて、世界中の冬を追いかけるように旅をしていた。24歳の頃、友人に「インドネシアへ行こう」と誘われて、軽い気持ちでサーフィンを始めてみた。ところが、一度波に乗ったら完全に夢中になってしまい、気づけばスノーボードよりサーフィンをしている時間のほうがずっと長くなっていた。
決して早いスタートではなかったけれど、人生を変えるには十分だったと思う。海に入ると、自然との距離がぐっと近くなる。サーフィンのおかげで出会えた人も、経験も、そのすべてが今の僕をつくってくれたと思う。

メンタワイとの出合い

インドネシアへ来る数年前、スイスの山で小さなフードトラックを始めた。仕事は楽しかった。でも心のどこかでは、「もっと違う人生があるはずだ」と感じていた。二度目にインドネシアを訪れたとき、いろいろな島を巡りながら、「いつか自分の居場所をつくりたい」とぼんやり考えるようになっていた。ただ、その頃は夢を実現できるようなお金なんてなかった。
そんなとき、友人から「メンタワイへ行ってみたら?」と勧められた。正直、それまでメンタワイ諸島のことはほとんど知らなかった。でも、たった5日間滞在しただけで心を奪われてしまった。道路もない、電気もほとんどない。あるのは、手つかずの自然だけ。西洋社会の慌ただしさの中で生きてきた僕にとって、その場所はまるで時間が止まったような世界だった。
そこで出会ったのが、エルサという女性だ。彼女は長年この地域でローカルマネージャーを務めながら、小さなホームステイを営んでいた。僕は彼女に、「お金を貯めて必ず戻ってくる。一緒に何かをつくろう」と伝え、メンタワイをあとにした。

人生のどん底とメンタワイ

今振り返ると、あの頃は人生でいちばん苦しい時期だった。父を自殺で亡くし、ビジネスにも失敗して、本当にどん底だった。そんな壊れかけた状態で、僕はメンタワイを訪れた。その後、ノルウェーでフードトラック事業をもう一度始めようとしたけれど、待っていたのは寒さと孤独、そして失敗の連続だった。ようやく営業できる場所を見つけたと思ったら、除雪車にトラックをぶつけられてしまった。それまで持っていたお金も時間も、すべてをつぎ込んでいたから、本当に何も残らなかった。そのとき思ったんだ。「もういい。持っているものを全部売って、メンタワイへ移住しよう」と。
もちろん怖かった。でも、不思議とそれ以上にワクワクしていた。そして2019年2月、僕は一人でメンタワイへ戻った。

Driftwoodの始まり

島に到着し、すぐにエルサと再会した。彼女は本当に働き者で、頭の回転も速い。二人で「とりあえず何かやってみよう」と話しながら、少しずつ計画を立て始めた。最初に6000ユーロでボートを2隻購入した。あれが人生でいちばん大きな買い物だったかもしれない。当初予定していた土地は使えなくなってしまったけれど、別の家族が所有する美しい土地を紹介してもらえた。そこにはヤシの木が生い茂り、目の前には完璧なレフトブレイクがあった。
以前、同じ夢を抱いていた誰かが建設を始めたものの、途中で放棄した場所だったらしい。ジャングルの中には、バンガローやヨガシャラの基礎だけが残り、すべてが緑に飲み込まれていた。その景色を目の前にした瞬間、「ここが自分の未来になるかもしれない」と感じた。

作ることは、生きることだった

正直なところ、「サーフリゾートをつくろう」なんて大それたことを考えていたわけじゃなかった。毎日、目の前にある問題をひとつずつ解決していくだけだった。
今日はココナッツを探そう。
今日は流木を集めよう。
今日は何とか小道をつくろう。
そんな毎日の繰り返しだった。
仕事というより、子どもの頃の遊びに近かったのかもしれない。気がつけば、人生で初めて、もう一度"遊べる"自分になっていた。
メンタワイでは、それまでのように何かから逃げ続けることはできない。島では日常から切り離され、サーフィン以外にできることもあまりない。建設作業の合間には毎日のように波に乗り、自然の中で過ごしていると、それまで心の奥に押し込めていた悲しみや苦しみが、少しずつ溶けていくのを感じた。メンタワイは、僕が抱えていた痛みを静かに受け止め、癒やしてくれた場所だった。

自然と共に生きるということ

メンタワイの人たちは、自然と完全に共存して暮らしている。家はサンゴや木材で作られていて、柱にはマングローブの木を使う。木は一度海水に浸けてから樹皮を剥がすことで、美しい柱へと生まれ変わる。彼らにとって自然は「資源」ではない。「共に生きる存在」なのだ。
メンタワイへ来て3〜4カ月が経った頃、ようやく宿らしい形が見えてきた。下に2部屋、上に1部屋。本当にシンプルな建物だった。あの頃は何ヶ月も島を離れられず、髭も伸び放題。まるで映画『キャスト・アウェイ』のトム・ハンクスみたいな姿になっていた。その頃には、資金もほとんど底をついていた。持っていたお金はすべてボートと建設費に消え、この宿が成功する保証なんてどこにもなかった。
「どうやってお客さんに来てもらえばいいんだろう」そんなことばかり考えながら、ある日バリへ向かった。夕暮れどき、チャングー近くのビーチを歩いていると、ポケットの中で携帯電話が震えた。メールを開くと、そこには予約の知らせが届いていた。
「最初のお客さんが来る」その文字を見た瞬間、自分でも信じられなかった。そこから、少しずつ宿は動き始めた。当時の自分は、宿の経営なんて何も分かっていなかった。部屋はシンプル、食事もシンプル。電気が使えるのは、夜に発電機を回している時間だけ。もちろんWi-Fiもない。毎日のように失敗ばかりしていた。それでも不思議なことに、少しずつ前へ進んでいった。
エルサは親族をスタッフとして迎え入れ、その頃から一緒に働き始めたメンバーは、今でも変わらずここにいる。みんなで手探りでお客さんを迎え、ボートを出し、試行錯誤を繰り返す。毎日が本当に楽しかった。そして8ヶ月ほどが過ぎ、「これからだ」と思ったタイミングで、世界はパンデミックに飲み込まれた。でも今になって振り返ると、それも悪いことばかりではなかったのかもしれない。僕たちは一度も宿を閉めなかったし、スタッフを解雇することもなかった。みんなの仕事を守りながら、その間も少しずつ建設を続けていった。

今では世界中のサーファーが知っている「Driftwood」。ここまで広がった理由は何だと思う?

最初は口コミで少しずつお客さんが来てくれて、あとはウェブサイトで広告を出していたくらいだった。でも、一番大きな転機になったのはコロナ禍だった。当時、Instagramのフォロワーは700〜800人ほど。そこで「サーフトリップが当たるプレゼント企画」を投稿した。今では珍しくない企画だけれど、当時はまだほとんど誰もやっていなかった。それに、タイミングも完璧だった。世界中がロックダウンしていて、誰もサーフィンへ行けない時期だったから、その投稿は一気に拡散された。
人生で初めて、「バズる」という経験をした。夜に投稿して眠り、翌朝起きたら通知が止まらなくなっていたんだ。あとで聞いた話だけれど、当時パタゴニアで働いていた友人が、「あの投稿について社内でミーティングまでしていたよ」と教えてくれた(笑)。
「どうしてこんなに伸びたんだろう。このマーケティングは面白いね」って話題になっていたらしい。でも僕からすれば、自分の部屋でいつも通り投稿しただけだった。もちろん、フォロワーが増えたからといって、急に予約でいっぱいになったわけではない。でも、あの出来事をきっかけに、自分たちは「メンタワイという場所の魅力を伝える発信者」になれた気がしている。
正直、この場所は大きなお金を生むビジネスではない。運営コストもとても高い。だから利益を追い求めるというより、稼いだお金のほとんどを宿やスタッフ、そして島へ還元してきた。そのほうが、この場所はもっと面白くなると思っているから。

Driftwoodの今後

ようやく、Driftwoodはすべてが安定してきた。素晴らしいスタッフがいて、信頼できるパートナーがいて、無理なく回るようになった。だから、これ以上大きくしたいとは思っていない。他のリゾートのように20人、30人、40人と泊まれる場所にするつもりはない。これからも12人くらいの、小さな宿であり続けたいと思っている。その代わり、「もっと人数を増やそう」ではなく、「もっと体験を豊かにしよう」という方向へ進んでいきたい。
例えばジェットスキーを導入したり、スピアフィッシングへ出かけたり、スタッフと一緒にBBQをしたり、近くの島へ遊びに行ったり。そういう時間こそ、人の心に深く残るものだと思う。もちろん、素晴らしい波は忘れられない。でも、本当に記憶に残るのは、現地の人たちと笑いながら魚を焼いた夜だったり、みんなで何気なく過ごした時間だったりするんじゃないかな。
だから僕たちは、ただサーフィンをする場所ではなく、メンタワイの文化や暮らし、人とのつながりまで体験できる場所でありたいと思っている。

メンタワイで学んだ「豊かさ」の意味

ある日、海がもう少し見えるようにしたくて、ヤシの木の枝を少し切ったことがあった。すると、その木の持ち主が本気で怒った。最初は、なぜそこまで怒るのか理解できなかった。でも、あとになってようやく分かった。彼にとってその木は、単なる所有物ではなく、家族のような存在だったんだ。本当に申し訳なくて、サーフボードを渡して謝ろうとしたくらいだった。みんなで集まり、何度も話し合いを重ねた。
メンタワイには昔から受け継がれてきたルールがある。夫婦のこと、土地のこと、家のこと。そして自然との向き合い方にも、この島ならではの決まりがある。木もまた、一つの命として大切にされている。その価値観に触れたとき、自分たちがどれほど自然から離れた暮らしをしてきたのかを思い知らされた。
コロナ禍には、ボートのエンジンが故障して、真っ暗な海を何時間も漂流したこともある。ようやく陸へたどり着き、その日は現地の家族の家に泊めてもらった。その夜、エルサがぽつりとこう言った。
「いつかヨーロッパへ行って、雪を見てみたいの。それがずっと夢なのよ」
その言葉を聞いた瞬間、ハッとした。世界中の人たちは、何十万円もかけてメンタワイへやって来る。誰かにとっては、一生に一度は訪れたいサーフィンの聖地。でも、その土地に暮らす人たちは、外の世界に憧れている。人はみんな、自分が持っていないものを求める。だけど、本当に多くの人が人生をかけて探している豊かさは、実は彼らが当たり前のように持っているものなのかもしれない。ここへ来る人たちは、仕事も悩みも、すべて置いてくる。ただ波に乗って、ただ遊んで、ただ自然の中で過ごす。お店もない。ショッピングモールもない。レストランもほとんどない。だからこそ、人生で初めて「何もしない時間」を過ごせる。自然には、人を"今、この瞬間"へと連れ戻してくれる力があるのだと思う。

あなたが夢中になれるもの、心がときめく3つの瞬間

1つ目は、コミュニティ。どんなにつらい状況でも、大切な仲間がいれば、人は乗り越えていける。
2つ目は、自然とのつながり。自然の中にいると、自分もその一部なんだと実感できる。
そして3つ目は、健康。身体だけではなく、心も健康であること。この3つがそろったとき、人は本当の意味で幸せになれるんじゃないかな。

これからの夢

Driftwoodは、僕にとってお金を稼ぐためのビジネスではなかった。安心して生きられる場所をつくり、自由を手に入れるための土台だった。ようやくその土台ができた今、一つの章が終わろうとしているような気がしている。だから次の人生では、もっとクリエイティブなことをやってみたい。
音楽をつくることかもしれない。人に新しい体験を届けることかもしれない。生まれたときよりも、世界をほんの少しだけ良くして去っていけたら、それだけで十分だと思っている。

新しいことに挑戦したい人へ

失敗することよりも、何もしないまま人生を終えることのほうが、僕はずっと怖い。それは、ずっと変わらない信念だ。失敗してもいい、何度どん底を経験してもいい。挑戦した結果が成功でも失敗でも、その経験は必ず人生の財産になる。
僕たちは、おそらく一度しか人生を生きられない。だからこそ、怖くても飛び込んでみる価値がある。いつか振り返ったとき、「あの挑戦をしてよかった」と思える人生のほうが、きっと素敵だから。

Ocean People Archive

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram

Filed Under: LIFESTYLE 関連タグ:Ben Roose, Driftwood, Ocean People, ビーチライフ, ベン・ルース, メンタワイ, 連載

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