海と繋がり、自分の中の好きや小さなときめき、そしていい波を追い求めてクリエイティブに生きる世界中の人々、“Ocean People”を紹介する連載企画。彼らの人生を変えた1本の波、旅先での偶然な出会い、ライフストーリーをお届けします。

Profile
Stephanie Baird ステファニー・バード
オーストリア出身のフォトグラファー。水中写真に魅了され、以来、ジンベエザメやマンタ、サーファーたちを海中で撮り続けている。現在はハワイとインドネシアを拠点に、サーフィンと写真を軸としながら、女性向けのサーフリトリートも主催している。
あなたのことについて教えて
オーストリアで生まれ、スペイン、ドイツ、アメリカなど、小さい頃からいろいろな国で暮らしてきた。18歳の頃にロンドンへ行き、もともとは演技を勉強するつもりだったけど、フォトグラフィーを学ぶようになって、ファッションやトラディショナルな写真を撮るようになった。それから5年ほどロンドンで過ごし、その後オーストラリアへ。オーストラリアでは西海岸を旅し、パースからさらに北にあるコーラルベイという小さな町にたどり着いた。ニンガルーリーフの近くにある場所で、そこで私はすっかりマリンライフ、そして海が近くにある生活に恋をした。
オーストラリアではボートで働きながら、ジンベエザメやマンタ、タイガーシャークなどの水中写真を撮るようになった。その後、東南アジアを6カ月ほど旅して、再びオーストラリアへ戻り、ビザが切れたタイミングでハワイへ移住。そこで本格的にサーフィンを始めたの。
今はハワイとインドネシアを拠点に、サーフィンと写真を軸としながら、女の子たちのサーフリトリートを運営している。リトリートを始めたのは2年半くらい前。インドネシアのメンタワイでガールズサーファーたちと出会って、当時は今ほど女の子が多くなかったから、海で女の子を見かけるだけで「女の子たちだけでこんなところに来てるの、最高じゃない?」って話していた。そこから始まって、今は初心者向けのリトリートを開催している。これからは初心者向けだけじゃなく、もう少しレベルの高い女の子たちに向けた、プログレッション系のサーフトリップもやっていたいと思っている。
写真、サーフィンを始めたきっかけは?
もともと写真は好きだったけど、本格的に興味を持つようになったのは、オーストラリアのコーラルベイにいた頃。マンタと一緒に泳ぐ女の子たちを水中でアーティスティックに撮って、それを見たときに「これってすごく面白い」と思った。そこから水中写真にどんどん惹かれていった。その後はハワイでウェディングを撮ったり、ブランドの撮影をしたり、いろんな仕事をしてきたけど、水中撮影ほど楽しいものはないと思う。
実は、サーフィンをするようになる前から、海の中でサーファーを撮っていた。特にハワイ・ノースショアにいた頃は、サーフィンのカルチャーの中に入りたかった。でも、そこにはフォトグラファーにもある種のヒエラルキーがあって、誰でも簡単にその輪の中に入れるわけではなかった。だから、自分で海に泳いで出て、撮影するように。頻繁に通って撮り続けているうちに、少しずつその世界に入らせてもらえるようになった。
初めて行ったときは友達に連れて行ってもらって、どうやって入って、どうやって出るのかを一から教えてもらった。その1年後、今度は一人で泳いで出た。その日はかなり大きくて、ダブルオーバーヘッドくらい。パイプラインで写真を撮る女性は多くないから、「一人でここまで来たんだ」と思えて、パイプラインは私の中で特別な場所になった。それからビッグウェーブサーファーたちと仲良くなって、ジェットスキーから撮影するようにもなった。波を追いながら、後ろを振り返ったらトリプルオーバーヘッドの波が来ていて、それを見た瞬間「やばい!」って思ったけど、そこから来るアドレナリンは言葉では説明できないわ。
サーフィン中も似たようなことが起きる。自分のレベルより少し上のサイズの波になると、全神経を使って目の前のセット、波、状況に集中しなきゃいけない。日常で起こっていることや、仕事のこと、人生のことなんて考える暇がないほど、「今、ここにいること」が求められる。だから私は、少しチャレンジングなサイズや、簡単じゃないスポットが好きなんだと思う。







海、自然との関係を言葉で表すなら
海のそばにいないと、ちょっとおかしくなる。それくらい私にとって欠かせないもの。最近よく考えるんだけど、海に行けない日って、一日何をして過ごしているんだろうって。もちろん他にもやることはあるんだけど、外にいること、自然の中にいること自体が、私にとってすごく大切なんだと思う。もちろん「サーフィンが私そのもの」とは言いたくない。自分の幸せを全部サーフィンに依存したくないから。でも、サーフィンができない期間があると、100%自分らしくない感じがする。だから、海に入ることと、身体を動かすこと、外にいること。その全部が、自分を自分に戻してくれるんだと思う。
サーフィンは、フィジカルだけじゃなく考え方にも影響している。特にリトリートでは、サーフィンを始めたばかりの人たちに、マインドセットについてよく話をする。サーフィンって、実は“サーフィン”だけじゃないんだってこと。波に乗ること自体は10%くらいで、残りの90%は波を読むことだったり、水の動きを理解することだったり、人との関係だったり、自分自身との向き合い方だったりする。
サーフィンは、自分がどういうふうに自分に話しかけているかを、そのまま映し出してくれる。結局、人生もサーフィンも、「全部わかっている必要はない。次の一歩に必要なことだけ知っていればいい」んだと思う。



今後の夢や目標
今運営しているサーフリトリートを成長させたい。コミュニティ、サーフィンの上達、自分に合ったレベルのガールズサーファーをつなげることにフォーカスして、世界各国のサーフスポットでトリップを開催できたらいいなと思っている。
そして、パートナーともたくさんサーフトリップに行きたい。まだ行ったことのない場所で、できるだけたくさんサーフィンしたい。特に、アイスランドは行ってみたい国の一つ。寒い場所でサーフィンすることに挑戦してみたくて、昔『Under an Arctic Sky』を観たとき、その世界観に惹かれた。真冬のアイスランドの人里離れた場所へ、完璧な波を求めて旅するサーファーたちのドキュメンタリー。数日経った頃、数十年に一度ともいわれる猛烈な嵐が襲来し、彼らの旅は命を懸けたサバイバルへと変わっていくんだけど、いつかあの世界に行って、自分の目でその景色を見るのが夢になった。

あなたの生活に欠かせない3つのもの
1つ目はもちろん、サーフィン。それから、成長すること。私は成長することに、ちょっと中毒なんだと思う。いつも何か新しいことを学んだり、自分が成長できる何かが必要。一番つらいのは、停滞すること。快適だからという理由だけで、同じ場所にずっといること。それから、自然。外にいる時間が何よりも必要。
これから何か新しいことを始めたい人へのアドバイス
ためらわず、まずはやってみること。自分の心に従って、自分を幸せにしてくれるもの、ワクワクするものを見つけてほしい。怖さを感じる瞬間を恐れないでほしい。サーフィンを通して学んだのは、怖いと感じることは、「危険だからやめろ」というサインとは限らないということ。むしろ、「自分は今、生きている」と感じる瞬間でもある。だから不安を感じたら、「怖い」ではなく、「自分は今、生きている」と考えるようにしている。もちろん、無謀になれということではないけれど、恐怖だけを理由に、自分の人生を小さくしてほしくない。
人は、安心できる場所に留まろうとするもの。でも、成長するのはいつも、少しだけ居心地の悪い場所に出たとき。だから、ワクワクするけど、ちょっと怖い。そんなものを追いかけてみてほしい。

text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram









































