#Queen Classic Surf Fest

  • 高校2年生のロングボーダー間瀬侑良夏が夢の舞台「Queen Classic Surf Fest」に参戦。自身で綴ったイベントの記憶_Vol.3
  • 2024.11.03

フランス・ビアリッツ出身のカリスマロングボーダー、マーゴ・アハモン・テュコと妹のエメ、マーゴの幼馴染のアマヤの3人が2021年に立ち上げた、女性だけのサーフコンテスト「Queen Classic Surf Fest(以下、QCSF)。世界中のスタイルのある女性サーファーを招集し、ミュージック、アート、スケート、サーフィンを通じて、女性サーファーの地位向上、LGBTQ+、フェミニスト、環境問題などを発信するイベント。市の後援やVANSが冠スポンサーとなり、夏のビアリッツの一大イベントへと成長した。このコンテストに日本から唯一、高校2年生のアマチュアロングボーダー間瀬侑良夏(ませゆらな)がクレジットされた。憧れのロングボーダーが集う夢の世界。いつかは出場したいと思い続けていたある日、それは現実なものになった……。この特集は、夢の切符を手に入れた間瀬侑良夏が綴ったイベントの記憶。第3回目の今回は、いよいよコンテストがスタート。チーム戦での戦いとなったが、果たしてその結果はいかに!?


ついにコンテストの朝を迎えた。
選手集合時間の7時はまだ夜明け前のビアリッツ。街頭に照らされた寒い街を会場まで歩く。ステージ裏で温かい紅茶とクロワッサンを受け取り、昨夜会えなかった選手たちと挨拶を交わす。昨年「MexiLogFest」のコンテスト中に流してしまったボード(ノーリーシュがルール!)を泳いで取りに行ってくれたマリー・ショシェとの再会。HOTDOGGERに掲載された記事はマリーが書いたもので、ビアリッツと私を繋いでくれた恩人。イタリアからクレジットされた最年少のジンジャー・カイミにエルサルバドルでの勇姿を称え、可憐で美しいサーフスタイルに魅了され続けている憧れのサーファー、マリーナ・カーボネルとハグをする。信じられない! さらに、選手全員にバッグやサングラス、キャップ、G-SHOCKなど協賛メーカーのグッズが手渡された。昨夜からの興奮続きで胸が熱くなった頃、ビーチにエリアフラッグが立てられた。いよいよコンテストが始まる。

QCSFの掲げる「インクルーシビティ(包括性)」のもと、ロング、ショートのトップサーファーと一緒に4人1組のチームが編成された。私は光栄なことにVANSライダーのリーアン・カレン、2022年「Joel Tudor Duct Tape」優勝者のアンブル・ヴィクトワーレ、オランダのプロサーファー、ニエンケ・デュインマイヤーと同じチームに!

右から_ニエンケ・デュインマイヤー、私、アンブル・ヴィクトワーレ、リーアン・カレン

各チームから2人ずつクレジットされ、8人の30分ヒートがスタートした。ここバスク地方出身で現在はオーストラリアを拠点にしているローラ・メイヤーのヒートから始まり、ジンジャーのヒートへと続く。
30分後には私の夢の舞台が幕を開ける。
寒さからか、緊張からなのか分からないが、ワックスを塗る手が震える。そんな私にMCのアンブローズ・マクニールさんが話しかけてくれた。彼は以前オーストラリアでサーフィンをしていたときに海で声をかけてくれた人で、おかげで笑顔を取り戻すことができ、ビブスに袖を通した。深呼吸をして、鼓動に合わせるようにヴィラ・ベルザが見守る海に向かって階段を降りた。水中カメラマンの多さに怯みながらも海面には日差しが届き、少しほっとする。私はリーアンとクレジットされ、さらに大好きなカリーナ・ロズンコと同じヒート! 振り返るとずらりと並んだギャラリーの数に驚く。こんなにも注目されているコンテストに参加しているんだと改めて震える。
カウントダウンが始まった。
ホーンと共にオープニングを飾ったのはリーアンだった。サイズダウンしたログ波なのに、ショートボードで板を走らせる姿がとてもスタイリッシュ。BGMのボリュームが上がり、アレサ・フランクリンの曲に合わせてテイクオフをした後は、もう楽しくて仕方がなかった。

プライオリティやマキシマムはなく、海の中ではどの選手も笑顔で、まるでガールズトークをしているみたいにかわるがわるテイクオフしていく。1本1本の波を丁寧にトリミングしながら乗る姿がとてもキレイ。なかでもカリーナは格別で、彼女にだけ秘密の波が来ているかのように巧みにボードを操り、華麗なクラシックスタイルで魅了する。コンテストだということも忘れて見惚れている私に「パーティウェーブする?」と声をかけてくれた。シェアライドからゆっくり慎重に……手を繋ぐ! ボードに飛び移るのに失敗して2人仲良くワイプアウトしたが最高の瞬間であり、最高の贈り物となった。

個々の最高スコアでカウントされ、チーム合計で順位が決まる。私とリーアン、そして次のヒートだったアンブルとニエンケもラウンドアップした! 太陽が昇るにつれ気温も上がり、ギャラリーもさらに増えた。リパチャージで上がってくる選手を待って、次のヒートが始まる。チーム戦なので、絶対に足を引っ張りたくない! という思いと、グッドライディングができたときのリーアンからの「ナイス!」という声かけに自分でも信じられないほどのエネルギーが溢れた。きっと私史上一番多く波に乗った30分だったと思う。
潮の上げこみで少しサイズが上がったが、その後のヒートは見応えがあった。ローラ・ミニョンホリー・ウォン、カリーナの豪華なVANSチームの競演にギャラリーから歓声が上がり、大人気のサーシャ・ジェーン・ロワーソンがダイナミックに華を添える。サーフィンファンはもちろん、観光客や地元の人など老若男女がコンテストを楽しんでいる雰囲気に、ここに居られることがとても誇らしかった。
満潮を迎えビーチへ下りる階段は封鎖された。ラウンドアップできていれば明日のセミファイナルへと進むことができる。どうかあがっていますように!

海を眺めながら遅めの昼食をとり、会場をまわる。スケートランプでは女の子だけのスケートボードチーム「SKATEHER」による体験スクールや、「FAKE HAIR DON’T CARE」のヘアドネーションができるブース、乳がん予防のための自己検診を呼びかけるブースに目を引かれた。夕方からはスケートコンテストも開催され、各所に置かれたクッションの上で思い思いに過ごしていた。飲食ブースも充実していて、生牡蠣のプレートにワインを楽しむ人、アサイーボウルも美味しそう。緊張から解放されたせいか眠くなってきたので、ホテルに戻ってひと休みすることにした。

18時ではまだ陽が沈む気配のないビアリッツ。潮が引き、海にはたくさんのサーファーがファンウェーブを楽しんでいる。マーゴが入っているのが見えたので急いで着替えて海へ走った。残念ながらマーゴとは入れ違いになり次のお楽しみとなったが、ジャッジのマルタ・ベレングレや何人か選手たちが入っていて、みんなで声をかけ合いながら波をシェアするなど、嬉しいサンセットセッションとなった。

海から上がると生演奏によるカラオケタイムで会場は大盛り上がり! 夕食を受け取りスマホをチェックすると、セミファイナルのヒート表が送られてきていた。願いを込めて名前を確かめる。
「あった!」と叫ぶと同時に、母に抱きついていた。
ブルーモーメントの美しい空に明かりが灯ったヴィラ・ベルザを眺め、密かに夢のリストを更新した。


Vol.4に続く……。


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間瀬 侑良夏(ませ ゆらな)

高校2年生/アマチュアロングボーダー

2007年生まれ、神奈川県川崎市在住。サーフィンとの出合いは11歳。14歳のときにシングルフィン・ロングボードコンテスト「THE ONE」に出場したことをきっかけに本格的に始め、2023年のTHE ONE LW 1st. classで優勝。また同年メキシコのラ・サラディータで開催されたMexiLogFestから招待を受けて参戦。
Instagram:@yurana_mase


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  • 高校2年生のロングボーダー間瀬侑良夏が夢の舞台「Queen Classic Surf Fest」に参戦。自身で綴ったイベントの記憶_Vol.2
  • 2024.10.20

フランス・ビアリッツ出身のカリスマロングボーダー、マーゴ・アハモン・テュコと妹のエメ、マーゴの幼馴染のアマヤの3人が2021年に立ち上げた、女性だけのサーフコンテスト「Queen Classic Surf Fest(以下、QCSF)。世界中のスタイルのある女性サーファーを招集し、ミュージック、アート、スケート、サーフィンを通じて、女性サーファーの地位向上、LGBTQ+、フェミニスト、環境問題などを発信するイベント。市の後援やVANSが冠スポンサーとなり、夏のビアリッツの一大イベントへと成長した。このコンテストに日本から唯一、高校2年生のアマチュアロングボーダー間瀬侑良夏(ませゆらな)がクレジットされた。憧れのロングボーダーが集う夢の世界。いつかは出場したいと思い続けていたある日、それは現実なものになった……。この特集は、夢の切符を手に入れた間瀬侑良夏が綴ったイベントの記憶。第2回目の今回は、コンテスト前夜のレセプションパーティまでの様子お届けします。


周りの人のたくさんの助けによって、無事ビアリッツ滞在がスタートした。私のヒーロー、エルワンさんとランチをする前にコンテスト会場であるコート・デ・バスクをチェックしに行ってみる。白壁に鮮やかな色のコロンバージュ(木組み)の建物がずらり。ここバスク地方のコロンバージュに使用できる色は、赤、緑、紺の3色と決まっているそうで、なるほどこの美しい景観が守られている理由が分かった。

通りを抜け、小さな交差点を渡ると、目の前に大西洋が広がった。100段以上の石造りの階段とビーチへと続く長いスロープ。岬の先にはコート・デ・バスクを象徴するヴィラ・ベルザが佇む。何度も見返したリール動画の景色が目の前にある事実と、芸術的なヨーロッパの海に言葉を失った。

コート・デ・バスクは潮が満ちてくると波のブレイクがなくなり、階段やスロープも海に沈んでしまうためサーフィンのできる時間帯は限られている。ビアリッツは朝明るくなるのは遅いが、夜は暗くなるのが遅い。9月も9時近くまで明るく、真夏だと10時ごろまでサーフィンができるそう。なんて羨ましい環境だ!

海岸にはレストランやサーフショップ、ボードレンタルのテントが並び、ボーダー柄のテントがいちいち可愛い。会場エリアまで歩くと併催のスケートボードランプが設置されており、コンテストの準備が進められている様子に心拍数が上がる。 数日後にはこの会場でQCSFがスタートする。息を大きく吸い込んでみる。緊張よりもワクワク感が勝っていた。


エルワンさんのオフィスを訪ねて編集部を紹介してもらった後、人気のレストランでランチをご馳走になった。満腹になった後は腹ごなしに市内を散歩し、欲しかったエスパドリーユや水着を物色。そうこしているうちに潮周りが合うタイミグになり、海に向かった!

サーフボードを片手に街を歩き、長いスロープを降りてヴィラ・ベルザへ。その一歩一歩に感動する。陽が傾きはじめた海へゆっくりとパドルアウト。上からは小波に見えたが、時折入るセットは肩くらい。波待ちしながら眺めるヴィラ・ベルザがあまりにも美しく、胸が震えた。この感動はきっと一生忘れない。


ビアリッツの天気はコロコロと変わる。翌日は朝から雨と強風で、とにかく寒い一日となった。海もノーサーフコンディションなので周辺を散策し、中心に位置する市場「Halles de Biarritz」へ。体育館のような2棟の建物の中に新鮮な海鮮や色とりどりの野菜、それにパンやハム、チーズ、スイーツも! 目が忙しくなる品揃えですべてが美味しそうに見えた。カフェやバー、イートインスペースもあり、2階には購入したものを楽しめるテーブル席が並んでいた。


翌日、天気のせいでほんのわずかな時間だったが、ヴィラ・ベルザをバックにフォトグラファーのロマン・ラフューさんと水中撮影に臨んだ。心地良い緊張感から始まり、最後は笑顔でハイタッチの楽しいセッションに。撮影した写真はHOTDOGGER 10月号に掲載される予定なので楽しみだ!

そしてこの日はQCSFの招待ホテルへ移動する日。彼は次の仕事があるというのに、荷物をホテルまで運んでくれた。ビアリッツはヒーローが住む街らしい。チェックインを済ませ、シャワーを浴びてひと息ついた。今夜から3日間、いよいよQCSFが始まる。


5時から入場が開始。会場の入り口ではセキュリティ・チェックが行われ、規模の大きさを改めて感じた。エントリー確認後、QCSFのテーマカラーであるピンクのVANSのリストバンドが巻かれた。エントリーブースに続々と選手が集まり、2ヶ月前にJULYウェットスーツのローンチイベントで来日していたローラ・ミニョンカリーナ・ロズンコに再会。ふたりは「やったね、エントリーおめでとう!」とハグをしてくれた。そして初のトランスジェンダー・サーファーのとびきり笑顔が印象的なサーシャ・ジェーン・ロワーソンや会いたかったアンブル・ヴィクトワールなど、トップサーファーたちとも挨拶を交わした。ふわふわした気持ちのままだったが、主催者であり私を見つけてくれたマーゴにも会い、感謝とお礼を伝えることできた。

ステージ裏の関係者用のブースでは食事とドリンクが振舞われる。完璧なまでの夕陽を見ながら自分に起こっているすべてを噛みしめ、ソーダで母と乾杯した。

ローラ・ミニョン(左)、カリーナ・ロズンコ(右)
マーゴ・アハモン・テュコ


Vol.3に続く……。

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間瀬 侑良夏(ませ ゆらな)

高校2年生/アマチュアロングボーダー

2007年生まれ、神奈川県川崎市在住。サーフィンとの出合いは11歳。14歳のときにシングルフィン・ロングボードコンテスト「THE ONE」に出場したことをきっかけに本格的に始め、2023年のTHE ONE LW 1st. classで優勝。また同年メキシコのラ・サラディータで開催されたMexiLogFestから招待を受けて参戦。
Instagram:@yurana_mase


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  • 高校2年生のロングボーダー間瀬侑良夏が夢の舞台「Queen Classic Surf Fest」に参戦。自身で綴ったイベントの記憶_Vol.1
  • 2024.10.12

フランス・ビアリッツ出身のカリスマロングボーダー、マーゴ・アハモン・テュコと妹のエメ、マーゴの幼馴染のアマヤの3人が2021年に立ち上げた、女性だけのサーフコンテスト「Queen Classic Surf Fest(以下、QCSF)。世界中のスタイルのある女性サーファーを招集し、ミュージック、アート、スケート、サーフィンを通じて、女性サーファーの地位向上、LGBTQ+、フェミニスト、環境問題などを発信するイベント。市の後援やVANSが冠スポンサーとなり、夏のビアリッツの一大イベントへと成長した。このコンテストに日本から唯一、高校2年生のアマチュアロングボーダー間瀬侑良夏(ませゆらな)がクレジットされた。憧れのロングボーダーが集う夢の世界。いつかは出場したいと思い続けていたある日、それは現実なものになった……。この特集は、夢の切符を手に入れた間瀬侑良夏が綴ったイベントの記憶。隔週で4回に渡ってお届けします。


梅雨が近づく5月の終わり、インスタグラムにQCSFから一通のメッセージが届いた。HELLOと表示されたメッセージを開き、読み進める。そのときは宮崎に試合に行った帰りの空港で、隣には母もいた。

「ママ、夢が叶った!」

 そう、QCSFからInvitation が届いたのだ。

私がQCSFを知ったのは昨年の秋。インスタグラムのリール動画だった。憧れのロガーをはじめスタイルのあるサーファーばかりが映し出される女の子だけのサーフコンテスト。その動画を見た瞬間、私の夢のリストが更新された。

なぜ私がここまでQCSFにこだわるのか? それはこのイベントがただのサーフィンコンテストではなく、女性を取り巻く社会的問題やセクシャリティをテーマにしているから。同じロングボードでも男性と女性のサーフィンは別ものだと感じていて、女性はビキニやお尻を出してサーフィンをしなくても注目され、評価される独特なサーフスタイルがある。そんなスタイルを持った女性サーファーのみが招待されるコンテスト。選ばれたらこの上ない名誉だと思う。国内外問わず女性のサーフコンテストは男性のおまけのような存在で、賞金の格差も大きい。海の中でもパドルバトルでは勝てないし、故意な前乗りもしょっちゅう。こういった問題はサーフィンに限った話ではないし、根強い社会的問題でもある。ちょうど年齢的にも将来を考えることが多い私は、女性だけで立ち上げた、女性のための大会にとても惹かれ、実際に肌で感じてみたかった。


年が明け、今年の抱負や夢に思いを馳せる。そこにQCSFに出場することを掲げていた。そんなタイミングで届いたInvitation。息することも忘れて読んだメッセージを、今でも鮮明に覚えている。昨年はメキシコで行われた「MexiLogFest」に招待され参戦したが、あの時の不安と期待に胸を膨らませる感覚が蘇ってきた。

QCSFが開催されるのはフランス南西部にあるバスク地方のビアリッツ。MexiLogFestに参加が決まったときも「すごい! よし行こう!」と、すぐにならなかった我が家。オリンピックイヤーのフランスということで金銭的なことや、学校を休まなければならないという問題もあり、まず母を説得することから始まった。

数ヶ月に及ぶ母への(しつこいくらいの)プレゼンと家族会議で決まった条件をクリアし、ついにQCSFへの参加と母の現地サポートを手に入れることができた!


パリ経由でトータル16時間以上のフライトを終えて、サーフボードとともに秋のフランス、ビアリッツへ降り立った。

空港に出迎えてくれたのは、ビアリッツに編集部を構えるサーフカルチャー雑誌HOTDOGGERの編集長エルワン・ラメイニエールさん。昨年のMexiLogFestを特集し、私を表紙に起用してくれた人である。

日本を飛び立つ直前まで、3メートルのサーフボードが飛行機に乗せられるのか、また空港からホテルまでどうやって運べばいいのか分からなかった。そんな不安の中、エルワンさんがヒーローになってくれた。彼の助けにより無事にホテルに到着。エレベーターに乗せられず、螺旋階段を使うしかなかったが、なんとかボードも部屋まで運ぶことができた。さらに、たいていの店は月曜日が休業というなか、夕食にテイクアウトのお寿司まで手に入れた。スーパーヒーローのおかげで、ビアリッツの1日目を無事終えることができた。


翌朝、ジェットラグの影響もなく7時に目が覚めた。まだ日の出前で外は暗い。そして寒い。なかなかベッドから出られなかったが、数時間しか眠れなかったという母に叩き起こされ、ビアリッツの街へ出掛けた。

昨日は暗くて気づかなかったが、街はまるでディズニーランドの世界! おとぎの国に迷い込んだようで、古い建物がとにかく素敵。周りを散策しながらお目当ての焼きたてのバゲットを目指した。

8時にならないと明るくならないなんて、朝が苦手な私にはピッタリの国! と思っていたが、全くそんなことはない。街は普通に朝を迎えていて、7時前から営業しているブーランジェリーのバゲットは、もう焼きたてではなかった。レジの前には列ができていて、店員さんが慌ただしく動いている。店内にはサンドウィッチから甘い系まで品揃えが豊富。レジで注文するスタイルにちょっと緊張する。英語は聞こえてこない。とりあえず母に任せよう。バゲットは男性名詞? 女性名詞? とぶつぶつ言う母だったが、バゲット1本とクロワッサン2個、ショコラティーヌ1つをオーダーした。ちなみにビアリッツでは、パン・オ・ショコラではなくショコラティーヌと言う。

映画のワンシーンのように、すぐにバゲットを食べてみた。焼きたてではなかったが香りが違う。ずっと噛んでいたいくらいに美味しい。スーパーでフルーツと野菜を買って朝食にしよう! 立ち話をしながらコーヒーにクロワッサンを浸して食べている人、パンを片手に犬の散歩をしている人、バゲットをかじりながらおとぎの国を歩いている私。あぁ、本当にビアリッツにいるんだと実感した。


Vol.2に続く……。

間瀬 侑良夏(ませ ゆらな)

高校2年生/アマチュアロングボーダー

2007年生まれ、神奈川県川崎市在住。サーフィンとの出合いは11歳。14歳のときにシングルフィン・ロングボードコンテスト「THE ONE」に出場したことをきっかけに本格的に始め、2023年のTHE ONE LW 1st. classで優勝。また同年メキシコのラ・サラディータで開催されたMexiLogFestから招待を受けて参戦。
Instagram:@yurana_mase


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