プロロングボーダー田岡なつみとフォトグラファーのナチョスは、2022年秋、2023年冬、同年春の3回、北海道・利尻島などに赴き、過酷なサーフィン撮影に臨んだ。その様子は創刊号のSALT...で「美しき白の世界の物語」と題し8ページにわたって特集しているが、実はこのときの撮影の主役は映像であり、出来上がった作品は『MAHOROBA』と名付けられた。
同行スタッフはゼロ。特別な機材はなく、ふたりきりで構成から撮影、編集まで行い、30分のドキュメンタリー作品として完成した。ナチョスは、日本のサーフシーンを世界に知ってもらいたいと、ロンドン、スペイン、ニュージーランド、カリフォルニア、イタリア、ポルトガル、ハワイの映画祭に作品をエントリー。最初に送ったロンドンの映画祭は落選するも、2024年1月、バスク映画祭からノミネートの連絡が届いた。360作品がエントリーしたというから、その倍率は10倍以上だ。
その後、世界中のサーフィンフィルムフェスティバルで上映され、満を持して日本での上映が決定した。場所は渋谷の「ヒューマントラストシネマ渋⾕」。巻末に詳しい情報を掲載するが、ここでは7月26日発売のSALT...#02でインタビューした「映画を作ろうと思ったきっかけ」や「映画祭に参加した感想」などを掲載。ふたりの思いを知ることで、映画の見方も変わるはず。
2024年2月、田岡なつみとナチョスはスペイン・バスクの映画祭にいた。上映前「日本からスペシャルゲストが来ています!」とMCから突然のアナウンス。スクリーンの前に呼び出され、作品や日本の女性のサーフシーンについてインタビューを受けた。終了後も世界各国のメディアから質問攻めにあい、多くの人が日本のサーフィンに興味を持っていると、ふたりは改めて確信した。
「日本のサーフィン、しかも雪が舞う中でのサーフィンを、真剣な眼差しで観てくれていました。でも一番印象に残っているのは、なっちゃんのサーフィンの上手さにみんな驚いていたことかな」
田岡なつみは、世界で活躍する日本で1番、いや、アジアで1番のロングボーダーだが、実はショートボードのプロ資格も持っている実力の持ち主。作品の中ではロングボードだけでなく、華麗にミッドレングスを乗りこなす姿も収められている。
話は戻るが、そもそもふたりはどういったきっかけで映画を作ろうと思ったのか?
「海外の選手やフリーサーファーたちが、日本の波のポテンシャルや素晴らしい文化に気づき、たくさん撮影に来て発信しているにも関わらず、日本人が全く発信できてないことに気づいたんです。私たち日本人が、日本の良いところをきちんと発信しなきゃって。実際、日本のサーフシーンが、こうやって世界をまわるのは初めてじゃないかな?」
田岡のコメントに対してナチョスは「パンデミックで海外に行けなくなり、日本を旅することが多くなったんですけど、行く先々で“あぁ日本は素敵なところがいっぱいで、もっと見てみたいな”って思ったんです。あと映画祭についても、これまでは人の作品を観に行ってたんですが、“自分が撮った作品と一緒に行きたい”と思うようになったんです」。
期せずしてふたりの気持ちとやりたいことのタイミングが一致し、『MAHOROBA』は誕生した。日本ではあまり馴染みがないサーフィンの映画祭だが、世界各地では毎年行われている恒例のイベント。ノミネート作品も多種多様で、ライディング中心のモノから有名サーファーをフィーチャーしたドキュメンタリー、海・サーフィン・スケートを通じての教育系、地元愛あふれるローカル作品からナザレやカムチャッカの山を越えて旅する壮大なものまで、様々な作品がラインナップ。20分前後を基準にショート編とロング編に分けられ、英語の字幕が必須というのがレギュレーションとして設けられている。審査員も映像関係者から人気のクリエイターまで幅広いのが特徴だ。イベントは複数日間かけて行われ、フィルムの上映以外にアートエキシビジョンやライブ、スケートボードのデモンストレーション、トークショー、海や自然をテーマにしたワークショップなどが併催されている。
多忙な合間を縫って訪れたバスクの映画祭。参加した感想をふたりはこんな風に語っている。
「スペインではアジア人が珍しいこともあって、たくさんの人に声をかけてもらえました。作中に登場する日本食や温泉のシーンにざわついたり、これぞ“ニッポン”というものを伝えられたのはよかったと思います。また、他の映画祭で作品を見た人から、日本に行ってみたい、サーフィンしてみたいっていうメッセージをもらえたのが嬉しかったです。これからも作品を作り続け、日本のいいところをたくさん発信していきたいと思います」(田岡)
「現場の空気感や盛り上がりは、実際に訪れてみて初めて知ることができました。オーガナイザーや審査員から、このシーンが良かったなど、意見を聞けたのもとても勉強にもなりました。わたしはイタリア・ミラノのイベントにも参加したのですが、スペインとは雰囲気や形式が違っていて、いい刺激になりました。この作品をきっかけに海外に挑戦しようと思う日本人が増え、その後押しをすることが出来たら最高に幸せです!」(Nachos)
最終的に10カ国の映画祭からノミネートされた『MAHOROBA』(2024年7月12日現在)。ドライスーツ片手に極寒の北海道を訪れ、ふたりキャンプしながら波を探した日々。「楽しかったけど、めちゃくちゃ過酷でしたぁ」と笑いながら当時を振り返るが、そこはふたりにしか分からない厳しさがあったはずだ。かっこよく撮る、素敵に写すなど言ってられない状況の中、いま目の前にあるものをありのままドキュメントした結果、世界の共感を得ることができた。
「誰かがやったことを真似するんじゃなく、自分がやりたかったことをやる。自分に正直に、責任を果たす。その重圧に負けそうになることもあるけれど、そういうのも嫌いじゃないってことにも気が付くことができました。これからもっといい作品を作り、表現の場を増やしていきたいです」
ナチョスのまっすぐで力強い言葉。これからの日本のサーフィン映画の未来に期待したい。
スペイン・ビルバオ映画祭のオープニングパーティにて。パネルの前でワクワクしながらの記念写真
上映前にサプライズで呼ばれて登壇。緊張しながら日本の女性のサーフシーンについて語る
イタリア・ミラノの映画祭。立ち見が出るほど人が集まり、上映後は拍手と“Beautiful!”の歓声が
photography_Nachos
SALT...#02より抜粋
【MAHOROBA ジャパンプレミア上映】
⽇時:2024年11⽉18⽇(⽉)
第1部:17:00開場/17:30上映開始
第2部:18:30開場/19:00上映開始
※各会終了後、「カフェ347」で行われる懇親パーティに参加いただけます
場所:ヒューマントラストシネマ渋⾕シアター2
住所:東京都渋⾕区渋⾕1-23-16 ココチビル7F
座席:全席⾃由席
チケット代:2,000円(税込/2ドリンク付)
※ドリンクチケットはパーティー際に3Fカフェ347で利⽤可能です
※チケットの購⼊はこちら
TAG #ROXY#サーフムービー#ナチョス#まほろば#田岡なつみ
BILLABONGがサポートするオーストラリアのフリーサーファー、ジャリーサ・ヴィンセント。彼女がプロデュースするサーフフィルム「JUJU THE SURF MUSICAL」が完成しました!
このリリースを記念して、ジャリーサ本人とディレクターのルカRが来日し、湘南・藤沢の8HOTELで上映会イベントを開催します。
このイベントは完全招待制となりますが、SALT…読者の中から抽選で5組10名様を無料でご招待します! そしてなんと当選された方には当日、BILLABONGの水着もしくはボードショーツをプレゼント!
※サイズやデザインに限りがありますので予めご了承ください。
イベントは上映会に加えて、ハナ・スプリングのミニライブやトークショー、ジャリーサのサイン会も実施予定。
完全招待制で、水着もしくはボードショーツがもらえるというスペシャルなイベント!
友人やパートナーを誘ってご応募ください。
※写真はイメージです
◆JUJU THE SURF MUSICAL
オーストラリアを代表するフリーサーファーであり、アートにも傾倒するジャリーサ・ヴィンセントがプロデュースしたサーフフィルム。タイトルにもあるようにミュージカル映画のような構成で、ライディングはもちろん、音楽やファッション、メイクにもこだわったコミカル且つアーティスティックなファンタジームービー。出演は同じBILLABONGチームのクリード・マクタガート、ジョシー・プレンダーガスト、そして“オッキー”ことマーク・オクルーポ。オッキーの迫真に迫る演技とパワフルな
バックサイドリッピングも必見です!
◆ジャリーサ・ヴィンセント
オーストラリア出身のフリーサーファー、アーティスト、ミュージシャン。自身のバンド「キューピッド・アンド・ザ・スチュピッズ」ではタップダンスとボーカルを担当。
◆ハナ・スプリング ミニライブ
HANAH SPRING
ジャズギタリストの父、ジャズシンガーの母の元に生まれ、5人兄弟でハーモニーを歌いながら育ち、音楽が大好きになる。Erykah Badu、The Roots、Musiq Soulchildといったアーティストの来日公演オープニングアクト、レコーディングとツアーでMISIA、安全地帯、bird、MIYAVIのバックコーラスを務め、活動のフィールドを広げていく。2023年には独立後初のニューアルバム「SOZO」を発表。Billboard Live Yokohamaでのリリースライブを終えLP盤(アナログレコード)が完売となる。
公式サイト/Instagram
<INFORMATION>
日時:10月2日(水)18:30〜21:00
場所:8HOTEL 藤沢(https://fujisawa.8hotel.jp/)
住所:神奈川県藤沢市鵠沼花沢町1-5
内容:「JUJU THE SURF MUSICAL」上映会
ジャリーサによるサイン会
Q&Aトークショー
ハナ・スプリング ミニライブ
ゲスト:ジャリーサ・ヴィンセント、ルカR、ハナ・スプリング
入場:ペアのみ ※お一人様での参加はできません
<応募方法>
件名:「JUJU THE SURF MUSICAL」上映会応募係
①お名前
②性別(男性・女性)
③年齢
④サーフィン歴
⑤SALT…への感想
上記質問を2名様分お書き頂き、info@salt-mag.jpまでメールをお送りください。
応募期間は、9月27日(金)12:00まで。
当選者の発表は、当選されたご本人へのメールをもってかえさせて頂きます。
たくさんのご応募をお待ちしています!
TAG #BILLABONG#JUJU THE SURF MUSICAL#サーフムービー#ジャリーサ・ヴィンセント
本日より劇場公開が始まった『THE ENDLESS SUMMER』のリマスター版。内容についてはこちらの記事で触れたが、ムビチケ※とポスターのセットを2組4名様にプレゼント致します。
※全国で利用可能できる、ネットで座席指定可能なデジタル映画鑑賞券
希望の方は、①住所、②氏名、③年齢、④好きなサーフィン映画、⑤SALT...への感想をご記入の上、以下までメールでご応募ください。
応募先:info@salt-mag.jp
件名:『THE ENDLESS SUMMER』チケット係
応募締め切りは7月20日まで。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせて頂きます。たくさんのご応募、お待ちしております!
製作・監督・撮影・編集・ナレーション:ブルース・ブラウン
音楽:ザ・サンダルズ
キャスト:マイク・ヒンソン、ロバート・オーガスト
1964年|アメリカ|カラー|DCP|5.1ch|90分|原題:THE ENDLESS SUMMER|字幕翻訳:小泉真祐|G
鈴正・フラッグ共同配給 宣伝:フリークスムービー
© Bruce Brown Films, LLC
TAG #SURF MOVIE#THE ENDLESS SUMMER#サーフムービー#ブルース・ブラウン#マイク・ヒンソン#ロバート・オーガスト
サーフィン映画の金字塔として知られ、今なお語り続ける伝説の名画『THE ENDLESS SUMMER』。“終わりなき夏”というセンチメンタルなタイトルはサーファー以外の心も鷲掴みにし、最も有名なサーフィン映画として多くの人に知られている。そんな名作のリマスター版が完成したということで、試写会に行ってきた。私事だが、サーフィンに興味を持つきっかけとなった思い出深い作品であり、あの感動を再び味わえると思うと、鑑賞前からワクワクが止まらなかった。
ストーリーは、21歳のマイク・ヒンソンと18歳のロバート・オーガストの2人が、パーフェクトな波を求めて世界を巡るドキュメンタリー。監督は当時26歳のブルース・ブラウン。後に『栄光のライダー』、『オン・エニー・サンデー』などを世に送り出した名匠である。作品は1963年に撮影され、翌’64年カリフォルニアで公開、2年後の’66年に全世界で公開されると数々の興行記録を塗り替えた。当時のアメリカはビーチボーイズが大ヒットしており、ハリウッド初のサーフムービーはタイミング的にも良かった。ロングボード全盛のサーフィン黎明期、インターネットはなく、現地で得た情報と勘と運に身を任せ、未知なる場所での撮影に挑む。予測不可能なハプニングが次々と巻き起こるなか、さまざまな人と出会い、初めての地で波に乗る。その体験は好奇心とユーモアに溢れ、冒険心をくすぐる。
1963年11月、ロサンゼルス(LAX)空港にスーツ姿で現れたふたり。剥き出しのロングボードを抱えた反対の手には重厚なトランクケースが。中身はボードショーツ6枚とワックス2つ、トランジスタラジオ、そして怪我をしたときのためのバンドエイドが1枚というのが、サーファーらしくていい。ロサンゼルスを旅立った3人は大西洋を渡り西アフリカのセネガルへ。そこで人類初となるヴァージン・ウェイブに乗り、続いてガーナの漁村で子供たちにサーフィンを教える。ナイジェリアでヒッチハイクして赤道を超え、南アフリカのケープタウン、ダーバン、そしてセントフランシス岬へ。ここで人生最高の波に遭遇することになるが、絵に描いたようなマシンウェイブは映画のハイライトでもある。さらにオーストラリア、ニュージーランドでは地元のサーファーと交流し、その後タヒチ、ハワイへと旅は進んでいく。
4Kリマスターによって蘇った映像の美しさに目を奪われつつ、ふたりのサーフィンのうまさにも改めて感動する。さらに旅の高揚感を湧き立てるのがバックミュージックだ。カリフォルニアの5人組バンド、ザ・サンダルズによって制作されたサウンドトラックは、テケテケ・ギターがベースのサーフロック。コーラスがアクセントのオープニング曲、Theme from Endless Summerを聴いた瞬間、完全に当時にトリップした。
長く書いてしまったが、ストーリーと感想はここまで。あとは映画館で観て感じてほしい。半世紀以上経った現在でもサーフィン映画のスタンダードであり、これを超える作品はないだろう。続編である『エンドレス・サマーII』(1994)の完成が待ち遠しい。
製作・監督・撮影・編集・ナレーション:ブルース・ブラウン
音楽:ザ・サンダルズ
キャスト:マイク・ヒンソン、ロバート・オーガスト
1964年|アメリカ|カラー|DCP|5.1ch|90分|原題:THE ENDLESS SUMMER|字幕翻訳:小泉真祐|G
鈴正・フラッグ共同配給 宣伝:フリークスムービー
© Bruce Brown Films, LLC
TAG #SURF MOVIE#THE ENDLESS SUMMER#サーフムービー#ブルース・ブラウン#マイク・ヒンソン#ロバート・オーガスト
© SALT… Magazine All Rights Reserved.
© SALT… Magazine All Rights Reserved.