2020年、滋賀県出身の20代サーファーによって結成された「グンジョウマル・レディオ」。彼らは改装したワゴンに乗り込み、日本各地のサーフスポットを巡りながら、旅先での記録を『Keep on...』という雑誌にして出版している。その誕生のきっかけとなったのは10月に訪れた北海道。すし詰めのワゴン車に乗り込み、苫小牧から東へ。襟裳岬、フンベの滝を経由しながら知床まで、2週間弱の長旅だった。
「男10人の大所帯だったので、さすがに全員で車内泊はできんくて、何人かはテント。ある日の夜は、寒すぎてサーフブーツを履いて寝ました。そんな感じの貧乏旅行だったけど楽しかった。海に入ったらアザラシに出くわしたり、見たことないくらい綺麗な夕焼けに遭遇したり、いい景色をいっぱい見られたこともいい思い出。極めつけに、帰りに寄った室蘭で生涯で一番いい波に乗れました」
大変なこともあったけれど、いい波にあたればすべて忘れられる。サーファーってアホだと思わされるけれど、アホになるから楽しめることもある
北海道斜里町の「天へと続く道」といわれる場所。男10人、安飯も安宿も、みんなで経験したら、かけがえのない思い出になった
旅の終盤、東側を走行中に撮った1枚。この辺り一帯どこもいい波が割れていた。どこで入るか悩みながらクルマを走らせる
雑誌の販売にあたり、意識したことがひとつあった。それは、“手売り”にこだわったこと。リリース当時はコロナ禍。人と人との繋がりが希薄になり、世の中が暗く澱んでいたときだ。
「感染対策を万全にして、来られる人だけに来てもらえるように呼びかけてローンチパーティをしました。それでもたくさんの人が来場してくれはったんです。僕らもこの旅を知ってもらうんじゃなしに、雑誌をきっかけに会いに来てくれた人たちと、ただ話をしたかった」
来場者の反応に自信をつけた彼らは、その後も宮崎や島根、湘南などさまざまな場所に出向くように。訪れたのは、どこもグッドスウェルで知られるサーフスポットばかり。そして、その旅の様子はもちろんVol.2以降の『Keep on...』にまとめられている。
右上から時計回りに_沖縄の旅で。急にサイズアップした無人のポイントでサーフィンを楽しんだ/『KEEP ON…』Vol.1のリリースパーティのときにみんなでサーフィン。ボードの長さも、厚さも、形もそれぞれ。みんなちがって、みんないい/定例イベント「THE DOGGIE DOOR」開催時に撮影。場所は滋賀県彦根のマーレーキッチン/北海道トリップ最初の朝、綺麗な波が割れるノーバディのポイントを発見! 極寒の夜を乗り越えた先に見つけた忘れられない景色/北海道釧路。スケートでトンネルを滑走していると「日本一の夕陽」が差し込んできた/バンドの十八番は「ロングヘアでロングライド」。偶然か必然か、メンバーの髪は押し並べて肩まで長い/瀬長島からのサンセット。旅の醍醐味はこういう風景に出逢えるところ/2023年9月、宮崎に来日していたオージーサーファー3人とセッションし、そのま数日かけて滋賀まで旅をした
photography _ Keisuke Nakamura text _ Ryoma Sato
「SALT…Magazine #01」 ¥3,300
グンジョウマル・レディオの旅のモットーは、“小さな波も幸せも、しっかりキャッチ”。時代の波に逆らうように、リアルで人と繋がり、ノンフィクションを生きる。そんな彼らの次の行き先は、果たして……。続きは本誌をチェックしてください。
TAG #GUNJOUMARU RADIO#SALT…#01#サーフトリップ#ビーチライフ
5月下旬、過去10年で最高のスウェルがインドネシアに入ってきた。多くのプロサーファーがインドネシアのそれぞれの島へストライクミッションを行うなか、メンタワイへのトリップを計画していた9人の女性サーファーたちがいた。まさかこのタイミングで最高のスウェルが入ってくるとは! 強運を持ち合わせた9人のガールズサーファーたちの、泣いて笑ってサーフィンし尽くした12日間の旅の記録。
5月の終わりのある日、9人のグループチャットは、スウェルの大きさ、方向、風、すべてがインドネシアにとって完璧な予報と、盛り上がっていた。普段使っているボードより長めのサーフボード、無数のワックスとビキニ、予備のリーシュが詰まった大きなボードバッグを抱え空港を歩いていると、同じような大きなボードバッグを持ったガールズサーファーたちがいた。彼女たちが今回の旅の仲間だと、言葉を交わさなくてもわかった。
私たち9人はボートが出航するパダンで初めて出会い、その場で意気投合した。ハワイ、フランス、カリフォルニア、バリ、オーストラリア、アイルランド、世界中のサーフスポットから集まったエネルギーに満ち溢れたメンバーたち。20代後半で友達作るのはなかなか難しいけど、サーフィンで繋がる友達は一生モノ。
目の前でブレイクする波に誰よりも早く乗りたくて、8時半にはベッドに入る生活がスタート。「モーニン〜グ!」と目をこすりながらコーヒーを啜り、暗くてよく見えない波を横目に早朝5時半から人生トーク。日焼け止めを塗りながら、ストレッチをしながら、ワックスアップしながら、ボーイフレンド、キャリア、セルフラブについて語った。サーフガイドもびっくりするほど、朝からフル回転のガールズたち!
ハイシーズン中にも関わらず、ラインナップには誰もいない日が何日もあった。これがどれだけ幸せなことか、いつも混雑した海でサーフィンをしている人ならわかるはず。まさにこれがこの旅を特別にしてくれた大きな理由だった。
女性サーファーが、体格もパワーも上回る男性と競い合って波を捕まえるのは難しい。混雑したローカルのラインナップから離れることで波の取り合いから解放され、テクニックに集中することができる。メンタワイはそれを叶えてくれる場所だ。仲間たちだけで波をシェアし、誰にも邪魔されずにチャージ! 極上のメンタワイの波にガールズみんなが恋をした。
今までサーフィンしてきたなかで、一番大きくてパーフェクトな波。まさにパラダイスという言葉がピッタリ! 順番に波に乗り、誰かが良い波に乗ると歓声と興奮の声が海に響き渡る。ただただ純粋に波に乗ることを楽しみ、自然と一体になるサーフィンのあるべき姿。旅の後半、自分たちのサーフィンがどれだけ上達したかビデオでチェック。セットの波にテイクオフをする、チューブに入る、スタイリッシュなターンをする……それそれが目標として掲げていたことが、この12日間で実現した。
朝くたくたになるまでサーフィンをして、朝食をとった後2〜3時間昼寝をして、夕方になったらサンセットサーフィン。どこを見渡してもココナッツの木があり、透き通った海と真っ白なビーチが視界いっぱいに広がる。このパラダイスに、年に一度は帰ってきたいと思った。
電波も入らないインド洋のど真ん中で仲間との会話を楽しみ、お腹いっぱいサーフィンをして、体力的にも精神的に良い意味で疲れ果てていた。当分サーフィンしなくていい状態になっていたが、翌日スウェルが到着したバリに戻ると、やっぱりボードを片手に海に走っていた。まさにサーフィン中毒。
12日間の旅が終わりボートを降りる頃にはみんな姉妹みたいに仲良くなり、お別れするのが悲しく大きなハグと共に涙が溢れた。メンタワイで築いた絆は言葉では上手く言い表せない特別なもので、このトリップは私たち9人の心の中に一生残るものになった。
text:Miki Takatori
20代前半でサーフィンに出合い、オーストラリアに移住。世界中のサーフタウンを旅し現在はバリをベースに1日の大半を海で過ごしながら翻訳、ライター、クリエイターとして多岐にわたって活動中。Instagram
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