• 【特集】SURF MUSIC makes us "SALTY" #07 -コラム:KALAPANA/アイランド“クール”ブリージング-
  • 2024.11.08

海と対峙するとき、音楽は円滑油のような効果を発揮する。サーフィンと音楽が絡み合い起こる化学反応。多くの先人たちの言葉を交え時空に綴れ織りを描くとき、サーファーとダンスの関係が見えてくる。


カラパナが結成されて50年。彼らこそ日本に“サーフロック”ブームをもたらし、定着させたグループである。同じハワイ出身のヴォーカルデュオ「セシリオ&カポノ」や西海岸の「パブロ・クルーズ」もブームの中にいたが、日本のファンは「カラパナ」のローカルカラーに親しみを感じ、愛した。そもそもカラパナを日本にもたらしたのはハワイ帰りのサーファーたちだったのだ。

1975年にリリースされたデビューアルバムがサーフショップでヘビロテされているのを知ったトリオレコードは、デビューとセカンドアルバムを日本でリリース。哀愁を帯びたメロディとマラニ・ビリューの潮焼けした歌声と美しいハーモニー、「ナチュラリー」や「愛しのジュリエット」などが連日ラジオから流れ大ヒット。雑誌POPEYEやFineが毎号のようにカラパナを取り上げると、サーファーから陸(おか)サーファーまで幅広く浸透した。

1977年に初来日を果たし、会場となった中野サンプラザにはハワイ出身の大関・高見山が駆けつけるなど盛り上がったが、メンバーは慣れない寒さと大雪に見舞われ風邪をひき、絶不調だった。翌年にはサーフィン映画『メニー・クラシック・モーメンツ』のオリジナル・サントラ盤をリリース。この頃からバンドの二枚看板のひとり、リードギターのDJプラットをフィーチャー。リズムを強調したよりロック色の濃いバンドカラーを打ち出すようになった。

カラパナを知らない世代は、ハワイのバンドといえばウクレレ中心のハワイアンを想い起こすかも知れないが、カラパナはウエストコースト、AOR、フュージョン・ファンク色が強いバンドである。ちなみに当時のカラパナはカセットの販売が好調だったが、理由は車中ですぐに聴けたから。海まで距離のある内陸サーファーにとって車中の音楽は欠かせず、カーオーディオには金を注ぎ込んだ。

初来日でのハイライトは、『メニー・クラシック・モーメンツ』のショーン・トムソンのシークエンスが映し出された瞬間である。曲は「キャン・ユー・シー・ヒム」。ショーンはオフザウォールの中をエビのようにしなりながらアップスンし、「俺の姿が見えるかい?」とばかりのライディングに大歓声が飛び交った。カラパナは地元ハワイと日本では大成功した半面、本国アメリカでは今一つ売れず、マーケットを日本に絞り込んだ。'80年代に入ると杉山清貴と共演するが、それを迎合と考えたコアなサーファーたちは離れていった。しかしファーストからサード、そしてメニー・クラシック・モーメンツの4枚は、サーファーにとって時代を超越した名盤である。

【SURF MUSIC makes us "SALTY"バックナンバー】
#01 -潮騒香る音楽に身を委ね踊るとき-
#02 -ショートボード革命とサイケデリックサウンドの相関図-
#03 -世界中で無限の変貌を遂げ始めたフラワーチルドレンの種-
#04 -制限なき選択ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド-
#05 -サーファーだけが知るアンダーグラウンドという美学-
#06 -コラム:DICK DALE/ヘビー“ウェット”ギターサウンズ-

>>特集の続きは本誌でご覧ください。

「SALT…Magazine #01」 ¥3,300

本誌では24ページにわたってSURF MUSICを特集。“サーフィンと音楽”の蜜月関係から、アンドリュー・キッドマンのインタビュー、抱井保徳さんのコラムなど掲載。潮の香りをまとったソルティな音楽は、サーフィンライフを豊かにしてくれる。


photography_Bruce Usher text_Tadashi Yaguchi

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