• 【特集】SURF MUSIC makes us "SALTY" #01 -潮騒香る音楽に身を委ね踊るとき-
  • 2024.09.10

海と対峙するとき、音楽は円滑油のような効果を発揮する。サーフィンと音楽が絡み合い起こる化学反応。多くの先人たちの言葉を交え時空に綴れ織りを描くとき、サーファーとダンスの関係が見えてくる。


自己の限界を押し上げる覚醒、それがサーフミュージックだ

海を感じさせてくれる音楽、その答えは百人百様だが“サーフミュージック”には時代と場所を越えたアイデンティティがあるようだ。

サーフミュージックという言葉の誕生は1960年代初頭、発祥地は南カリフォルニアとされている。ディック・デイルがヘビーでディープなリバースを効かせたエレクトリックギターのインストルメンタルナンバー「レッツ・ゴー・トリッピン」を大ヒットさせたのが始まりだった。それ以前は、音楽とスポーツを結びつけるサウンドは存在していない。

サーフィンが普及し始めたこの頃、アメリカは世界一豊かで夢と希望が溢れる夢の国として世界中から憧れていた。1945年に第二次世界大戦が終わり、'50年代に突入すると戦争のない平和な時代を謳歌するユースカルチャーが芽生え始めていた。クールとポップの融合である。その代表格がサーフィンであり、サーファーだった。彼ら彼女たちが好んで聴く音楽が、のちに南カリフォルニアの海岸線から全米に広がり世界中のポップミュージックに影響を与え続けるとは、そのとき誰が想像できただろうか?

同時期にデビューしたザ・ビーチ・ボーイズはディック・デイルとは対照的に、甘くメローなハーモニーとキャッチーな歌詞で商業的にも大成功を収めた。なぜ全く異なる性質の音楽が時同じくしてサーフミュージックと定義されたのか? それはサーフィンの本質に由来しているから。激しく荒れ狂う海とオイルフェイスの凪ぎを思い浮かべて欲しい。どちらからも同じ潮騒の香りが漂ってくる。

 現代では科学的に「音楽は脳に効く」ことが立証されているが、'60年代初頭は音楽とスポーツの関係は未知の領域にあり、その関連性を探る者さえいなかった。近年ではアスリートが競技中にヘッドフォンで音楽を聴くことが禁止されている。一方でスタート直前まで音楽を聴く選手たちの姿を暫し目にする。特に個人競技では顕著である。音楽が脳の報酬系部分を刺激し、ドーパミンの分泌を高める効果が証明されたからである。つまり、音楽はアスリートにドーピングと同じ作用を及ぼすのだ。ドーパミンが増えると快楽に敏感となり、アドレナリンの分泌量を増やし肉体のパフォーマンスを高める。さらに覚醒作用が生じることで集中力が増し、目の前の恐怖に対して身体と脳が対抗力を高め、ストレスホルモンと筋肉の疲労感を一時的に軽減させる。そう、戦闘モードを高めるのだ。

例えばラグビー・ニュージーランド代表のオールブラックスが試合前にハカを舞う雄姿は有名だが、彼らは自らを鼓舞するために頑強な仕草でグラウンドを揺さぶる。但しハカは原始的な踊りに近く、旋律にスポットが当たることはない。いずれにせよ、サーフミュージックこそがアスリートとミュージックを一元化した、世界初の音楽ジャンルであることは明らかである。

>>特集の続きは本誌でご覧ください。

「SALT…Magazine #01」 ¥3,300

本誌では24ページにわたってSURF MUSICを特集。“サーフィンと音楽”の蜜月関係から、アンドリュー・キッドマンのインタビュー、抱井保徳さんのコラムなど掲載。潮の香りをまとったソルティな音楽は、サーフィンライフを豊かにしてくれる。


photography_Aition text_Tadashi Yaguchi

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